間奏曲『転機』
地上でオークと戦闘した次の日、とりあえずの対策として隠蔽スキルを取得しステータスを隠蔽し隣町に向かった。
隣町のスーパーへは自転車で30分程で到着した。 町は普段通りの様子で、道中にすれ違った人達に片っ端から鑑定を使っていった。
どうやらダンジョンに一度も入ったことが無い一般人に鑑定を使うと見れる情報は名前と状態だけだった。 そして、スーパーで買い物をしている時に1人だけスキル保持者を鑑定することが出来た。
名前 高嵜茉子
称号 姉妹の絆
スキル 刺突 弱点看破 危機回避
チラッとしか見ていなかったが学生服を着た女の子だった様な気がする。 スキル的に回避タンクかアタッカーだと思った。 すぐに見失ってしまったので、称号の効果は見れなかったが収穫はあった。
必要な情報を得る事が出来たので、自宅に戻り偽装スキルを取得しステータスを名前と状態だけが表示される様に偽装して駅前のダンジョンに向かった。
名前 間崎聖人
称号
生還者☆☆☆ 964/1000 効果 大
ファイアーマン 39813/50000 効果 大
屠殺 1/10 効果 微
スタミナ 100/100
スキル
光源 火 地図 自動書記 鑑定 固定 遅延 空間収納 水 隠蔽 偽装
スキルポイント 21000P
オークとの戦闘後、新しい称号が追加されていた。 どうやら、ダンジョン内でも確率で魔物が消えずに残り、食材として使える様になるみたいだ。
午後からアパートの裏庭ダンジョンでの日課をこなし、夜に駅前のダンジョンの様子を見る為に向かった。 ダンジョンの入口まで人の姿を確認する事が出来ず、入口には簡易的なバリケードがあったが先日のオークに破壊されたみたいだった。
ダンジョンに入り光源と地図を発動すると、光源が辺りを明るく照らし視界の端にマップが表示された。
「あれ? 地図が全て表示されているな。 どういう事だ?」
表示されている地図を確認していくと裏庭のダンジョンと同じ地図が表示されていた。 ダンジョンの作りが同じなら探索が楽なので、2階層まで行ってしまう事にした。
駅前ダンジョンでの初戦闘は2つ目の部屋だった。 通路から中を確認すると地上で戦ったオークの小型版みたいな奴が居たので鑑定してみた。
名前 オークジュニア
スキル 突進
オークジュニアの身長は1.5m程で奴程の威圧感を感じ無かったので、真正面から近付くとオークジュニアはこちらに向かって突進してきたが、その突進に合わせて正面から使い捨てライター(アタッチメント付き)の炎の小太刀で真っ二つにした。 この程度なら脅威を感じ無いためサーチ&デストロイで一気に2階層まで駆け抜けた。
2階層も同じで地図が全て表示されていた。 二階の魔物は一回り大きくなったオークだった。 オークジュニアからオークになってもステータス的に変わりは無く。 特に問題無く二階層を回って遭遇した数は30体程で、その中で一回だけ首の無いオークの身体が残った。 二階層まで魔物を間引いたので探索を止め、小休止後にリポップしたオークを狩り帰路についた。
それから1ヶ月間、毎日駅前ダンジョンの間引きを行うとアパート周辺でオークを見かけなくなった。 俺が駅前ダンジョンの間引きを行っている間に世界は変革の時を迎えていた。
地上で自衛隊が活動し始めたが人手が足りず、政府は魔物が溢れた市町村をトリアージすることを決めた。 被害の大小と住民の避難状況で判断し、壊滅的な被害を受けた市町村は破棄。 住民の避難先を大都市に集中させ、ダンジョンはスキル保持者に託し、自衛隊は地上の魔物の討伐に専念した。
地上の魔物を掃討出来たのは1ヶ月程経ってからだった。 政府は破棄した市町村の中でも、スキル保持者が攻略出来ずに成長したダンジョンが残っている所に新たな都市を建設。 ダンジョン都市として再建する計画を立案したと発表した。 そして、自衛隊は継続してダンジョンを攻略とスキル保持者の選別を行っていた。
一時的に人とスキル保持者との確執は収まりを見せていたが、火種は燻り続けていた。 マイクロチップを埋め込む事で、一般人には手を出さないというアピールは出来た。 だが、スキル保持者同士での争いは絶えなかった。 ダンジョンの中は無法地帯で犯罪が起きても立証が難しい為、殺人や強姦が横行し力の無い者達は自然と集まりパーティーを組んで自らの身を守る術を身に付けていった。