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魔科学世界のリズ  作者: Luna(ルナ)
3章  神の使い
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51話  スパイ?

<ラタム、根拠のないことで争ってる暇は…>

「じゃがリズたちが本当に人間からのスパイではないと言う根拠もないぞ?そもそも元をたどるとおかしいのじゃよ。」



ラタムは『サイネリア、よく考えてみるのじゃ。』と、サイネリアのことを心配した。

しかし、リズは自分が警戒対象に入り、ここまでラタムに信用されていない理由がわからない。



自分たちは今まで大人に頼ることも出来ず、子供5人の力だけで人間界を脱出した。

そしてサイネリアやラタムに会うことができた。



ラタムはおかしなところを順を立てて説明していった。




「人間界から脱出したとはいっているが、そもそもそれ自体がおかしいのじゃ。」




初っ端からおかしいと言われ、リズは今度こそ訳が分からず、心の中が騒がしくなった。

何がおかしいのだろうか?どうしておかしいのだろうか?



回答者のいない問答を繰り返していると、ラタムは説明し出した。




「汝等は人間界から脱出するとき、大人の協力を得たかえ?」

「私たち4人とオスマンだけで逃げたけど……。」



「たかが子供5人で国の中から脱走出来るものか?」

<子供たちが国を超えることはそこまでおかしなことじゃないだろ?第一国内だけでは取れない食材だってあるからね。>



サイネリアが横から口を出し、ラタムの質問を否定した。

サイネリアが横から口を出したのが気に食わないのか、それともリズたちが答えなかったのが気に食わないのか。



ラタムはしかめっ面になり、また口を開いた。



「ならば次の質問じゃ。国にいるときに少しでも戦争の話を聞いたことは?」

「学校では政府役員が来たけれど…。」



チェスはハッとしたように顔を上げた。

チェスは何処がおかしいのか分かったようだ。



しかし、チェスはすぐに俯いて、顎に手を当てて何かを考え始めた。



「政府の役員が来た?尚もおかしい話じゃ。」



ラタムはカラカラと笑った。

しかし、それは心から楽しい笑いではなく、乾いた笑いだった。



また真剣な、人を警戒しているような顔に戻り



「国境を超えたんじゃろ?国から出る方法を、汝等はそれしか知らないはずじゃ。」

「国境は普通に兵士が通してくれたし、何もなかったよ?」



レオやソレイユも何がおかしかったのか気づいたようだ。

まだ分かっていないのはリズのみ、ラタムは矛盾点を突きつけた。



「戦争の話を学びの場で話すほどなのじゃぞ?国境の警備が一番最初に強化されるはずなのじゃ。戦争がいつ起こるかも分からないようなときに子供が5人、国境を越えようとするのはおかしい。それに、国境を超えられること自体がおかしいのじゃ?」



リズはやっと、何処がおかしいのか理解した。

戦争準備真っ只中で国境を越えようとする人など、怪しい以外の何物でもない。



その人たちはスパイか、はたまた国が滅んで欲しくて他のところに情報提供をしているものに違いない。

なのになぜ、リズたちが人間界から脱走するときに止められすらしなかったのか、よく考えてみればわかるはずだったのだ。



「汝等がすんなり通されたとすれば、汝等が嘘をついているスパイ、もしくは本当のことを言っていて、汝等4人はただ戦争を止めたいだけかもしれないが、残りの1人はスパイということになる。」



目の前に突きつけられたことに、リズは動揺した。

ここまで助け合ってきた4人の中にスパイがいる可能性がある。



そんなことは考えたくもないけど、可能性としてありうるものだし、現実を見なければならない。

チェス、レオ、ソレイユはそんな、似たようなことを考えていたが……



「スパイなんているはずないよ!だってみんな…普通に学校にいた時から中が良かったし、ここまで助け合ってきたんだよ?なのにその中の1人にスパイがいるだなんて…そんなことあっちゃダメだよ!」



リズは自分の気持ちをさらけ出し、スパイなんてものは現実にはいないはず、ましてや自分たちの中にいないはずだと訴えかけた。



しかし…



「残念ながらいるかもしれぬ。人間がいつ何処でどんな嘘を吐いているか、分かったものじゃないのだぞ?そのスパイは汝等と居る時演技をしているだけかもしれぬ。」



リズは愕然とした。

だが、リズは認めたくないのか反発した。



「そんなことない!みんな笑うときは心から笑っていたもん!裏切ってるとしたら、心が痛んで笑えなくなるはずだもん!笑えてても違和感があるはずだもん!」



自分に思いつく限りのありえない理由を並べ立てた。

リズは今度こそ、自分の言っていることが理解され、スパイなんてものはいないと思ってくれると信じていたが……



「この世には人を裏切ったり傷つけても痛みを感じない者もいるのを知らんのかえ?それに、何も汝の仲間がスパイと言っているわけではなかろうが……」



リズはラタムが最後に言った言葉に、少し心が落ち着いた。

やっと分かってくれたのか、自分たちの中にスパイなんているはずない、と心の中で、安堵のため息をついていた。



しかし、先ほどラタムが最初に口にした言葉はどう考えても諦めたようには見えない。

むしろ、何も知らない子供に哀れみの目を向けているようだった。



ラタムは口を開き



「リズ、汝がスパイの可能性だって十分にあるではないか。」



ラタムは顔に笑顔を貼り付け、リズが思っても見ないことを叩きつけた。




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