73話 束の間の笑い
ベルを追いかけ元いた場所に戻ってくると、仲間の大半は既に起きていた。
太陽は明るく、早朝の時間帯ではないことは確実だ。
ベルはサイネリアと話し込んでいた。
話が終わったのか、サイネリアはリズのことを見つけると、心配そうな顔をして寄ってきた。
「襲撃にあったんだって?大丈夫かい?」
「だから私が守ったって言ったでしょ!……不可抗力だけど。」
ベルはそっぽを向き、小さな声で呟いた。
それがなんだか微笑ましくて、少し笑ってしまった。
リズが笑うと、他の仲間たちがリズの方へ寄ってきた。
「なんだか楽しそうに笑ってるね。」
「お?なんだなんだ?」
「私にも話してよ。」
上からオスマン、チェスト、ソレイユ。
レオは近くにはいるが、どうやら声を発する気は無いらしい。
リズがなぜ笑ってるかを話そうとすると、ベルが真っ赤になって阻止してきた。
「ちょっ!何話そうとしてるの!いいからあなたも報告してちょうだい!」
どうやら恥ずかしかったらしい。
お茶目な面を見たからか、最初に言われた皮肉のことなんて忘れてしまい、今はベルと仲良くなりたい気持ちでいっぱいだ。
しかし、ここでベルの話をしたらめんどくさくなりそうだ。
しぶしぶとサイネリアに事の発端を話し始めた。
「ええっと…朝早い時間に起きて、喉が渇いたから水でも飲もうと思って泉に行ったの。そしたらベルがいて…話してたら突然よくわからないものが飛んできたの。びっくりして目を閉じたら、ベルがその変なものから守ってくれたの。」
サイネリアは静かに何かを考えながら先を促した。
リズはそれに従い、話を続けた。
「ベルが守ってくれたおかげで私には傷1つなくて、ベルが相手を追い払ってくれたの。その後ベルに私を守ってくれたことを聞いたら、顔を真っ赤にしていろいろ行ってきたよ。」
リズはベルがいわゆる『ツンデレ』ということを暴露した。
まさかそこで自分のことをバラされるとは思っていなかったかのように、ベルは急に焦り出した。
しかし、ベルが焦ったことがわからないのか、リズは首を傾げ「どうかしたの?」と声をかける。
「どうかしたのじゃ無いわよ!な、なんでそこでそのこと言うのよ!」
「?ありのままを話しただけだけど?何かまずかった?」
「察してちょうだい!」
これまで黙っていたレオが「ふっ」と笑い声を漏らした。
それにつられるように、その他の面々も笑ったり、笑顔になったりした。
「なんだいベル。君ってもしかしてツンデレだったのかい?初めて知ったよ。あっはっは!」
「わ、笑わなくたっていいじゃ無い!」
「気持ち悪いな。いつもフェリシア様フェリシア様って言ってる狂信者がツンデレなんて。」
「首へし折るわよ?」
サイネリアは笑い、アルフは心底気味が悪そうにした。
2人の間にバチバチと火花が飛び交ってる中、それを遮るようにライサが2人の間に入り、2人を引き離した。
「キミたち仲良くできないの?まあワタシはいいんだけど、そろそろニックの胃袋が悲鳴を上げるんじゃ無い?」
「もう悲鳴をあげてるし、そう思うなら少しくらい僕に協力してくれたっていいじゃ無いか……。」
「イヤだね。」と言いながら、ニックに向かって舌を出している。
しばらくの間、暖かく気が抜けてしまうような気分に、神獣たちを含め全員が浸っていた。




