プロローグ
後宮の女官として働く月瑤は、後宮の外を走っていた。
彼女の足は馬より速い。風を切り裂くように走ると、高く一つ結びにした金髪が靡く。さながら馬の尻尾のようだった。
この髪色で嫌な思いもさせられたが、月瑤は異国の母譲りの金髪を誇りに思っていた。
彼女が目指しているのは、後宮の近隣に位置する林。
──人を探していた。
「ったく、お姫様っていうのは、もっとお淑やかな生き物だと聞いてたんだけどな」
先刻に後宮内ですれ違った姫君の姿を思い出しながら独りごちる。
月瑤が必死に探している姫君の名は、清蘭。
真面目な性格で、特に趣味もなく、誰よりも皇帝様のお手つきを頂こうと必死に足掻いているという噂を、清蘭と接点を持たない月瑤の耳にも届いていた。
真面目ゆえ、お堅く、親近感がなく、身内以外とはあまり言葉を交わさない。
今回清蘭の護衛を任されたが、正直、接触した後のほうが難ありだと、月瑤は感じていた。
「というか、こんなに林の深いところまで入ったのか?」
清蘭が向かったというのは、林の奥にある川だ。
木々を駆け抜ると、すぐに目的は果たせた。
……いた。
到底、箱庭で暮らすお姫様とは似つかぬ“もの”を持った、齢十八の少女が。
「当たりですわ〜!」
皇后の次に高い位の姫君である清蘭は、ミミズを天に掲げて満面の笑みを浮かべていた。
そんな光景を目の当たりにした月瑤は、女官と姫という身分差があるのも忘れて叫んでしまった。
「お姫様がなんでミミズ持ってんの!?」
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