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「羨望」

 私の家には昔から、

 誰が使うのか

 誰のものなのか

 それさえも分からない

 けれども

 とても綺麗で

 真っ白なピアノが

 置いてありました


 ぼんやりとした白っぽい灰色が街の空を染め上げる。建物の屋根にはそれほど綺麗ではない雪が積もっていて、自らの重さに耐えかねて時折ずり落ちてくる。ついさっき、シモンの3メートルほど先を歩いていた中肉中背の男性のすぐ横を、固まりかけた雪がかすめていったところだ。

 イギリスのとある街。凛とした顔立ちの母親の横を歩く小柄な少女—シモン・イルミフォードは、この街に溢れかえるモノにちょっとした羨ましさを感じていた。

 

「声」


 狭い路地を子供たちが駆けていく。「声」を弾ませて。

 顔なじみの書店の前で男の人たちが何やら言い争っている。「声」を荒らげて。

 中央広場で青年が歌をうたっている。「声」を響かせて。


 そのひとつひとつが—それが何であれ—シモンに「羨望」という感情を植え付けていく。


 シモンには「声」が無かった


 友達と一緒にお話をする

 友達と一緒に歌をうたう

 友達と一緒に

 友達と

 一緒に

 その一つとして、シモンに許されたものは無かった。


 —あなたがあんまり大きな声をあげて泣く子供だったから、神様に声を取られちゃったのよ—


 いつか、母が笑いながら言っていた。母が言うのだから間違ってはいないのだろうけれど。もし本当にそうだとしたら、本当に意地悪な神様だと思う。もう少し、大人しくしていればよかったかな。




 

「だんだん強く」


初めまして、四ツ谷りるれと申します。

お初にお目にかかりますはタイトル通り、一人の少女と一人の(?)ピアニストが「だんだん強く」なる物語です。

ピアニストってかっこいいなーと思って。指が踊ってますよね、あれ。小さいころにヤ〇ハ音楽教室のCMのメロディをメロディオンで吹いてました。ちなみに四ツ谷、ピアノできません。

興味を持ってくださった方、拙い文章力ではありますが、何卒お付き合い頂けると幸いです。

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