聖女狂想曲2
昨日は間違えて二話いっぺんに掲載してしまいました。
そのまま繰り上げて次の話を掲載します。
この話が最終話になります。
ブックマーク登録ありがとうございました。
さらに数日が過ぎた。女神との交信は時間がかかるのである。
「これで、ようやく聖女を辞められるのか。」
神託により、優太の聖女としての任が解かれるとされた日がやって来た。
この日は朝から関係者が集まり、エルソルディア王城の聖女の間で待機していた。優太が聖女の力を失ったらすぐに確認するためである。
「神託によりますと、聖女様の解任は本日の日中に行われるそうです。おそらく午前中には行われると思われます。」
アラン神殿長は説明するが、神託は時間に関しては曖昧なことが多かった。日付までは比較的正確に知らされるのだが、その日の何時頃かまでは伝わらないのだ。神と人とでは時間の感覚が違うのかもしれない。
優太は開き直ってのんびりと待っていたのだが、むしろ賢者ラウルとアッカーマン教授の方が気合が入っていた。助手達が三百六十度、全方位から優太を監視していた。
「聖女様の解任は初めての出来事であるからして、見逃すことはできないのである。」
「前例のないことだから、何が起こるか分からないのサ。しっかり記録させてもらうヨ。」
しばらく、何事もなく時間が過ぎて行った。
そして、昼近くになったころ、突然優太が言った。
「あっ、聖女の力が無くなったみたいだ。」
「え、そんなあっさり。」
唐突過ぎてアルベルト王子が驚く。
優太の聖女解任は、拍子抜けするほどにあっさりと終わった。
「見た目は全く変化が無いであるな。前兆現象もなかったようであるし、見た目で判断するのは無理そうであるな。」
「細かい観測結果の解析は後にするして、まずは聖女の力が本当に無くなっているか確認するのが良いサ。」
優太はさっそく神聖魔法の素質を調べる白いオーブに手を添えた。オーブは即座に白く輝きだした。
「おお、確かに以前よりも減っている……それでもかなり大きいんだけど。」
優太が最初に測定したときは、オーブ全体が強く光り輝いていた。しかし今回はオーブの四分の三くらいを占める大きさの光が生まれていた。
確かに以前よりは小さくなったが、それでもアラン神殿長よりも上、はっきり言って優太の魔力は今でも人類の範疇を越えていた。
「かなり頻繁に聖女の力をふるっていましたから、神聖魔法が鍛えられたのではないでしょうか。」
魔法も使えば使うほど鍛えられる傾向がある。単純に技術が増すだけでなく、魔力も増大することがある。通常の聖女以上に魔法をバンバン使っていた優太は、聖女の力抜きでも神聖魔法に関して鍛えられていたのではないか、と言うのがアラン神殿長の意見である。
「やむを得ない事情で本来自分が扱えるものよりレベルの高い魔法を使い続けていたら、魔力が増大して資質も向上した例がある。同じような話なのかもしれないな。」
エドウィン魔導士長の話も似たようなものである。聖女の力は本来人には過分な力なのである。その強大な力を揮い続けてきた結果、優太は素の状態でも人外の領域に突っ込んでしまったと。
なお、分不相応な魔法を使い続けて魔力や資質を鍛える方法は、失敗すると最悪周囲を巻き込んで自滅する恐れがあるので禁止されている。
「まあ、聖女の力は無くなっているようだからいいか。ええと、次は……」
優太は聖女の間・第二の部屋の方を見て動きを止めた。
「そう言えば、聖女で無くなった途端に脱げ落ちるかと思ったんだが……聖女の衣を着れるのは聖女だけだったよな?」
優太はいまだに聖女の衣を着たままだった。いきなり聖女の衣が脱げる可能性もあったので、ちゃんと着替えも持ってきていたのだが、今のところ出番が無かった。
「まあ、とりあえず着替えてみたら?」
アルベルト王子に言われて、優太は着替えることにした。
衆人環視の中で着替えるのはちょっと気が引けるが、こればかりは贅沢を言っていられない。
1.聖女の衣を脱ぐ。とりあえず小袖の部分のみ。
2.着替えに手を伸ばす。
3.すでに聖女の衣を着ている。
「うがー! 何でだー!」
天に向かって吼える優太。だが、今回ばかりは女神イシスに聞いても分からないと先に言われちゃっている。
「もしかすると、……最初に聖女様を判定する部分と、その後自分の所有者を識別する部分は異なるのかもしれないネ。」
アッカーマン教授が頭をひねりながらそんなことを言い出した。
「ん? どういうことだ?」
「聖女の衣が自分の所有者を選別する時には聖女の力を検知しているのは間違いないネ。でも、普通の聖属性魔力と聖女の力を区別するのは難しいのだヨ。手間や時間がかかる筈サ。」
アッカーマン教授も挑戦したことがあるのか、難しいということには自信がありそうだった。
「だから、一度所有者を選別した後は、聖女の力とは関係ないところで本人確認している可能性があるネ。」
「つまり、聖女を辞めても関係ないのか。」
優太は崩れ落ち、地面に手を付いた。
「俺、日本に帰れない……」
日本に帰っても、女装男子一直線である。
こうして、聖女を辞めても聖女の衣から解放されなかった優太はこの世界に留まることになった。
だが、優太はまだ諦めていない。
聖女の衣を脱ぎ捨てる方法を探して模索し続けている。
いつか日本に帰るその日まで。
今日も巫女服姿の男が王都を走る。
この物語は、これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




