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上級者ダンジョン~玄武

 少女と探索者達のやり取りを見ていたが、玄武ってとこの6階はそんなにヤバい奴が出るのだろうか。 出現する魔物が分かれば、ある程度の対策が出来るんだが情報が足らないな。


「マスターは玄武ってダンジョンにどんな魔物が出るか知らない?」


「ん……注文は?」


 とりあえず何か注文しないとダメみたいだ。


「いや、これからダンジョンに行くつもりだから酒はちょっと……」


「……」


 そう言うとマスターは顔を右に向け、顎をしゃくった。 それに導かれるように視線を動かしていくと壁に貼ってあるポスターが見え『毎日絞りたて!新鮮ミルク!』と書かれていた。


「えっと、ミルク。 ですか……」


「……」


 マスターの無言の圧力に耐える事が出来なかった。


「ミルクをお願いします」


「ホットかアイス」


「えっと、じゃあホットで」


 マスターはミルクと蜂蜜を鍋で温め始めると、徐にマスターは口を開いた。


「玄武には不定形の魔物、スライムが主になる。 従って物理攻撃は効きにくい、対策はしていけ。 それと」


 マスターはBarの棚から丸められた紙を渡してきた。


「これは玄武の4階までの地図だ。 5階はユニーク個体がいる1部屋しかない。 ユニーク個体の再出現の時間はランダムで、出現する個体数もランダムだ」


「スライム……それに、ユニーク個体がランダムに湧くとか」


「さっきの探索者達も言っていたが、6階からは毒にも気をつけろ」


 マスターは出来上がったホットミルクを置いてくれた。 甘い香りがするホットミルクに口をつけた。


「旨い……」


 ホットミルクの甘さと温かさが冷えた心と身体を温めた。


「マスター、ありがとう。 旨かったよ」


 ホットミルクを飲み終えると席をたった。


「行くのか?」


「ああ」


 Barの出入口の所にあるスキャナーに右手をかざして会計を済ませるとロビーに居る少女と受付嬢の所に向かった。 近づいて行くとこちらに気が付いたのか受付嬢が声を掛けてきた。


「間崎さん……」


「対象の特徴を教えてくれ」


 俺の声に反応したのか少女は顔を上げて、


「探してくれるの?」


「間に合うかわからないし、玄武には行ったことがない。 だが、見て見ぬふりは出来なかった。 ただ、それだけだ」


「ありがとう……」


「それで特徴は?」


「えっと、母の名は高嵜(たかさき)朱音(あかね)。 服装は……すみません、覚えていないです。 次女の絵里香(えりか)は斥候で小型の盾とナイフを持っていて、身長は家族で一番小さいです。 末っ子の由依(ゆい)は弓道の経験者なので和弓を使います。 前もって打ち合わせした通りに行動していれば、何処かに3人で固まって結界を張って助けを待っていると思います」


「服装は不明か、3人で集まっているならわかるか。 で、結界ってなんだ?」


「あ! えっと……母が持つスキルです」


 少女の声が段々と小さくなっていった。


「そうか、スキルに関しては黙っておくとしか言えないが」


「はい、ありがとうございます」


 すると、先ほどまで黙っていた受付嬢が口をひらいた。


「間崎さん、本当に行くつもりなんですか?」


「ああ」


「でも、間崎さんの武器は」


「わかっている。 相手はスライムだろう? ちゃんと対策していくさ」


「あの! これを」


 少女は腰に着けていたポーチを渡してきた。


「これは?」


「アイテムポーチです。 その中にポーションや中和剤等が入っているので、道中の回復と家族を見つけたら渡して下さい」


 渡されたポーチは小さな物でそれだけの物が入っているとは思えない。 間違いなくアイテムボックスの類いだろう。


「こいつは貴重な物じゃないのか? それを簡単に預けるというのは……」


「確かに貴重だと思います。 でも、貴方は信用出来ると。 いえ、私は貴方を信用したいと思っています。 家族を助けに行くと言ってくれた貴方を」


「そうか」


 ポーチを腰に着けてその場を離れようとすると、


「家族をお願いします」


「ああ、任せろ」


 そう言って組合を出て玄武行きのバス停に向かった。 玄武は北門の近くにあり組合からは少し離れていて、バスに揺られること30分程。 ダンジョンの入口に着くと初心者ダンジョンと同じく警備員が常駐していた。

 警備員に女性3人組の捜索依頼を受けて来たと説明し、現段階でもダンジョンを出た記録が無いことを確認してもらいダンジョンに入った。


 玄武に入り探索スキル(地図、自動書記)を使用、マスターから貰った地図を使い探索スキルを更新した。 玄武というイメージからダンジョン内はジメジメしていると思っていたが、特に変わった感じはしなかった。 移動スキル(光源、アクティブソナー)を適時使用し探索を開始すると早速スライムと遭遇した。

 スライムは裏庭ダンジョンで初遭遇した時と同様に天井に張り付いていた。 天井の高さは約3m。 木刀は届かないし、効果も薄いだろう。

 

 空間収納から1つのアイテムを取り出した。 それはノズル伸縮式の使い捨てライターだ。 火口が伸びる為、安全に火をつけることが出来る優れもの。


 スイッチを入れると使い捨てライターから火炎放射器の如く高温の炎を吐き出した。 天井に高温の炎が広がり、張り付いていたスライムは炎に包まれ、地面に落ちると数秒後に蒸発した。

 ノズル伸縮式使い捨てライターはアタッチメントが無くても十分な火力を発揮し、これからはこれをスキルの効果だと言って普段から使って行くことに決めた。 その為、隠蔽していた『火』のスキルを表示するようにして木刀と併用することにした。


 完成された地図を頼りに、最短で探索を進め5階層までやって来たが、目の前に広がる光景に唖然とした。 マスターからは5階層は1部屋しかなくユニーク個体のみ、時間と数がランダムでホップする特殊マップ。 だと聞いていたが、想像以上の光景に言葉を失った。 部屋を埋め尽くさんばかりのスライム。右も左も上もスライムだらけだった。

 夥しいスライム達に火力が足りるか不安になってきたので称号以外で使い捨てライターを強化出来ないか試してみた。 闘気(オーラ)は肉体及び装備を強化する。 となっているから、使い捨てライターも装備に該当するはず。


 闘気を使用し眼前のスライムの群れに向けノズル伸縮式使い捨てライターのスイッチを入れた。 称号と闘気で更に強化された炎は火炎放射戦車の様な強力な炎を吐き出した。

 間近にいたスライムは炎に焼かれ2.3秒で溶けた。 左右にライターを振り部屋の中央までの道を切り開き、部屋の中心付近で火炎放射器(使い捨てライター)を縦横無尽に振り回し部屋を焼き尽くした。

 全てのスライムが溶けた部屋を見回してドロップアイテムが無いことを確認すると6階層への階段を下りた。



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