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冒険姫リーベ 英雄の娘は希望の継承者!  作者: 丘引みみず
第3章 初陣

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038 別れの時

 アリサの指導に従い、リーベは親指と人差し指で輪っかを作って乳頭を摘まむ。残る指を根元か先端に掛けて順に握り込んでいくと、ぴゅーっと、勢いよく生乳が噴き出す。


「わ! 出た出た!」

「おお……!」


 隣で一緒に乳搾り体験をしていたフロイデが感嘆の声をあげる。牛乳好きな彼としては、まさに夢のような光景であった。


「ふふ、こんなもんじゃないわよ。この子たちはまだまだ出るんだから」


 そう言うとアリサは乳頭を二本掴んで効率よく搾乳した。ミルク缶にはじょぼぼぼと生乳が溜まっていき、大容量かに思われたそれを、たった一頭で半分まで満たしてしまった。


「へえ、こんなに出るんだ」

「これ、飲める?」


 フロイデが期待を満面に浮かべて問いかけるも、アリサは顔を橫に振った。


「ううん。一度加熱しないと飲めないわよ?」


 その答えに彼は肩を落とした。


「搾りたて……」

「ふふ、でも安全に飲めることが何より大事だからね。これも仕方ないことよ?」

「うん……」


彼が納得を見せたところで、彼女は腰に手を当てた。


「乳搾り体験はこんな感じで良かったかしら?」

「はい、お忙しい中、どうもありがとうございました」

「ありがと」

「若い子が興味もってくれて私も嬉しいわ。それじゃ、手を洗っていらっしゃい」

「はーい!」


 乳搾りを終え、手を清めたリーベたちはパウロ宅に戻った。


 入ってすぐの食堂ではヴァールとフェアが食卓に着いており、今後のことを語らっていた。弟子たちが入ってくるのに気付くと、対象的な2つの顔を彼女らへ向ける。


「終わったみたいだな」

「その様子だと良い体験ができたようですね」


 2人の言葉にリーベは力強く頷いた。


「うん! 知ってた? 牛乳って一頭からたくさん出るんだよ?」

「大量……!」


 体験で得た知識を披露していると、厨房の方から家主であり村長でもあるパウロが、食事を手にやって来た。彼はリーベらの話を耳にしており、微笑ましげに笑みを浮かべている。


「はは! 楽しんで頂けたようで何よりだよ。さ、朝食をどうぞ」


 朝食はオーソドックスに丸パンとベーコンエッグ、サラダ。そしてライル村自慢の牛乳だった。


「わ、美味しそう」

「牛乳……!」


 そうして4人分が配膳されると朝食となった。


 パウロはアリサが戻って来てから朝食を摂るようで、リーベは多少気が引けたものの先に食事を頂く事にした。


 フロイデは真っ先に牛乳を飲み干し、白髭を作る。


「朝はこれに限る……!」


 彼が水差しから牛乳を補充するのを眺めながら問い掛ける。


「フロイデさんは毎朝牛乳飲むんですか?」

「うん。風邪もひかないし、背も伸びる……!」


(背も伸びる……?)


 そんな感想はともあれ、彼は牛乳への絶大な信頼を示した。


「わたしも飲むようにしようかな?」

「その方が良い……!」

「ふふ、早速明日から実践してみますね?」

「約束……!」

「はい!」


 そんなことを話し合っていると、フェアがパンを千切りながら口を挟む。


「お話も良いですが、食事を終えなければ出発できませんよ?」

「そうだ。さっさと村を出ねえと、テルドルを閉め出されちまうからな」


 ヴァールの言葉に気付かされたリーベは、これから待ち受ける過酷な試練にげんなりさせられた。だがその分、目の前の食事に価値を見出し、一層丹念に咀嚼するようになった。





 食事を終えるとすぐに出立することとなり、冒険者たちは村長夫妻に見送られることになった。


「ヴァールさんたちはしばらくテルドルにいるんですよね?」

「ああ。と言ってもあと一月くらいだがな」


 その言葉にリーベは動揺したが、会話は流れていく。


「もしかしたらまたお世話になることもあると思いますが、その時はお願いしますね?」

「ああ。……まあ、そうならねえのが一番なんだがな」

「はは、確かに!」


 2人が笑みを交わす中、アリサが弟子2人を見る。


「リーベちゃんもフロイデくんも。その時はまた村を護ってね?」

「うん、護る……!」

「わたしも、頑張ります!」


 その時フェアがリーダーであるヴァールに耳打ちする。


「ヴァール、そろそろ」

「お、そうだな。そんじゃ、元気にな」


 彼に続いて口々に別れを告げると、夫妻に「道中、お気を付けて」と笑顔で見送られた。



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