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第5章 5-1 ダメ男は学校行事に想いをはせる

 私の拙い作品を読んでくださってありがとうございます!

 今回から新章に入ります。夏休みが終わって学園に行くわけですが、何も起きないわけがなく……。色々な思惑が交差する第5章、始まりです。

 夏休みが終わり、学園の授業が再開した。そこでまずしたのは、授業選択だった。

 学園は、前世の大学のような授業の取り方をしていて、いくつかの必修科目と選択科目、残りは自由という感じだった。騎士科の必修科目は体育と武器や体術を用いる授業、魔法に関する授業と、騎士としてのマナーなどについての授業だ。選択科目は、国語や社会などだ。

 学園の成績は、高等部卒業までに必要な単位を取ればいいという形式らしい。レオンは本当に必要最低限しかとらないで、残りは遊んでいたみたいだ。……俺としては知りたいこともあるから、受けられそうな授業はなるべく受けてみたい。というわけで自由選択科目として、音楽基礎と薬学基礎を選んでみた。「歌唱者」のスキルのことや、ポーションのことが気になったからな。それに、何か役に立ちそうだし。

 それ以外にも面白そうなものを受けることに決めて、授業選択は終わった。……カルロスに「俺たちとこの授業を取らないか?」と誘われたりもしたが辞退した。アメリアがセットだろうしな。

そう言えば、夏休みの課題も誘われたけど、その時にはもう領地でのことを書き終わった後だったっけ……。もう書いたから、と断ったが、あれから一週間くらいでできたのだろうか?

エレオノーラ嬢にも会ったが、カルロスたちが一緒だったので、相変わらずのお嬢様口調だった。俺をにらむことも忘れない徹底っぶりである。すごい演技力だ。

 その日の放課後。俺はカルロスたちと一緒にいた。またあのお茶会みたいなものに連れてこられたのだ。本音を言えば出たくないのだが、全部断って変に怪しまれたら動きにくくなりそうだから、出ることにした。

「お前が領地に行っている間、俺たちは森を探索したりしたんだぞ。魔物が出たが、魔法で倒してやった」

「私も出てきたゴブリンを凍らせてやりましたよ。なんせ、アメリアを下種な目で見てましたからね」

「ふたりともかっこよかったんですよう~」

 俺が領地で魔物と戦っている間、カルロスたちは森に行ったり町で遊んだりしていたようだ。夏休みの課題は3人で王都の人々の暮らしについてまとめたらしい。

「お前はどうだったんだ?」

「大変だったよ。魔物は多いし、強いし、盗賊まで出てきて休む暇もなかった」

 カルロスの問に、そう答える。

「そんなにいたのですか?」

「ああ。ある町を魔物から守った時は、町の前にある荒野や畑を覆うほどに魔物がひしめいていたよ」

 今度はマーカスの言葉に応える。

「そんなにいっぱい出るなんて、怖いです~~」

 そう言って、アメリアが俺に寄りかかってきた。やめてくれー。だけどすぐに、カルロスがアメリアを引き寄せてその手を取った。……たまにはいいことするじゃないか。

「怖がらなくても大丈夫だ。魔物なんて、俺たちが全て倒してやるからな。怖がることはない」

「カルロス様。すてき♡」

「私だってアメリアのためならそれくらいしますよ」

「きゃ! マーカス様♡」

 突如として形成される桃色空間。何を見せられているんだ俺は。……頭痛くなってきた。

 その後に「レオン様もかっこいいですよ♡」と言われたが、なんとか笑顔で乗り切った。うう……。精神的な何かがゴリゴリ削られて行く気がする。

「そういえばレオン。闘技会はどうするんだ?」

 自分たちの世界から帰って来たらしいカルロスがそんなことを聞いてきた。

「ああ。出ることにしたよ」

 そういうと、「わあ!」とアメリアが顔を輝かせた。

「頑張ってくださいねえ! 私も応援してますう。私もがんばりますからあ」

「おお! アメリアは歌い手の集いに出るのだったな! 俺も応援しているぞ!」

「私もです。まあ、アメリアの歌声なら優勝間違いなしですね」

 なんか新しい単語が出てきた。“歌い手の集い”? 

 話を聞く限り、これも学園祭のイベントのひとつらしい。

学園祭は10月の終わりから11月の始めの3日間に渡って行われるかなり大きめのイベントだ。1日目は闘技会の本選前半を行うのだが、この日は学生のみの参加だ。そして2日目と3日目は一般のお客さんもやってくる。闘技会の本選後半が2日目に行われ、3日目に行われるのが“歌い手の集い”だ。

これは前世で言うところののど自慢コンテストのようなもので、歌に自信のある生徒が集まって、最もうまく歌えた人に商品が出るというものだ。歌い手の聖女様にちなんだものらしい。こちらはあらかじめ予選を勝ち抜いた数人が特設のステージで一般の人たちや生徒に歌を披露して優勝者を決める。

今回俺は闘技会に出るわけだが、これ、騎士科の生徒は強制出場だった。授業で代表を決めて、その生徒が出る方式らしい。確かに全員で出たら、人数が凄いことになるもんなあ。……過去のレオンは予選の段階でさっさと負けて、学園祭を満喫していたみたいだった。でも俺はやれるところまでやるぞ。騎士科は1学年につき4人くらい代表を出すらしい。そこまでいきたいもんだなあ。

カルロスたちから解放された後、寮の部屋に戻るとサクヤがいた。

サクヤとカヅキは、俺の護衛も兼ねているということで、寮にある使用人用の部屋に暮らしてもらうことになった。そのために引っ越しまでした。今までの部屋は従者を連れてきていない人向けの部屋だったらしい。引っ越した先の部屋は、今までの部屋よりも広かった。ふたりの部屋は寮の俺の部屋の隣にあり、壁のドアでつながっている。とはいっても、ふたりはまだ10歳の子供だから、1日交代で学園に泊まってもらうことにした。そして今日はサクヤが泊まる日なわけだ。

「報告します!」

 はきはきした声でそういうと、サクヤは話し始める。

「フィーお姉ちゃんのことが好きなのは、乳母の親子と弟の4人だけ、です。他の人は、皆意地悪をしてます。……あ! 庭師と厩舎係の人は何もしてません」

「そうか。特に意地悪なのは誰だった?」

「はい! 弟以外の家族全員、です」

「……ありがとう。他にはあるかな?」

「ええと。……あ! トールお兄ちゃんのくれたカツオブシ(?)が美味しかった!」

 鰹節の味を思い出したのか、サクヤがうっとりとした顔をする。

 サクヤたちには、無理のない範囲でミストレア侯爵家について調べてもらっていた。後々のためにも、調べておいた方がいいと思ったのだ。……てか、サクヤはフィオナのことフィーお姉ちゃんとか言ってるし……。あと、トールに餌付けされてないか?

 時間があればトールの手伝いを、と言ったけど、ふたりは結構楽しくそれをやっているらしい。いい訓練になるとカヅキは言っていたが、サクヤはそれよりもトールにもらえるお菓子やご飯の方が魅力的に映っているみたいだな。まあちょっとくらいならいいけどね。息抜きは大事だ。


 朝。目を開けると片手が動かない。……またかな。

 布団を引っぺがすと、やっぱりサクヤがくっついていた。サクヤが来るとこうなるか。……さすがに4回目ともなると慣れてきて、驚かなくなった。

 とりあえずゆする。「みゃうん……」……くそ、かわいいな。

 フィオナが妹なら、サクヤはさらに下の、末っ子の妹って感じだ。甘やかしたい欲が出たけど、このままじゃ支度ができないので心を鬼にして何とか起こした。

 サクヤが出ていった後に、俺もまた部屋を出て、教室に向かう。カルロスたちに会うこともなく、昼休みになった。珍しいこともあるもんだな。

 昼食を食べようと廊下を歩いていると、フィオナを見つけた。ふたりの女子生徒と歩いている。……エレオノーラ嬢じゃないな。

「こんにちは、フィオナ嬢。奇遇だな」

 そう声をかけると、フィオナは「レオン様。ご無沙汰してました」と返事を返してくれた。

「そちらはご友人かな?」

 そう聞いてみると、片方の明るい茶色の髪と目をした女子生徒が話し出した。

「ごきげんよう。私はユーリ=ファ=サイモン。サイモン伯爵家の娘ですわ。レオン様のことはフィオナ様からよく聞いていますの。どうぞよろしくお願いしますわ」

「ああ。よろしく。レオン=ファ=アルバートだ」

 返事をすると、もう片方の金髪に深い青色の目をした子も口を開いた。

「私はグーエン子爵の娘でカノンといいます。お会いできて光栄ですわ」

「ありがとう。これからもフィオナと仲良くしてくれると嬉しいよ」

「あら、言われなくてもそうしますわ。だってフィオナ様はかわいいもの」

「!? カノン様!?」

 フィオナが慌てたような声を出した。でも構わずにカノン嬢は続ける。

「フィオナ様は、レオン様に撫でてもらったと話しただけで、御顔を真っ赤にされて……。あまりのかわいらしさに、私、あやうく倒れてしまうところでしたもの」

 ニコニコとそう話すカノン嬢の横で、話題の本人はからだをプルプルと震わせていた。顔はもちろん赤く染まっている。何か言おうとしているのか口をパクパクと動かしているが、言葉は出てきていない。

「あと、この間も、フィオナ様は、あ『ダメです!』むぐうっ!」

 さらに話そうとしたカノン嬢だが、耐えきれなくなったらしいフィオナがその口元を抑えた。でもフィオナの方が背が低いため、少しやりづらそうだ。そしてカノン嬢はフィオナの行動から逃れようと体をひねったりしていた。

「レオン様。よろしいでしょうか?」

 その時、ユーリ嬢が話しかけてきた。何だろう?

「明日は何の日かご存知ですか?」

「いや……特に覚えがないが……」

「実はですね。明日は………」

「!? 本当かそれは!」

「もちろんですわ」

「ありがとう。感謝するよ」

 ユーリ嬢にお礼を言うと、俺はフィオナに話しかけた。

「フィオナ嬢。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

「は、はい」

「明日が君の誕生日だというのは本当かい?」

「えっ⁉」

 フィオナは、“なんで知っているの?“と言うような顔をした後、ハッとした顔でユーリ嬢の方を見る。その本人は何食わぬ顔でニコニコしていた。

「知らなくて済まない。何かプレゼントをしたいんだ。何か欲しいものはあるかな?」

 そう言うと、フィオナは“とんでもない”という顔をした。

「あの……わざわざそんなことして頂かなくても大丈夫です。そのお気持ちだけで十分ですから」

 遠慮がちにそう言うフィオナ。だけど、俺は今しがたユーリ嬢から聞いたばかりなんだ。『フィオナが俺に誕生日を祝ってもらったり、何かプレゼントしてもらうのは、厚かましいと思って遠慮している』ってな。

 俺は貴族の常識なんてまだよくわかっていないけど、婚約者同士なんだし、誕生日などのお祝いを祝うべきだというのはわかる。むしろ俺としては祝いたい。ちょっとでも楽しい思い出を増やしてほしい。

「遠慮はいらない。希望があったら言ってほしい。できることなら何でもしよう」

 俺はできる限り真剣なトーンでそう言った。フィオナはそれを聞いて困惑した感じだ。多分迷っているんだろうな。

「フィオナ様。せっかくこう言ってくださっているのですから、お受けしてみては?」

「そうですよ。せっかく下さると言ってるんです。甘えてしまいましょう!」

 そう言って後押ししてくれたのは、ユーリ嬢とカノン嬢だった。

 フィオナはその言葉を聞いた後、少しの沈黙の後にこう言った。

「ありがとうございます。レオン様。でしたら……少し考えさせてもらってもいいでしょうか?」

イベントが来た! (乙女ゲームとは関係がない)

でも大事。……大事!

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