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第八話


※海斗sideです。










──僕はドラゴンだ。



そう夏音に教えた後、僕は目を伏せた。


よく童話では人を喰らう獰猛な生物として知られているから、夏音は怖がるんじゃないかと思った。


だって、夏音はそういうファンタジーものの本が好きだったし。


夏音が僕を恐れるなんて、怖がる表情なんて、絶対に見たくなかったからね。

…夏音に嫌われるんだよ?

それは、僕に死ねって言っているようなものだよ。



「……ねー、海斗」


暫く無言でいると、夏音から話しかけてきた。

その声は、僕が予想していたものとは違って、恐怖に染まっては居なかった。


「ん?」


それに気付いた僕は、恐る恐る、伏せていた目を夏音へと移した。


「魔界の住人って、皆が愛国心ハンパないんだよね?」

「? うん、そうらしいね」


何やら思案顔の夏音。

…何か悩み事でもあるのかな?

夏音が聞きたいことの核心は分からなかったが、ともかくも質問に答える。


「だったらさ…どうして父さんは日本に行こうと思ったのかな? 愛国心強いなら、自国から離れたくないと思うはずじゃない?」


「……」


「……」


うん、確かにそれもそうだね…。

僕らとは違って、生まれも育ちも魔界らしいし、愛国心は強いはず…


「…そうだね……愛国心よりも、愛情の方が勝ったんじゃないかな? 

 日本は、人間界の人間たちみたいに魔界と対立していたわけではないし。 それに、周りも積極的には止めなかったみたいだから」


もしかしたら、王の任務に嫌になったから逃亡したのかもしれないけれど。


「…いやいやいや、そこは止めようよ当時の人たち!」



そう叫ぶ夏音。


……まぁ、相手は王だしね…。

絶対王制ではなくとも、不敬罪くらいはあるだろうから、周りは逆らえなかったとも考えられるね。

……あぁ、そういえば。



「それにね、そのことは国民にも広く知れ渡っていたらしいよ」



付け足された僕の言葉に、「…は?」と言いたげな表情で絶句する夏音。

まぁ、普通はそういう反応だよねぇ。



「…ちなみに、海斗は、どう思っているの?」


「うん…? 何が?」


「この国全体で駆け落ちに賛成したこと」


…正直言うと、もうここまでくると駆け落ちじゃないと思うけどね…。

まあ、そこはさておいて。



「──良いと思うよ?」


「え、容認…!?」


そんなに驚かなくても良いと思うんだけどな、夏音。



「だって、それは個人の勝手だからね。 …王とはいえ、自由まで制限されるのはどうかと思うよ」



王だって人なんだし、嫌なことの1つや2つくらいあるだろう。


…まぁ、ぶっちゃけると、王は代々ドラゴンだから、それに変身しちゃえばどこへでも行けるんだろうけどね。


それに、ドラゴンに変化しちゃえば誰もかなわないらしいから、無敵状態だし。



───全身をくまなく覆っている硬い鱗。

神話とかだと、柔らかいお腹が弱点として描かれているけど、実際はお腹もすごく堅いらしい。


……そりゃあ、確かに、お腹は鱗で覆われていないから柔らかい部分ではあるけれども…どんなに鋭い剣や矢でも、中々突き通せないくらいには硬いんだから……多分大丈夫だよね…?


聞くところによると、尻尾のほうにはとげとげした突起とっきも付いているみたいだから、尻尾を振り回せば一発で解決だしね。




「──…そういえばさー、この国にも身分制度とかあるの?

 王制のところは、身分制度がある場合が多いよね」



「この国はないよ。


 この国は、王であっても庶民であっても、身分に関係なく、好きな者と結ばれて良いことになってるんだよ。 

 …もちろん、相思相愛が大前提だけどね」



逆に、相思相愛じゃなければ絶対に認められないらしいけど。


平等に愛せれば、2人までなら囲っても良いっていうのが法律にもあるし。


…まぁ、よっぽどの事がない限り、伴侶は生涯に1人だけらしいけれどね。


父さんの後宮がどうたらっていう事件?も、周りが言っていただけで、父さんも実際はとらなかったし。


(王とか、跡継ぎがどうしても必要な地位だと、稀にこういう風に周りから薦められることがあるらしい。

跡継ぎである男子が産まれなかったら困るしね)



「良いところだね。


 ──ところでさ、私はどうすればいいの?」



? どうすればいいって…



「どうするって、僕と一緒に住むよね…?」


僕は小首を傾げてそう問うた。

…それとも、夏音は僕と一緒じゃ嫌なの?



──嫌って言ったらどうするかって?


そうだね…その時は、僕が納得するまでとことん理由を問い詰めてから、さとすよ?


…まぁ、僕は絶対に納得しないだろうから、最終的には夏音が折れてくれるんだけどね。



「……うん。…いや、そういう事じゃなくてね?」


「それ以外は好きにして良いよ。

 いくらでも好きなものを買ってあげるし、何処にでも連れて行ってあげるよ。


 もちろん、何か要望あったら遠慮せずに言って良いんだからね? それに──」


お金なら、税金じゃなくて自分のお財布ポケットマネーから出すから心配しないでね──と付け足すものの、夏音は何故か遠慮して、


「ちょ、過保護…! さすがに甘やかしすぎだよ」



…そうかな?

夏音の笑顔が見れるなら、そんなの安いものだよ?



「──そんなに何でもかんでもしてもらわなくて大丈夫だよ。 …もう私は働いているんだよ?」


ああ…もしかして、さっき焦っていたのは、自分もお金を持っているんだから出してもらわなくても良いってば、ってことかな?


夏音のためにお金を使うのは、全然負担じゃないんだから、そんなに気を使わなくて良いのに……。


──それに、



「働いていたのは日本での話でしょ? それに、夏音はいつまでも僕の可愛い妹なんだから。 困ったことがあったら何でも言ってね?」



夏音は何でもかんでも、自分だけで抱え込んじゃう時あるからね。

責任感が強いんだろうけど、偶には周りを頼ってほしいものだよ…。


…溜め息を付きそうにあるものの、



「…そりゃあ、困ったことがあったら当然海斗に一番に頼るけどさー」


という小さな呟き(多分夏音は意識してない)で気持ちが上昇していく。


我ながら単純だとは思うけれど、嬉しいものは嬉しいんだからしょうがないよね。



「……どうせなら、私も働きたい!」

続いて夏音の口から飛び出した言葉に、ぱっと思考が停止する。



「…どうして(そんな危険なことを)?」


「だって、せっかくの魔界だよ? 魔術が使えたらかっこいいじゃんか!」


そういえば、夏音は小さいころから、本が好きだったね。

本好きが転じて職業として選ぶほどなんだから、それは相当なものだと思う。



「……ってことで、魔術を習いたいです!」


「あぁ、夏音の夢だったからね…魔法使いになるんだーって」


「私の名誉のために付け足しておくと、そんなこと言ってたのは昔の話ですけども。…そしてそれ黒歴史だから、今すぐ忘れようか?」


「え、嫌だよ?」

「…………」




暫くはブツブツと呟きつつ僕の方を恨ましげに睨んでいた夏音だったが、溜め息を1つ吐くと気を取り直して、ぼくの説得へと戻った。


…いや、だから、容認しないよ?


夏音は知らないだろうけど、魔術師って結構危ない職業なんだよ?

そりゃあ騎士とかよりはまだいいけど、命の危険に晒されることだって少なくないんだから。あと……



「──それに、海斗はドラゴンなんでしょう? ドラゴンと魔術師なんて、最強最高じゃんか!」



……。



「しかも双子! タッグを組めば敵なしだと思うんだよ!!」



……夏音と『最強ペア』を組む…?



「…確かに最高だけど、夏音に戦闘なんていう危険なまねをさせるわけには……!!」



「危険じゃないって。

私だってちゃんと訓練して強くなるし。

…さすがにかいとには勝てないだろうけど、自分の身は自分で守れるくらいには強くなるから!



……それに、いざとなったら海斗が護ってくれたりとか…」



………。






「───……くれぐれも、怪我はしないようにね?」



そうだよね、僕が守れば良いんだよね! それなら危険じゃないし!!






おかしなところは指摘していただけると嬉しいです。


とりあえず、ジャンジャン更新していくつもりです。



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