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救出~そして

 6階層へ下りると早速アクティブソナーを使用した。 すると、すぐに反応があったが、普通の反応と違い変な感じがした。 4つの反応を感じる時があれば、とても大きい1つの反応を感じる時もあった。 反応する位置は階段からそう遠くない距離だった。もしかしたらちょっと不味い状況なのかもしれない。

 大体の位置を把握したので、罠を回避しながら最短で向かって行くと目の前に巨大なスライムがいた。 スライムは薄く伸びているみたいで所々で肉の薄い箇所から中を見ることが出来た。

 2人分の女性の顔を確認する事が出来たが動きがなかった。 その為、生きているのか取り込まれかけているのか判断が難しかった。 だが、そのままにするのは非常に不味い、とりあえずスライムをなんとかする事にした。

 スライムから少し離れた場所に立ち、闘気を使ったノズル伸縮式ライターの炎で表面のスライムのみを焼く様に炎の位置を調整しながら慎重に炎を操った。


 数秒後、表面のスライムを焼き尽くすと透明の膜の様なものが見えた。 おそらく例の結界とやらだろう。 とりあえず声を掛けてみた。


「おーい、生きてますか?」


 そう声を掛けると、透明の膜が消え女性が2人立ち上がった。 女性が立ち上がると後ろに寝かされた女性がもう1人見えたので、女性3人組で間違いないだろう。


「あの、助けて頂きありがとうございます」


 妙齢の女性が頭を下げた。 その隣に立っているちんまい女の子は怪しげな物を見るような視線を送ってきた。


「いえ、こちらはお嬢さんの依頼を受けて来ただけですので」


「依頼ですか?」


「ええ、こちらを見て頂ければ分かるかと」


 そう言って腰のアイテムポーチを外し女性に渡した。 すると、それを見たちんまい子が前に出て来た。


「それ! 茉子姉のポーチ!」


「そうです。 私は貴方のお姉さんからの依頼で来ました。 とりあえず、間に合って良かったです。 最悪は遺品を持って帰らないと行けないなぁと思っていたので」


「そう……ですね。 後少し遅かったらそうなっていたかも知れません」


 女性は苦笑いを浮かべた。


「そこで寝ている女性は大丈夫ですか?」


「え、ええ、由依はスタミナの使い過ぎで……しばらくしたら起きると思いますが」


「ふむ、こちらを」


 そう言って懐に手を入れ探す振りをしてストレージからスタミナポーションを取り出した。


 スタミナの使い過ぎで昏倒した場合は長いと3日以上寝込む時があるとネットに書いていた。 スタミナポーションを女性に渡し、


「これを飲ませてください。 回復が早まると思いますので」


「これは……こんな高価な物は!?」


 女性はポーションを鑑定したみたいで驚いていた。 スタミナポーションはゲームで言うMP回復アイテムだ。 スキルを使用すると必ず消費するスタミナを回復できる唯一のアイテム。 たまたま手に入れた探索者がオークションに出して高額で取引されている。 組合でも優先して買い取りを行っているが需要に追い付いていないのが現状だ。


「皆さんを無事に地上に送る為の必要経費ですよ。 それに……」


「それに?」


「いえ、なんでもないです。 そんなことより早く飲ませてあげてください」


「ええ、そうですね」


 女性は寝ている女の子にゆっくりとスタミナポーションを飲ませた。 先ほどまで悪そうだった顔色が少し良くなった気がした。


「さて、じゃあ軽く自己紹介をして出発しましょうか。 私の名前は間崎聖人。 探索者になってまだ1ヶ月とちょっとの新人です」


「私は高嵜朱音です。 この子が次女の絵里香で、寝ているのが末の由依です」


「お兄さん、本当に新人? ここに1人で来れている時点で新人じゃないから」


「ここの地図をBarのマスターに頂いてね。 後は、まあ相性が良かったんだよ。 寝ている彼女はどうしますか? 私が背負って行きましょうか?」


「いえ、私が背負って行きます」


 朱音は寝ている由依を背負うと再びこちらに来た。


「それじゃあ、私が前を朱音さんは真ん中、君が後ろだ」


「ママの事は名前で呼んだのに、私のことは名前で呼ばないの?」


「年頃の女の子を名前で呼ぶには少し抵抗があるよ。 我慢してほしいな」


 まだ納得がいかないみたいで膨れっ面をしていたが、黙って後ろから付いて来た。

 最短で5階層への階段に向かっていると数匹のスライムが行く手を阻んだが全てノズル伸縮式ライターで消し炭にした。 階段に到着すると限界が来たのか絵里香が詰め寄ってきた。


「お兄さん! あれはなに! スライムが瞬殺だったんだけど!?」


「あれはスキルだよ」


「スキルって、お兄さん。 ライター使ってるじゃん!」


「ダメよ、絵里香。 探索者のスキルに関しては聞いちゃダメなんだから」


「でも!」


「あれはスキルって事でいいんですよね?」


「ええ、そうです」


 そう言って先を急いだ。


 ダンジョンの出口まで一切休憩を取らず、最短で階段を目指し最速で迫り来るスライムを消し炭にして来た。 出口まで来るとまたしても絵里香が詰め寄ってきた。


「お兄さん! どうして地図を見ないで罠を回避しながらこんなに早く地上まで戻れるの!」


「スキルだ」


「スキルよね」


「ママもなんでそっちについてるのよ!」


「だって」


「もう! 絶対おかしいわ。 こんなのチートよチート!」


「おいおい、チートって何も変なスキルは持っていないぞ?」


「そうよ、お母さん鑑定したけど特に変わったスキルは無かったわよ?」


「だから余計に怪しいんじゃない!」


「絵里香、あんまり騒ぐと由依が起きてしまうわ」


 ダンジョンから脱出し警備員に発見の報告とチップをかざし帰還の打刻をした。 外は真っ暗で時間的にギリギリ最終バスに間に合いそうだった。 バス停まで歩き、しばらく待っていると組合行きのバスが来たので乗り込み組合に向かった。

 バスに揺られること30分。無事に組合に着くと総合受付に立っていた受付嬢がこちらに気づき駆け寄ってきた。


「間崎さん!」


「やぁ、こんばんは。 こんな遅くまで仕事なんだ」


「間崎さんを待っていたんです!」


「そうだったのか、それは悪いことをしたな」


「無事ならそれでいいです……」


「ああ、無事に依頼完了だよ」


 後ろにいた朱音達に道を譲った。


「良かった。 朱音さん……本当に無事で良かった」


「ありがとう、瑠美ちゃん。 あの子は?」


「はい、茉子ちゃんは上で寝ているはずです。 門崎さんが助けに行ってからすぐに」


「そう……ありがとう」


 朱音はこちらに振り返り、


「門崎さん、この度は助けて頂き」


「ああ、お礼とか良いから早く行きな。 その子も早くベットで寝かせてあげないと」


「はい、このお礼は必ず」


 そう言って2階の階段を上がって行った。


「さてと、依頼も無事に終わったし帰るわ」


「はい♪ お疲れ様でした」



 受付嬢のスマイルを頂き帰路についた。


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