4-14 ダメ男は魔物の襲来に備える①
深夜テンションで書いたので少し変かもです。まあ、主人公も作業やら疲労やらで多分ハイな状態だとは思いますが。
『げりら?』
なんだそれ? といいたげな声が重なる。
「簡単に言うと、魔物の進路上に落とし穴や罠をしかけまくって、町への到達を遅らせるってことだ。アスラの方には、ひとりに伝令をしてもらおうと思っている。……マルス殿。頼めないか?」
「はい。もちろんです」
俺はうなずくと、村で書いておいた手紙を渡す。これはすでに打ち合わせていたことだ。
(これを母上に頼む)
小声でそう言うと、彼は小さく頷いた。よし、じゃあ次だ。
「ここに残る俺たちは、さっき言った通り、そこの森と町の間の草地帯に罠をはる。ついてこい‼」
「はい!」
マルスはすぐに出発し、俺たちは馬から降りて、草地に入った。猶予は日没直前まで。あと2時間くらいか。どこまでできるかな。
それから俺は、騎士たちに指示を出して、罠をしかけまくった。泥臭いうえに邪道と謗られそうな行いであるけど、皆文句も言わず従ってくれた。ありがたい。
仕掛ける罠は基本的には落とし穴だ。地面を土魔法で陥没させて、その上をカモフラージュする。互い違いになるように設置していけば、どんどんはまるだろう。このために、自分の班と、マルスの隊から土魔法が使える騎士を連れてきていた。実力に差はあったけど、役割を分担したことで、作業は何とか進んだ。穴の底には森から持ってきた木の杭もさしておいた。……魔法のおかげでかなりスムーズにできた。魔法凄い。
俺は指示を出しつつ、森の端から木を切り倒しては運んだ。ウィンドカッターが大活躍だ。ついでに森の中にも罠をしかけた。踏むと板が浮き上がって先に着いている杭が襲い掛かるものや、紐にひっかかると栗のいがみたいに尖った植物が降って来たり、木が倒れてきたりする。そういった設置型の罠を広い範囲に、かつ多めに置いてきた。
あと、草魔法の使える騎士には、罠を目立たなくしてもらったり、森の中にわざとトゲトゲの植物を生やしまくってもらったりもした。
MPポーションを飲みつつも、作業は1時間半ほどでだいたい終わった。マルスの隊の土魔法が使える騎士の腕がよかったおかげで、思ったよりもたくさん仕掛けられた。アスラに向かう途中でも、ところどころに小さな落とし穴や、簡単な土塁を作りながら向かう。こちらの落とし穴には、氷の球を入れておいた。衝撃が加わると割れて、周囲が凍る設置型の氷である。放っておいても2日ぐらい持つのは実験済みだ。森にも仕掛けてある。……くっくっく。人間のクズっぷりを見せてやるぜ。いやらしい罠にはまって、数を減らすがいいわ。(←謎のハイテンション)
「いやあ、よくあんなもの思いつきますね。モルンの森でもそうでしたけど、あれらを自分が受けたり、はまったりしたらと思うと、恐ろしいですよ」
カイルがそんなことを言う。他のやつらも、同意したそうな感じだ。……それは俺だって同じだ。
「あれくらい誰でも思いつくだろ。まあ、こっちが寡兵(兵力が少ないこと)ならどう相手に出血を強いるかを考えた結果だよ。それよりも嫌じゃなかったか? 騎士としては褒められた行動じゃないと思うが」
そう問いかけるが、返ってきたのは“魔物相手だし、理に適っていると思ったから気にしない“というものだった。悪印象を持たれなくてほっとする。なんせ、この方法は前世で読んだ小説の中で大群を相手にした主人公がやっていたことなのだ。まさか異世界で似たようなことをするとは思っていなかったな。小説では人間の軍相手だったのもあり、もっと鬼畜なことをしていたけど……。
その内容を思い出して、あれは受けたくないもんだとひっそりとため息をついたのだった。
そしてちょうど日が暮れたころ、俺たちはアスラの町に到着した。町は周囲を高さ3メートルほどの城壁で囲まれており、今までの町や村に比べれば防備は立派だ。……でも、領都に比べれば壁の高さは低い。もし、村人が言っていた大きな魔物が3メートル以上の体長を持っていたら、厳しいかもしれない。
門番とやり取りして中に入れてもらうと、町の中は騒がしくなっていた。……どうやらマルスに渡した手紙がちゃんと届いたっぽいな。そのまま向かったのは、アスラの町の領主館だ。きっとここに母上たちはいるはず……。
中に入って要件を告げると、奥へと通される。2階の応接室に入ると、そこには母上とその侍女。そしてフィオナがいた。俺の姿を見た母上は、侍女を下がらせると、俺に声をかけた。
「レオン。あなたどうしたの? そんな泥だらけになって……。でも、無事でよかったわ。……ところで」
そう言いながら、母上は紙を取り出した。俺が書いたやつだろう。
「ここに書かれていることは本当なの?」
その問いに、俺は軽く頷きながら答えた。
「昨日父上や叔父上と話し合って、その可能性が高いと判じられました。今日明日と増員や山狩りを行う手筈だったのですが……その矢先に魔物の集団の話を知ることになって……」
母上に渡した紙には、昨日の話や、魔物の集団がこちらに向かっていることなどを記していた。そして、中にはこの町の住人を一か所に避難させてほしいということも書いた。盗賊の一味がハンターに成りすまして町に入り、獲物を物色している可能性があったからだ。
「そう……。町の女性や子供は一か所に集めるように指示を出しておいたわ。それで、魔物はどれくらいの数なの?」
「……ゴブリンやオークなどが少なくとも百体以上向かっているようです。ここには、明日の朝方には到着すると思います。……まあ、森の出口付近に罠をしかけておいたので、少し遅れるかもしれませんが」
そう言うと、母上は面白いというような顔になった。
「あら。だから泥だらけなのね。何をしたのかしら?」
「はは。とても騎士としては褒められたものではないですね。……ところで、ここにはどのくらい戦える人がいますか?」
「この町の衛兵が350人と、ハンターが30人ほど。あと私たちの護衛に巡回の騎士が50人ね」
「俺は12人で来ました。つまり全部で400位ですか」
ハンターは盗賊が紛れ込んでいるかもしれないから、あまり信用できないしな。
それからは母上と、この町の責任者と衛兵の隊長を交えて魔物の襲来についてどうするかを話し合った。ここで分かったことは、領都の父上たちから魔道具で連絡が入っており、他の場所でも魔物が出現していて、こちらへの援軍は早くとも明日の夕方か明後日になるということだった。……つまり、明後日まで確実に持ちこたえないといけないのか。おまけに魔物だけじゃなくて、町に潜伏しているかもしれない盗賊のことまで考えないといけない。今はひとまず女性と子供を一か所に集めて警備させてるけど……。
それから話し合いを続けて、魔物に対しては、まず魔法を使える騎士や衛兵が魔法で弾幕を張っていくらか削り、その後に外にでて直接倒していくというオードソックスな案を採用することになった。対策として、ハンターは全員外に出すことを考えているが、激しい戦闘のさなかではどこまでできるか……。
現実問題として有効な手もなく、不安をぬぐえないまま、夜は更けていった。
作中のゲリラ活動はオリジナルもありますが、元ネタは作者の読んでいる本の主人公がやっていたことです。タイムスリップした歴女な女子高生が織田信長に拾われてこき使われる話でしたね。アニメ化しないかな……。ドラマでもいい……。




