協力
最近、見たいものが多すぎる今日この頃…
そして、今日は夏の校内戦の日。
弥嗣は観客席に座り、行われている試合を見ていた。
昨日、あれから弥嗣は義哉と会うことはなく、自宅に帰った。気まずい空気の為か、いつもなら一緒にいるはずの義哉の姿は弥嗣の近くには見えない。
謝罪のタイミングを逃し、どうにも言いにくいのだろう。
先程、たまたま見かけた義哉はどことなく気持ちが落ち込んでいて、いつものような元気さはなかった。昨日の弥嗣との会話が予想以上に響いている様子だ。
だが、それでも弥嗣は声を掛けない。
弥嗣は試合に視線を向けながら、昨日の宮下との会話を思い出す。
「あぁ、それがな。嵯峨に本気を出させてほしいんだ」
いきなりの言葉に弥嗣は問う。
「どういう事ですか?」
「嵯峨はいつも手を抜いて、何となくの加減でやるだろ。お前と一緒のクラスがいいが為に」
端から見ていてもバレバレな手の抜きようは明らかだったので、弥嗣はコクりと頷いた。
「それを見ていたA組の担任の教師が嵯峨の力に気づいたんだよ。本当ならA組にいるはずの力を持っている事に」
それはそうだ。義哉は本当ならA組に入るべき力がある。
「それを見抜いたA組の教師があんな凄い力を持っている生徒がD組に埋もれているのはダメだ、校内戦で勝たせないといけない、と学園長に直談判したんだ。それを学園長は本人が勝ったのならA組に入れる事を許可した。その結果、A組の教師が嵯峨を校内戦で勝たせる事に躍起になり、嵯峨に一番親しいであろう五月雨に協力してほしいそうだ」
宮下の説明に弥嗣は口を開く。
「協力します。本当は義哉をA組に入れるべきだと思ってましたから」
その言葉に宮下は弥嗣をみる。弥嗣のその表情は真剣その物だった。
「わかった。ではA組の教師と今から会うことになるが、いいか?」
「はい―――」
そうして、A組の教師と話し合い昨日はそれで自宅に帰った。
昨日の会話を思い出し終わった時、試合終了の合図がなる。
次の試合は義哉の試合だ。
弥嗣は再び、目を向けるのだった。




