88話 チェスの心情
戦争が活発になるまでの3ヶ月、リズたちは連携して戦うすべ、誰かが危機的状況になった時の救出の練習、その他諸々の訓練をした。
だんだんと実力がついてくる感覚に、リズたちは嬉しい気持ちとともに、不安も募っていった。
自分達の力が増えるほど、時間は過ぎ刻一刻と戦争の日が近づいてくるように感じる。
夜寝る時にどっと暗い気持ちが湧き出てくる。
その不安を押し込めるように、隠すようにして眠った日も少なくはなかった。
これが世に言うストレスの過剰摂取かな?だなんて、ちょっとふざけたことも考えた。
そうでもしなきゃ、本当に過呼吸にでも何にでもなってしまいそうな気持ちだったのだ。
ーーー
後1週間後と迫った時、チェスは眠れず夜道を散歩していた。
流石に何があるかわからないため、そこまで遠くへは行かなかった。
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近くにある大きな泉まで歩いてきて、足が泉の水に触れるほどの近さまで近づき、片膝を立てるような形で座った。
頭の中がもやもやと霧に隠されたような感じがして、思わず頭をかいたり、前髪を掻き上げる。
なぜここまで心を乱されているのか、そんなことはとうにわかっているのに、どうしても理解したくないと言う気持ちが勝る。
自分は今自由なんだ。誰にも縛られてないし、あなたのためと称した命令を聞く必要もない。
だと言うのに……
「なんでこんなにイラついてんだよ……!」
静かな声で怒りをあらわにする。
すぐ近くにあった石を一つとり、思い切り泉に投げつける。
ポチャンと軽い音が一つなる。
心の葛藤は治ることを知らず、少しずつ膨張していく。
国に帰れば政府役員の親が怒るのだろう。
『なぜこんなバカバカしいことをしてるんだ。』『さっさとそんなごっこ遊びをやめなさい。』だなんて、こっちは本気でやってることもくだらないと断言するのだ。
「はぁ。」
膝を抱え俯く。一周回って悲しくなってきた。
そんなチェスの元に音もなく誰かがやってきた。
「アレ?キミは……チェスだっけ?」
「……ほっといてくれ。」
俯いた体制のまま、ジト目でライサの方を見るが、すぐにまた目線を下に向けてしまう。
ライサはやれやれとでも言いたげな表情を浮かべるが、チェスにはそれを知るすべがなかった。
「なんだなんだ、そんな落ち込んでると不幸が襲ってくるぞ?」
励まそうとしてるのか、ライサはおどけた口調で話しかけてくるが、チェスは一向に顔を上げる気配が見えない。
なんの反応も見せないチェスに、ライサは困った風に笑うと
「まあ無理に何か聞き出そうとは思わないけど、辛いことがあるなら誰かに相談したほうがいいよ。あとあと重みに耐えられなくなるんだ、キミみたいなやつは。」
ライサはその後、何を言うわけでもなく栗皮色の翼でチェスの体を隠すように覆い、ずっとそばにいるた。
ライサの不器用ながらも気遣ってくれる動作に、チェスは声を出さずただ涙を流していた。




