第013話:ダンジョン探索初日
日陰忍:ヒロインの1人、目隠れ美少女、千鶴と同室
村田空馬:特待生、五十嵐が気に食わない。レベル6:称号【戦士】
■小ダンジョン:
規模の小さいダンジョン、頻繁に発生し最下層のボスを倒すと消滅する。
■吉野織姫:
会社員の父と看護師の母、2人の姉の元に生まれる。母の家系はとにかく世話焼きらしく、姉2人と母から世話を焼かれてきた。
織姫本人も母の血には抗えないが、末っ子である彼女に世話を焼ける相手はいなかった。
しかし、10歳の時に五十嵐が引っ越してくる。このとき五十嵐は両親が死亡し、住み慣れた家を引き払われ憔悴しきっていた。
ここぞとばかりに世話を焼き、その関係は五十嵐が立ち直った中学になっても続いた。
五十嵐が探索者学校を進学先と選んだとき当然のように彼女も同じ道を選択する。五十嵐は反対するが、家族はむしろ応援した。
家族の応援もあって、最終的に五十嵐も根負けし一緒に受験を行う、このときの吉野一族の世話焼きは手厚いものだったらしい……。
なお、彼女の母、姉共に巨乳であり織姫も引き継いでいる。
3層のセーフルームも相変わらず洞窟の大部屋だ、心なしか2層よりカビ臭さが漂うようになり、余計陰鬱な雰囲気になったように感じる。
明度も下がったように見えるのは錯覚だろうか?
2層には何もなかったが、こちらにはレストランらしき建物、コンビニ、公衆トイレが建てられていた。
「う~ん、せっかく日光とお友達になったんだけどなー」(白雪)
「ソーデスネー。ウネの部屋までの辛抱ですよー」(メリッサ)
「あ、私トイレ行ってくるっす」(陽子)
「私もいってくるにゃ」(ミーナ)
「僕も……」(七森)
「俺も行っておくか」(加藤)
結局全員がトイレへと向かっていった。
「それにしても2層も全然エンカウントしなかったっすね」(陽子)
「エンカウントは偶然に出くわすことだから、エンゲージ(交戦)の方じゃないかなぁ?」(長谷川)
「細かっ!」(皆川)
「そ、それを言うとコンタクト(遭遇)にあたるんじゃないかな?」(七森)
「も、モンスターならエンゲージ確定だし」(長谷川)
「どっちも細かすぎっす」(陽子)
「3層にはなんか建物があるんだな」(黒田)
「コンビニとファミレス? どっちも休業みたいっすね」(陽子)
「下手なお化け屋敷よりこういう普段明るいものが消えてる方が怖いんだよな」(加藤)
「ちょっとわかるにゃん」(ミーナ)
「やっほー---!!」(白雪)
「ちょっ、何叫んでるんだよ」(加藤)
「いやーお風呂みたく響くなーって」(白雪)
「いや、敵きたらどうすんだよ」(加藤)
「セーフルームにはこなんじゃない? いや、これはリアルとゲームの違いを探る壮大な実験なのだよ!」(白雪)
「なるほどっす……では、たーまやー--!!」(陽子)
「くらいよー--!!」(皆川)
「せまいよー--!!」(長谷川)
「「「こわいよー--!!」」」
『よーーー』『よーー』『よー』
「なにガキみたいなことやってるんだよ」(黒田)
「大人になると叫びたくても、叫べなくなるものさ」(白雪)
「そういや村田だっけ? あいつらどこまで潜ったんだろうな?」(黒田)
「あ~この層にいそうだな、ワンチャン4層かも」(加藤)
「そうそう特待生については、調べておいたよ」(白雪)
「おお、知りたい」(皆川)
「説明しよう!」(白雪)
「お決まりのセリフだ」(長谷川)
「いつか堂々と言いたいセリフっす」(陽子)
「特待生とは中学1年の終わりに他薦によって選ばれた人のことである!」(白雪)
「自薦ならわかるけど他薦?」(加藤)
「制度自体はわりと新しくて7年前の2015年から施行されてるね。建前としては民間の埋もれた人材を早期発掘するためかな」
「これはダンジョン学園も同じだけどこっちは高1だからね、それよりもさらに2年早くってことだね。自薦だと応募が多数になってしまうので、他薦らしいよ」(白雪)
「でも、そんなのわかる物なの? 格闘技やってる人とか?」(長谷川)
「さすがに中学生でそれはわかんないだろうね」(白雪)
「あーそうか中学生か、どうも感覚狂うな」(長谷川)
「実際子供でもいないとその感覚わからないよね」(加藤)
「うん? 中学から探索者やってるならもっとレベル高くないとおかしくないか? 2年もあれば50層くらいまでいけるだろ?」(黒田)
「いや、中学生だし無理じゃね?」(加藤)
「レベル上げりゃ関係なくね?」(黒田)
「話戻していいかい?」(白雪)
「どーぞどーぞ」(加藤)
「この話のミソはね、選ばれると公爵家に招集されるのと同じになることだね。つまり日本、日華両方のトップに呼ばれるのと同じということ」
「さて、そんな招集を断れるでしょうか?」(白雪)
「無理っすね」(陽子)
「実質赤紙だね」(長谷川)
「そして選ばれた子は、中学を特別卒業扱いですぐに日華に移動してしまうこと」(白雪)
「つまり無理やり卒業させられるということか」(皆川)
「勿論1人からの他薦ではなく、最低でも40人程度の推薦(匿名)が必要になるとくれば」(白雪)
「あ~なんとなくわかった」(黒田)
「なかなかにえぐいことするにゃん」(ミーナ)
「そういう制度を認める政府も政府ですね」(千鶴)
「そうですね……」(須藤)
「つまり学年の嫌われ者を強制排除できると」(加藤)
「わざわざ濁してるんだからはっきり言うなよ」(黒田)
「つまり村田達はそんだけ疎まれた人ってことじゃん、関わらんとこ」(加藤)
「いいんじゃナイでしょーか。本人はベリーハッピーそうだったネー、オールレンジ迷惑かけるならクラッシュしまーすけど」(メリッサ)
「てかダンジョン学園に入れんなよ、こっちはいい迷惑じゃねぇか、あれ? てことはあいつら中2?」(黒田)
「いや、最初は民間学校で小ダンジョンに潜らせるらしいね」(白雪)
「小ダンジョンも良く解らないね」(皆川)
「ゲームには無かったの?」(長谷川)
「うん、無かった」(皆川)
「ま、俺は選ばれること無いだろうけどな」(黒田)
「何自分は常識人みたいな顔してるんだよ、お前も村田側だろ」(加藤)
「あ!? やるか? てめーも同じだろうが」(黒田)
「はー!? 俺はいい子ちゃんだっての」(加藤)
「DRDじゃどっちも似たり寄ったりだったにゃ」(ミーナ)
「面識あったんだ」(皆川)
「なーは、色んなクランに傭兵として参加してたにゃ。だから加藤、白雪、黒田とは面識あるにゃん」(ミーナ)
「僕は基本ソロか野良だったからなー」(皆川)
「私もですね」(千鶴)
「みーとぅ」(メリッサ)
「自分はすぐやめてしまったので……」(須藤)
「ちなみにソロの語源はイタリア語の独唱を表すソロから来ているのだ。野良は野良ネコが普段単独なのに寒いときだけ身を寄せあったり、集会開いたりするところからだね」(白雪)
「誰に向けての情報なんだよ」(加藤)
「……村田達って4人組だったわよね?」(小町)
「いえーす、どうかシーマシータカー?」(メリッサ)
「昨日のカレー食い逃げした奴がいるのよね……4人くらい」(小町)
「「「まじ!?」」」
「ほう」(美々)
「クラッシュしーますー?」(メリッサ)
「怪しいだけで確定じゃないからね。それに食い逃げって現行犯じゃないと難しいのよ」(小町)
「特待生は昨日の時点で既に探索者だから現金持ってなかったのかもよ?」(白雪)
「だからといって相談しない時点でアウトだろ」(加藤)
「まーね、お金だけに、まねー」(白雪)
「はいはい」(加藤)
「それにしても、特待生って案外少ないのかな? 関東近縁の中学校からくるならもっといそうな気がするけど」(長谷川)
「どうだろう? 全部が全部ダンジョン学園に進むわけではないとか?」(皆川)
「よくわ解らないけど、条件があるらしいよ。小ダンジョンでなんか功績あげないといけないらしい」(白雪)
「へー」(陽子)
この世界の日本において、いわゆる「いじめ」は学校内に収束しやすい。
前の世界では飲食店への長時間の居座りや他の客への迷惑が騒がれていたが、こちらでは華族制度が復活し、貴族は領地の代わりに会社経営をしている。
そしてこれには飲食店も含まれる。
つまり下手に迷惑行為をしようものなら未来はおろか現在すらどうなるかわからない。内容によっては警察ではなく黒服によって立派なお屋敷(意味深)に連れていかれることになる。
白雪が言っていたように特待生は中学卒業の年齢までは民間学校に一旦入学させられるが、民間学校では大ダンジョンには入れず小ダンジョンがメインになる。
そこから条件をクリアしていればダンジョン学園に入学することも出来るのだが、クリアしていても大抵はそのまま民間学校在籍を選ぶ、現実を知るからだ。
その上で貴族と近づきたいと思う人間は少ないだろう。
「逆に大学生とか成人してから探索者をする人は居ないのかな?」(皆川)
「一度探索者になると国籍まで変わっちゃうんでしょ? 大学辞めることになるし、上手くいかないからってすぐにやめて日本に帰るなんて出来なくなるんじゃないのかな?」(加藤)
「あーなるほどなー、敷居が高いのか」(皆川)
「俺達は、もうその一線超えてるけどな」(黒田)
「やめろよ、考えないようにしてるんだから」(加藤)
成人探索者も当然いる。特待生と同じで民間学校入学から始まり、一定数小ダンジョンの攻略実績を積むと大ダンジョンへの入場資格を得ると同時に卒業となる。
資格を得ても大ダンジョンに進まない探索者も少なからずいるが……
「そう考えると、今のF組の生徒はよく入学を決意したと思います」(千鶴)
「あー日陰さんとか特にね」(加藤)
「はい」(千鶴)
「なんか『九泉の巫女』とかそんな血筋で、特殊なスキル持ってるから生まれた時からダンジョンに入ることが決まってたみたいだぞ?」(黒田)
「えーでも探索者って水晶に触れないとなれないんでしょ?」(長谷川)
「ゲームだとそういった設定無かったからな」(黒田)
「そういうことだったのですか……」(千鶴)
「シナリオの強制力って奴か」(加藤)
「とはいっても、本人次第じゃないかな? 救援されたわけでもないのにこちらからしゃしゃり出るのは筋違いだし」(白雪)
「そうではあるんですが……」(千鶴)
「とりあえず話相手になるといいんじゃないっすか? なんとなくっすけど、あの子相談できないタイプと思うんっすよね」(陽子)
「そうですね」(千鶴)
「話変わるけど、女主人公っていた?」(加藤)
「いないかなぁ?」(白雪)
「それっぽい子はいないっすね」(陽子)
他の皆もわからないらしい。
「じゃぁやっぱりいないか」(加藤)
「そう見ていいと思う」(白雪)
「こっからも案内いりマスカー?」(メリッサ)
「いや。ここまでくれば大丈夫。ありがとう」(加藤)
再び薄暗い洞窟に入って進んでいく、岩肌が湿っており所々苔やキノコが生えている。床は平坦なため滑ったりはしないが不快なことには変わりない。
皆の息づかいもなんとなく苦しそうだ。
そのまま進むと十字路があり、そこを右に曲がりさらに進む。突き当りから再び右へと道が伸びている。
曲がった先は洞窟の壁に加えて鍾乳石の柱などが上下から伸びて行手を複雑に遮っており、さながら迷路の様相を呈する。
元々薄暗い環境に加え鍾乳石や壁で死角が多く普段以上に警戒して進まなければならない場所だ、しかし元プレイヤーという余裕と目的地間近という焦りが加藤達の足を無意識に速めていた。
しばらく進んだところで頭の後ろで指を組んで歩いていた美々が呟く。
「迂闊じゃのう」(美々)
「えっ?」(加藤)
美々の言葉の意味はすぐに分かった。
「後ろ! ゴブリン3!」(ミーナ)
「すぐに迎撃を! 俺もそっちにいく」(加藤)
「よいのか? 前からも来ておるぞ」(美々)
「いきなり挟撃!?」(加藤)
加藤達の前にも3体のゴブリンが棍棒を振りかざして走って来る。
「こっちはまかせるにゃ」(ミーナ)
すぐに攻撃をしてこず、まるで値踏みをするように加藤達を見る6体のゴブリン、DRDでは限界であるレベル90に達していた加藤達だが今はレベル1だ。
しかもフルダイブとは状況が違う、ゲームでは感じられなかった、湿気、温度、匂い、それらが知らず知らずの内にストレスとなって精神を削っていた。
ゴブリン達が先制攻撃とばかりに一斉に叫び声を上げる。それは洞窟内の壁に反射し全方位から衝撃となって加藤達を襲った。
「ひいっ!」(陽子)
「くぅ!」(黒田)
「きゃっ!」(千鶴)
「aaahhh!!」(メリッサ)
今ゴブリンとの死闘が始まる……
「皆早く目覚めて! ゴブリンの叫び声で怯んだみんなのために浩平が盾となって集中攻撃されてるの! やめて! 今ここで倒れたら100層へ行く約束はどうなるの!? お願い、立ちあがって浩平、今が覚醒の時よ!」(メタ雪)
「次回、加藤死す」(メタ雪)
「「「デュエルスタンバイ!」」」(メタ七森、メタ陽子、メタ長谷川、メタ皆川)
「やめろよ! 縁起でもない!」(メタ加藤)
■エンゲージ:
軍用語で交戦の意味。
■コンタクト:
正体不明機の発見、通信(警告)。つまりコンタクト→エンゲージの順になる。ちなみにエンカウントは「遭遇」の意味もあるのであながち間違いではない。
■ソロ:
パーティを組まずに1人でプレイすること。
■野良:
臨時パーティを組むこと。DRDでは探索者カードに野良パーティの募集をできる機能があった。リアルではその項目は無くなっている。
■しゃしゃり出る:
出るべきでないところで出る。正確な語源は不明、『ささっと』が『しゃしゃっと』に訛り変化した、でしゃばるから来ている、しゃり(ご飯)が受け皿から零れ所から等。




