表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/44

幕間~高嵜一家の苦難(朱音視点)

 夫がダンジョンで死亡扱いになってから半年、あの人が残した遺産を切り詰めながら残された子供達と協力してなんとか生活をしていた。 一時は家を手放そうと思ったが夫との思い出や子供達の事を考えると手放す事が出来なかった。


 そんなある日、珍しく長女の茉子が体調を崩したので3人でダンジョンに行く事になったが、あの子を家に置いて行けなかったので組合の休憩所を借りて休ませる事にした。


 私達のパーティーは長女の茉子が敵を惹き付ける担当していたので、茉子が抜けた事により前衛が心許なかった。 その為、後衛の火力だけで攻略がしやすい玄武でスライムを相手にする事にした。

 順調に5階層までやって来たが、ユニーク個体は1体のみとハズレを引いた。 私の広範囲殲滅スキルで一気に数を稼ぐつもりだったが当てが外れてしまった。

 上級者ダンジョンの玄武は5階層までは宝箱が無く、6階層から見つかる事がある。 今日はそれを目当てに潜っているが、やはりあの子が居ないだけで戦闘が安定しない。徐々に傷が増え、回復に時間を使う様になっていた。

 手持ちの回復アイテムが少し心許なくなってきたから早めに切り上げる事を決めた。 その矢先に、大量のスライムに囲まれてしまい退路を絶たれてしまった。


「どうしよう、ママ~もの凄くピンチだと思うんだけど」


 次女の絵里香が苦笑いをしていた。


「そうね、もうダメかもしれないわね」


「お母さんの諦めが早い所。 私、嫌い」


 隣にいた末っ子の由依が不機嫌そうな声を出していた。


「でもね、由依ちゃん。 これはどうにもならない気がするのだけれど」


「絶対に帰らないとダメ。 お姉ちゃんが1人ぼっちになっちゃうから」


「そうだね、茉子姉だけだと生きて行けないっしょ♪ 私達がいないとね」


「私がなんとかする。 後はお願い」


「なんとかするって」


 由依が手に持っていた和弓に闘気で出来た矢をつがえ、集中し解き放った。


流星雨(ミーティアシャワー)


 闘気の矢はダンジョンの天井に当たると、幾何学模様が描かれた巨大な魔方陣を形成し、魔方陣から無数の矢を降らせた。


 私達を囲んでいた大量のスライムは由依の放った矢に貫かれ溶けた。直後、由依が倒れた。


「由依!?」


「あ~由依の奴、ずっと前から連絡してた切り札を使ったのかぁ」


「絵里香は今のを知っているの?」


「うーん、詳しくは知らなかったけど、由依が何かを練習しているのは知ってたよ。 時々、夜になると家の裏山に行ってたみたいだから、たまに凄い音が響く時あったでしょ?」


「そうなの……全然知らなかった」


「さてと、スライムはいなくなったから移動しよ。 ママは由依を運んでね。前は私が見るから」


「わかったわ」


 由依を背負って前を歩く絵里香の後を追う。 5階に戻る階段まで後少し、と言う所で毒と酸を周囲に撒き散らすアシッドスライムを発見した。


「ママ、どうしようか。 あいつを避けて階段には行けないし、この状態で戦っても勝ち目がないよ」


 絵里香の目に涙が見えた。


「そうね。 じゃあ、ここで助けが来るのを待ちましょうか」


 アシッドスライムから少し離れた部屋の一角に場所を決め、背負っていた由依を地面に寝かせた。


「でも、ママ~いつ助けが来るかわからないよ?」


「ちゃんと水と食料はあるんだから、2.3日は大丈夫よ。 その間に由依ちゃんが目を覚ませば、あれを倒して脱出しましょう」


「その間、ずっとママは結界を使い続けるつもりなの?」


「大丈夫よ。 数時間に1回結界を張り直すだけだから」


「でも……」


「大丈夫だから。 さぁ、結界を張るわね」


 これまでの探索でスタミナがだいぶ減っているが、1.2回使っても気を失う程ではない。 精神を集中し自分を中心に周囲3mの不可侵の領域を作る。

 この結界、使い勝手は良いが欠点が1つだけある。 それは、結界を張っている間、使用者のスタミナが一切回復しないこと。

 現状、丸1日結界を張ることは出来るが、結界を解いた直後はスタミナが全く無い状態になる為、その後の行動に制限が掛かる。


「とりあえず絵里香ちゃんは少し寝たら?」


「うん、そうする」


 装備を外し背嚢から寝袋を取り出した絵里香はすぐに眠りについた。 少し無理をさせてしまったかなと、後悔の念に苛まれた。


 数時間が経ち、ごそごそと音がして絵里香が起きてきた。


「おはよう、ママ」


「よく眠れた?」


「うん!」


「そう、それじゃあ結界を張り直してお母さんもちょっと寝るわね」


「はーい♪」


 再度結界を張り、未だ目を覚まさない由依の様子を見たが特に変わった様子は無かった。 絵里香の寝袋を借りて眠りについた。

 

 深い眠りについていたが身体を揺さぶられ、切羽詰まった絵里香の声で起こされた。


「ママ! 起きて! 大変だよ」


「う、うーん。 どうしたの?」


「どうしたの? じゃないよ! 周りを見て!」


「周り?」


 絵里香にそう言われ周りを見ると結界が何かに覆われていた。


「なにこれ?」


「さっきのスライムだよ。 ママが寝てしばらくは何も無かった。 でも、私達の匂いを嗅ぎ付けたみたいで近づいて来たけど、結界に阻まれたから一旦は離れて姿が見えなくなったの。 そしたら突然、上から降って来てこの状態」


「そうだったの」


 周囲の状況を把握していると結界が軋む音が聞こえてきた。


「あれ? この音……」


「うん、あいつが取り付いてからたまに音が聞こえる様になったの」


「うーん、ちょっと不味いかもしれないわね」


「ママ?」


「結界が破られるかも」


「ええ! それって大ピンチじゃん!」


「そうね。 結界の張り直しは後2回は出来るけど……」


 普通の魔物ならに阻まれて諦めるけど、スライムはこちらを取り込もうとしているから、結界を張り直しても離れることがない。 それに、普通ならまだ効果時間に余裕があるはずなのに結界が壊れそうだった。 もう一度、結界を張り直してもさっきより早く結界が壊れるだろう。 まだ、由依が目覚める様子が無いしこのままだと……


「ママ……どうするの?」


 絵里香の言葉に答えを出す事が出来なかった。




 状況を打破する事が出来ないまま時間だけが過ぎていき、タイムリミットが迫っていた。 すると、突然結界を覆っていたスライムが燃えだした。 燃え始めたスライムはあっという間に溶けてしまった。

 結界の周囲が炎に包まれていたが、すぐに炎が消え失せ周りが見えるようになった。 その時、男性の声が聞こえた。



「おーい、生きてますか?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ