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38話 後輩、二人で頑張ろう

38話 後輩、二人で頑張ろう



 如月図書館。ここら一帯では大きい方のこの図書館には、勉強を目的として来る人も多い。やはり家でやるよりもファミレスや図書館などでする方が勉強は捗るという層は一定層おり、夏斗もまたその一人だった。


「ここは一人で勉強するところと多少喋ってもいいところに別れてるから、喋れるところ行くか。確か二階の端っこだったはず」


「詳しいんですね。よく来るんですか?」


「恥ずかしい話、家だとゲームとかスマホ触ったりとかしちゃって集中できないことが多いからなぁ。テスト期間はよく来てるよ」


 いつもは中高生が机を多く使っているのだが、今日は珍しく席がガラガラだ。夏斗はえるを連れて一番奥の席まで行くと、荷物を置いてゆっくりと腰掛ける。


 そしてえるは、その隣にちょこんと座った。


「? 隣より向かいに座った方が広いと思うけど……いいのか?」


「……こっちの方が、先輩を近く感じられますから」


 四人席で隣り合い、少し手を伸ばせば触れられる距離感。えるは少しだけ寄りかかり甘えて見せながら、離れたくないと主張した。


 夏斗はそれに対し頷き、了承してから教材を取り出す。普段から予習復習などはせずテスト期間の一週間で勝負をかけるタイプの彼にとって、この期間はとても大事な時間なのだ。いち早く勉強を始めなければ前日に徹夜、なんて事にも繋がってしまう。えるとの通話で深夜まで起きることには慣れているが、ただ苦しいだけの勉強で夜中を迎えるのは避けたいところだろう。


「そういえばえるって成績どんな感じなんだ? なんかそういう話ってした事ないよな」


「言われてみれば、確かにそうですね。ただ期待はしないでくださいね? 頭は悪い方なので……」


 そう言ってスマホを操作しフォルダからえるが探し出したのは、前回のテストの結果が全教科分書かれた成績表。


 国語82点

 数学52点

 英語40点

 化学48点

 生物45点

 現代社会48点


 四十点を赤点とするこの学校において、えるの成績はお世辞にも良いと言えるものではなかった。何故か国語だけがずば抜けて点数が高かったが、本人曰く得意なのはあくまで現代文のみ。中間テストでは行われなかった古典の点数は、その一回前の期末テストの際赤点だったという。


(なんというか……うん。解釈一致だな)


 しかしこれらは全て、夏斗にとって想像通りであった。


 えるのぽよぽよした私生活を見る限り、頭が良く成績が自分より上というほうがむしろ違和感。大変失礼なことを言っているが、実際にえるはあまり勉強をしない。その上でのこの結果なので、まさに予想が的中していたと言える。


「まあ今回のテスト期間はこうして図書館で勉強するわけだし、成績も必然的に上がるよ。とりあえずあまり時間もないし、始めるか」


「ですね! 今回は全教科五十点以上を目指します!!」


 ふんすっ、と鼻息荒く気合いを入れたえるを横目に笑みを漏らしつつ、シャーペンを握る。


(よし、頑張るか)



 えるのやる気を削がないためにも、隣にいる自分が頑張らないわけにはいかない。えるのモチベーションを引っ張り、成績向上に繋げるために。まずは自分が努力をしようと、心の中で気合いを入れ直した。

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