ゼッド。
惑星『ゼッド』。
その星は、『希望の星』とも。
『絶望の星』とも呼ばれていた。
「ここ……どこだよ……」
突如──、別の世界からやってきたらしい。
イヤホンをしながら、携帯に夢中になって。
赤い信号に気づかなかった。
「あいつ、ヤバいぞ!」 「きゃあああああ!」
「バカヤローッ!!」
キキキキキキ──、ドンッ。
ふわりと、身体が宙に舞う。
運転手のブレーキは間に合わず。
観客も含め、凄惨な事故を目の当たりにした。
いつもの通学路は、血渋きで染まる。
もう──、間に合わないだろう。
それでも。
「誰か、救急車を!」 「110番も!」
だが、すでに。
その姿はなかった。
「あれっ?」 「どこにいったんだ?」
確かに牽かれた。
車にも、その痕跡はあった。
運転手も、その感覚はあった。
ただ──、忽然とその姿は消えていた。
「ん? ここ、どこだよ……」
いつもの通学路ではなかった。
見慣れない風景だった。
そして、奇妙な身体つきをしていた。
その姿は、まるで蜥蜴のようだった。
見上げたことのない、星空があった。
「え? マジで、わかんないんだけど!?」
「惑星『ゼッド』にようこそ」
車に牽かれたことさえ分からなかったのに。
謎のメッセージが、頭に語りかけてきた。
「この星には、あなたたちがたくさんいます」
そう言われても、簡単には理解できない。
ただ、以前の身体ではなかった。
まるで、蜥蜴を思わせる四肢があった。
「理想的な姿にしました」
かつて、ペットとして飼育していた。
ピロちゃん。
その蜥蜴のような、姿になっていた。
「では──、第二部を楽しんでください」
そこに、ユニークスキルなどはなかった。
「まさか……異世界ってところなのか?」
「おや、新入りですか?」 「そうなりますかね」
惑星『ゼッド』の住人は、優しく迎え入れた。
新入りには、まず説明しなくてはならない。
「私、バロウと申します」 「はあ、どうも」
バロウは、梟族だった。
梟族は、丁寧に説明するの得意だった。
その声色は、転生者を落ち着かせた。
「えっと~、俺は……ピロです」
「ピロさんですか。では先ず、最初に」
ピロにたいして、長々と。
惑星『ゼッド』というのが。
どんな星なのか。
緩やかに語り出した。
「まずスターってのが訪れました」 「ほほう」
「きみと同じ人種ですよ」 「ふむふむ」
「ただ──、スターは超人でして」 「へえ~」
「この惑星『ゼッド』にやってきて」 「うん」
「それから、たくさんの伝説を作り出した」
ちょっとよくわからない。
丁寧に、説明してくれてはいたけど。
「で──、そのスターさんっていうのは?」
「超人──、というしかないですねえ」
惑星『ゼッド』。
そこに転生した初心者には、理解できなかった。
だが。
「つまり、スターには気を付けろって事ですね?」
「つまり、そういうことになりますね」
察した。
決して、関わってはいけない相手だと。
「さらに、スターは、どんな存在にもなれます」
その言葉を聞いて、ピロは。
スターという単語を辞書から消した。
「どうせなら、異世界を楽しもうかなあ」
惑星『ゼッド』。
まずは、そこから理解しなくては。
「宿屋とか、冒険者ギルドとかありますか?」
「ええ、もちろんありますよ」 「あざーす」
ただ──、バロウは。
ピロの素質に気づいていた。
「あの施設で登録してください」 「なるほど」
惑星『ゼッド』。
その星は、『希望の星』とも。
『絶望の星』とも呼ばれていた。
転生者を待ち受けていた。
バロウは、梟族だが。
中身は、ずっと代わりを待っていた。
見た目は蜥蜴の姿だが。
同郷の人種のピロが。
やがて──、引き継いでくれるだろうと。
歩きスマホは、ぜったいにしないでください。




