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第六話


外はもう夜となり、月明かりが外を朧気おぼろげに照らしている。





──継承式が終わった後、私達はすぐには解放されなかった。

…なぜなら、お偉いさん方が、兄に入れ替わり立ち替わりで挨拶しにきたからだよ。


(最初は、私だけでも脱出しようと思ったんだけど、海斗がどうしても離してくれなくてねー……)






──結局、解放されたのは、すっかり日が暮れてからだった。


窓から見える外の空には、幾ばくかの星と2つの月。



「……もうすっかり夜だねー」

 …どれだけかかってたの。



「そうだね。 お疲れ」


そう言って頭を撫でてくる海斗。


「ありがと!」



夏音も同じ事をするために海斗の頭へ右手を上げるものの、海斗の背が高いために出来ず、


「……むー。 背高いんだね、海斗」


「そうかな? 男子はこれくらいが平均なんじゃないかな。


 夏音は女の子なんだから、それくらいがちょうど良いと思うよ?」



「…私、164㎝だよ。 同性の中では高い方なんだよ、これでも」



「それ以上高くなる必要はないよ」



「そうだね。私はこのくらいで十分。


 でも、背の高い女性って憧れるけどね。 かっこいいから」


「僕は、背が低い子も可愛いと思うよ?」


「でも、やっぱり理想は160㎝くらいで──」



──…いつの間にか話が逸れていた。



「──まぁ、とにかく。


  海斗、私にこの世界の事を教えてよ。知っているんでしょ?」



「そうだね。 うーん、どこから話そうかな…」






海斗曰わく、ここは地球ではなく、所謂いわゆる異世界と呼ばれる地であること。



曰わく、この地は魔界と呼ばれていて、海斗は王であること。


また、魔界とは、魔物が住んでいる世界という訳ではなく、『魔術が使える者達が住んでいる土地』であること。


曰わく、この世界は魔界と人間界(魔術が使えない人間達が住んでいる土地)に分かれ、度々小競り合いが起こっていること。



曰わく、魔術が使えるのは、獣人やエルフをはじめとする擬人ぎじんと呼ばれる者達であるが、稀に人間であっても使えることがあるということ。


そして、使える人間たちは、『人間』ではなく『魔術師まじゅつし』と呼ばれ、人間達には疎まれ、魔界の住人たちには受け入れられること。


因みに、魔術師達は魔界で生まれ育つためか、魔界への愛国心が強く、また、人間及び人間界を疎ましく思っていること。



曰わく、魔術師たちは、大体が突然変異であり、この者達は魔術が使えると分かった時点で人間界から追い出され、魔界に住むことになるということ。


曰わく、エルフ達は森の奥深くに住んでいること。



曰わく、魔界にも街があり、国民みなの仲が非常に良いこと。


そして、例に漏れず、擬人であっても魔術師であっても、愛国心や王への忠誠心は非常に高いこと。


(人間界とはここらへんが大幅に違うらしい。 人間界は、小さな村同士でもたまに争いが起こるんだって。 


 あと、人間界の国民たちは、国王が良ければそれなりに国を守ろうとするけれど、国王が悪ければ勝手に自滅する場合もあるらしい。

 つまり、国王次第で国はどうにでもなるってことだね)



曰わく──




「──…あのさ、質問良い?」


「うん、構わないよ」




「どうして海斗が王なの? 海斗、間違い無く私と同じく、母さんと父さんから産まれたよね?」 



「父さんが前の王だったみたいだね。

色々あって、当時王をしていた父さんは、勇者として召還されていた母さんと恋に落ちて、そのまま母さんの元の世界──日本──に帰って、僕らを産んだらしいよ。

ちなみに、勇者というのは、人間たちからこの魔界を守るための切り札的なものだよ」



「父さんが前魔王で、母さんが元勇者…っ!?


 …それならどうして事故なんかで死んだの? 強いでしょう、そんなチートなら」



「……世界が違うからかな…あちらでは普通の人間だったみたいだよ。

 大体、母さんは元々、日本のただの女子高生で、勇者になるにあたって力を授けられただけみたいだね」



「…なら、私たちは魔王と日本人のハーフってこと?」



「そうだね。


あと、容姿から推測すると、僕は魔王──父さんの血を強く受け継いで、夏音は純日本人…つまり母さんの血を強く受け継いでいるんだよ」



「そっか。 ……海斗は、王様決定?」



「…この国は世襲制らしいんだ。

 そして、父さんの血を受け継いでいるのは僕だけだから…当然そうなるね」



「……どうして海斗が王家の血筋だって分かるの?

 他にもいるかもしれないのに…」



「──背中に、紋章があるんだよ」


「…紋章?」


「そう。 炎のような刺青がね。

 これは、王家の血筋の男子が生まれつき持っているもので、絶対に消すことは出来ないんだって。

 ──それに、これに付随して、もう1つだけ本物かどうか見分ける方法があるんだよ。


      …何だか分かる?」



「分かる訳な──ドラゴン……?」


分からないと返そうとした夏音の言葉が途中で途切れる。


──王家といったらドラゴンだ。王家の紋にもなっている。それから考えられることは──


夏音は暫く逡巡して、ようやくそう発した。



「そう。…正解だよ」



自分の導き出した、答えに困惑している夏音の頭を、安心させるように再び優しく撫でつつ、海斗は正解を告げた。




「僕は、ドラゴンなんだよ




───厳密に言うと、ドラゴンになることができる…って感じだけどね」

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