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    5-12 学園祭2日目。ダメ男は学園祭を楽しむ

 お久しぶりです! 週1,2回の頻度で更新再開します!

 闘技会が終わっても、まだまだ学園祭は続きます。楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

 母の言葉で我に返った俺は、すぐさまフィオナを誘い、フィオナが頷いてくれたこともあって、そのまま学園祭に繰り出した。

そして今、たくさんの人でにぎわう学園内を歩いていた。

「……レオン様。改めて優勝おめでとうございます」

「……ありがとう」

「あんなに激しい戦いを見たのは初めてで、驚きました」

「ああ……。ちょっと、いや結構熱くなってたからなあ」

「……試合中、レオン様の魔力が荒ぶっているように見えたので……そうだったんですね」

 ! フィオナも魔力が見えるんだ。……まあ、まじめに魔法の勉強してたら見えるようにもなるか。

「もしかして怖く見えた? だったらすまない」

「え? ……いえ、怖くはなかったです」

 フィオナは少し思案するように少し下を見てから、口を開いた。

「その……むしろ、かっこよかったです……」

 ! 初めて言われたな……。

「そうか……。ありがとう」

「……い、いえ」

 しばし沈黙がふたりの間を流れた。……ここは何か言わないとっ‼

「あ! あそこはなんだかおもしろそうだな。一緒に行かないか?」

「あ……は、はい!」

 空気を変えるべく立ち寄ったのは、アクセサリーを売る出店だった。商品は普通科の生徒や、芸術科の生徒が作ったらしい。髪留め、ネックレス、ブレスレットなど、いろいろと置いてある。

「どれもこれも、製作者の感性と情熱が込められた一点ものですよ。記念にどうですか?」

店番をしていた男子生徒の声が耳に入った。フィオナは興味があるのか、並んでいる商品を熱心に見つめている。……。

せっかくだから、何かプレゼント……と思ったのだが、それを言おうと横を見ると、フィオナは隣にある別のお店の方に向かっていた。慌てて追いかける。

フィオナは興味深いのか、いろんなお店を覗いている。……まあ確かに普段は見られないようなものもあるしな。

 その後も、昨日も食べた肉串を買って食べたり、クラスの展示を見たりした。展示は、レポートの発表もあったし、喫茶店をやっている所もあった。教室の中では普通科で執事やメイドになるために勉強している生徒たちが給仕をしていた。休憩もかねてふたりで入り、席に着く。すぐにメイドが注文を聞きに来た。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「じゃあ、このパンケーキをくれるか? 飲物は紅茶で」

「あの……このケーキをください。……飲物は紅茶でお願いします」

「かしこまりました」

 メイドが注文を聞いて去っていき、俺たちはふたり、テーブルに向かい合う形になった。周囲には、俺たちの他にもお客さんがいて、皆楽しそうにしている。

「何だか、不思議な気持ちです」

 不意に、フィオナがそんなことを言った。

「……去年は、エレンやユーリたちと一緒に回りました。……今年もきっとエレンたちと回るんだろうなって思ってたんです。レオン様とこうしていられるなんて思いませんでした」

「……」

「だから……ありがとうございます」

 そう言ってフィオナは控えめな笑みを浮かべた。

「……お礼なんていらないよ。俺が……君と回りたいと思ったから誘ったんだ。それだけのことだよ」

「それでも、ありがとうございます」

 再び笑みを浮かべるフィオナ。その顔は穏やかで、最初に会った時のびくびくとした表情とはずいぶんと違っていた。……少なくとも俺は、彼女を笑顔にはできてるんだな。

「お待たせしました」

 その時、注文していたものがやってきて、会話は打ち切りになった。

 俺の前にあるのはパンケーキだ。2枚が重なるようにお皿の上に置いてある。上にはバターと生クリーム、ミカンみたいな果物。そしてお皿の脇には、後がけのシロップが容器で置かれていた。

フィオナの前には、ロールケーキがおかれている。断面からは、瑞々しい果物とクリームがのぞいていた。

 早速食べてみる。パンケーキはふわふわとしていて、なかなかおいしかった。付け合わせのクリームや果物もいいアクセントになっていて、飽きが来ない組み合わせだ。

 フィオナはというと、ナイフとフォークを使って、少しずつケーキを食べている。……一つひとつの所作がきれいだな。

 思えばフィオナは、成績もいいし、人を見下したりもしない。性格はかなりいい。マナーとかも心得ている。魔力もあるのだ。ただ、『無属性魔法以外使えない』という理由だけで冷遇されている。

 こんなのはおかしい、と思う。改めてこの世界の理不尽を目の当たりにした気がした。

 喫茶店を出た俺たちは、また特にあてもなくいろんなところを見て回った。途中、俺が手伝わされたカルロスたちの発表が展示されている教室の近くを通りかかった。教室の中には何人かの人がいて、苦労して作った掲示物を見ている。

 フィオナが、興味があるというので、教室に入った。

「このレポートをレオン様が作られたのですか?」

「俺がやったのは少しだけだよ。このあたりと、この辺くらいかな」

 フィオナは熱心にレポートを見ている。……こうして真剣に読んでもらえるなら、手伝ってよかったかもな。

「レオン様。この無属性魔法のところ、すごくよく書けていると思います。魔法の効果、用法、使用する際の注意点も含めてわかりやすくまとめてありますね」

 やや興奮した感じでフィオナがそう言ってきた。頬が上気していて、目も輝いている。普段は見ない顔だ。

「ああ。ありがとう」

 その様子がかわいらしかったのと同時に少し驚いてしまった。それがフィオナにも伝わったのか、フィオナの方もハッとした後、さっと顔を背けた。……なんだこのかわいい生き物。

「……そ、そういえば」

 照れ隠しなのか、顔をそむけたままフィオナが口を開いた。

「決勝戦で相手の方を転ばせた魔法は、何だったんですか?」

 ……ああ。“ワックス”のことか。

 俺は簡単にあの魔法について説明した。フィオナは驚いたように目を見開いた後、感心するような表情をした。

「無属性魔法の応用で……。私には思いつきませんでした」

「あはは……」

 俺があれを思いついたのは、前世に見た映画で、いたずら好きの高校生たちがワックスを床に塗りまくって学校の先生たちを転ばせる、というシーンを見たからだ。……本当に学校で使うことになるとは思わなかったけど。

「あ。いざというときはこれで向かってくる相手の足を滑らせたり、自分が滑ることで距離を取ったりもできるから護身用にもなるよ」

「そんなことまで考えていたんですか?」

「まあ、自分が滑るには練習が必要だろうけど」

「……すごいです」

 じっと見つめられたので、「そうでもないよ」と言って別の方を見る。

……あれ? 今更だけどカルロスとかいなくね? 普通は誰かいて説明したりするんじゃないのか? そういえばシリル先生の時も誰もいなかったな。

 と思っていたら、隣の教室から何やら話し声が小さく聞こえる。……隣でベタベタしてるのか……。

「レオン様? どうかしましたか?」

「……なんでもないよ。行こうか」

 もうどうでもよくなった俺は、その場を後にした。

 次に立ち寄ったところは、エレオノーラ嬢たちの作品が展示してある教室だった。刺繍がされたハンカチや小物入れ、布や糸でできたアクセサリーが置かれている。ここにはひとりの女子生徒がいて、フィオナとごきげんようと軽く挨拶をしていた。

「この中に君の作品もあるんだよな?」

「は、はい。……このあたりが私の作ったものです」

 見てみると、そこには刺繍された2枚のやや大き目なハンカチと、刺繍された布で作られたポシェットみたいな小物入れが置いてあった。施された刺繍は花を模していて、きれいに仕上げられていた。……手先も器用なんだな。

「すごい出来栄えだ。お店で売っていそうだな」

「い、いえ。そんなものでは……」

「いやいや。ひとつ欲しいくらいだよ」

 思わずそう言うと、フィオナはピクリと反応した。……あ。そういえば前にレオンはフィオナにもらったハンカチを捨ててたんだっけ。

「……もらって、くださるのですか?」

 フィオナは、問いかけるようにそう聞いてきた。

「……もし、またくれるのなら」

 少しゆっくり目に俺はそう返した。

 俺の言葉を聞いたフィオナは、顔をほころばせると、「また、作りますね」と言ってにこりとほほえんだ。


「あ! レオン様~~!」

 教室を出て、次はどこに行こうかとフィオナと話していた俺の耳に聞こえてきたのは、やたらと甘ったるい感じのアメリアの声だった。……なんでいるの?

 アメリアはこちらに真っ直ぐに向かって来ると、上目遣いで「今ひとりなんで……一緒に学園祭を回りませんか?」と言ってきた。……少し前までカルロスあたりと一緒にいたんじゃないのか?

まあどちらでもいいか。俺の返事は最初から決まっているしな。

「……すまないが、他を当たってほしい。俺にはもう先約がいるからな。それと明日も無理だから諦めてほしい」

 ついでに明日のことも先に牽制しながらそう言うと、俺は傍らにいるフィオナを指し示す。案の定フィオナが視界に入っていなかったらしいアメリアは少し驚いた顔をした。だけどそれも一瞬のことで、すぐにニコニコした顔に戻ると、「じゃあお邪魔しちゃよくないですね~。学園祭楽しんで下さ~い」と言って去っていった。……すごくあっさりと引き下がったなあ……。

「……それじゃあ、もっといろいろと回ってみないか?」

 気をとり直してそう提案しながらフィオナを見る。

「……そうですね」

 そう口にするフィオナの顔は、少しこわばっているように見えた。……なんだ? ……そういえば、さっきアメリアはフィオナの横を通って歩いていったな。まさか何か言われたのか?

 少し探りを入れたが、フィオナからは「何もない」と言う答えが返ってきただけだった。……ならいいんだけど……。



 その日の夜。俺はふたりからの報告を聞いていた。フィオナたちは、無事に今日の練習も終えられたらしい。ただ、フィオナは少し調子が悪そうだったと言う。……やっぱりなにかあったのか? そこで、昼間にアメリアがフィオナに何か言っていなかったかも聞いてみたが、ふたりともわからなかった。……まあかなり近くにいた俺にも聞こえなかったしな。

 それにしても……俺だけじゃなくてフィオナにもなんかちょっかいかけてんのか? 俺に来る分には避けるなり拒絶すればいいけど、フィオナに行くのは筋違いだろう……。しかも見た感じ、絶対なんかあった後だし。……もっと前から、サクヤをつけておくべきだったか?

 今更言ってもしょうがないか……。とにかく、何があってもいいように心の準備だけはしておこう。

 そういえば、結局プレゼントの話できなかったな……。

報告が終わった後、なんとなく音楽が聴きたくなった俺は、スキルでスマホとヘッドホンを出すことにした。

 プレイリストを開こうとスマホを起動すると、画面に何やらウィンドウが出ている。……なんだ?

“音楽プレイヤーの機能がアップデートされました”

 最初の文言に驚く。このスキルはまだまだ成長するってことか? とにかく続きを読もう。

“アップデートされた部分は次の4つです。

・楽曲……新たに覚えた曲を記録できるようになりました。

・楽譜表示……主旋律となる楽器だけでなく、使われている楽器全ての楽譜の表示・生成が可能になりました。

・オーディオ機器生成……一度に4つまで生成可能になりました。

・憑依演奏……伴奏する相手を指名できるようになりました。

       演奏できる楽器が増えました。“


 5つも機能が増えたのか!

 確認してみると、確かに授業で聞いたりしたこちらの世界の音楽が追加されていた。楽譜もドラムなどのバックバンドのものが入っていた。

 最後に“憑依演奏”のアップデートを見てみる。……お。確かに楽器が増えている。前は3種類だったけど、今は倍以上に増えているな。

 “伴奏する相手を指名できる”ってなんだ? ちょっと試してみるか? それとも説明があるかな?

 探してみると、“カメラで写した相手の歌声に合わせて伴奏ができる。逆にカメラに写した相手に伴奏をさせることもできる”という説明が。起動してみるとスマホがカメラに切り替わった。……なるほどな。これは俺が、誰かの伴奏をするとき、もしくは伴奏をしてほしい時に使える機能なのか。……まあ、弾き語りじゃなくて、生演奏に乗せて思いっきり歌いたいときもあるよね。

 しかしアップデートか……。もしかしたらまたあるのかな。そしたら何ができるようになるんだろうか?

 次回からはフィオナちゃん目線のお話になります。誕生日パーティの裏側、”歌い手の集い”に出ることになったきっかけなど、いろいろ出てきます。

 次回更新は2月8日(火)の20時を予定しています。

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