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訳と教務室




1年D組の教室から立ち去った弥嗣は数メートル進んだところで立ち止まり、壁にもたれ掛かる。

一息吐き、俯いた。

先程の弥嗣の言動は演技。義哉の最初の問いに弥嗣は閃いた。義哉にクラスを上がってもらう方法を。

それが、さっきの弥嗣の言動に繋がる。

何も答えなかったのも、怒声を上げた義哉に驚愕の表情を向けたのも、謝ろうとする義哉を一瞥し立ち去ったのも。全てはそのため。

だからわかりきっていたはずだった。立ち去ろうとした時の義哉の悲しそうな表情ぐらい。

自分の為に、私利私欲の為にそうさせた。

――――なのに……。


弥嗣は胸を押さえる。心臓を突き刺すような鋭い痛みではない。

心を締め付けられるような、そんな痛みだ。

わかりきっていたはずなのに、苦しさが弥嗣を襲う。

「――――俺に、そんな資格は、ない……」

静かな呟きが弥嗣の口から漏れる。

弥嗣は胸を押さえていた手を下げると再び歩き出す。今も襲いかかる心の痛みを無視して…………。






「失礼します」

教務室に辿り着いた弥嗣はドアを数回ノックしてから、ドアを開ける。

「あぁ、五月雨。こっちだ」

弥嗣の姿を見て、担任の宮下が声を上げる。他の先生は見回りの為か、教務室内にはいない。

弥嗣は歩を進め、宮下の前で立ち止まる。

「どうかしましたか?」

弥嗣の問いに宮下は口を開く。

「あぁ、それがな――――」


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