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「今日までお世話になりました」
二週間の潜入を終えて、私は営業一課のみなさんに頭を下げる。
たった二週間で、最初からここに配属することはないとわかっていたけれど、それでも寂しさが顔を出す。
「丸岡さん~絶対ここを配属希望出してくださいね!!ね!」
沢田さんが私の手を取って、ぶんぶんと振る。
「気にしないでね。どこでもいいんだよ~」
関さんの甘い声はやっぱり優しさを含んでいた。
「二週間過ごしていくなかで、自分のやりたいことは少し見えましたか?」
中谷さんがえくぼをへこませて、柔和な笑みを向けてくれる。
優しくて、包み込んでくれるほっとする笑顔だ。
「はい!」
私は心からの返事をした。
私は、QC課でがんばりたいと思っている。
人生で一番幸せな日を作らなくてもいい。
誰かにいつか幸せが訪れるように、小さなわだかまりをなくして、明日に繋げるQCでの仕事を続けたいと思っている。
強い光じゃなくていい、キャンドルくらいの灯りで。
営業一課の皆に別れを告げて、オフィスを出る。
スーツのポケットが震えると、人事部からメールが届いていた。
【人事部 本採用通知書 丸岡幸様
貴殿は所定の業務を誠実に遂行されました。
ついては、2027年2月6日をもって貴殿を以下の通り本採用いたします。
所属部署:コーポ―レート部門 戦略事業部 QC課
今後も変わらぬご活躍を期待しております。】
やっぱり善さんにはすべてお見通しらしい。次はどの部署に行くのだろう。と想像しながら私はエレベーターに乗り込んだ。
1話を読んでいただきありがとうございました!
ネトコン用に投稿したお話になるので、連作短編の1話でいったん完結します。
2〜4話の構想はありますので、あいだをあけますが、あらためて続きを書きたいなとはおもっています。
ありがとうございました。




