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    4-7 ダメ男は、領地に帰省する①

 今回から領地編の開幕です。

 今日はついに領地に帰省する日だ。昨日、ミストレア侯爵家から返事があり、フィオナを連れていけることになった。母上は『当然ね』と言ってニコニコしていたが、いったい何を手紙に書いたんだろう?

 昨日は、午前中は訓練を行い、午後は久しぶりにトールの所に行った。騎士たちとラジオ体操をするのも随分と久しぶりだ。人数がかなり増えていた。なんでも、騎士団の準備運動として取り入れることになったらしい。また、騎士ドロやドッヂボールも騎士団内で広まり、最近では領地の子供たちの間でも行われているとか。ずいぶんと大事になったもんだ。

 訓練を終えた後の昼食では、なんとラーメンが出た。料理長の説明では、トールが完成させたものを味見したところ、美味しかったので出してみたという。食べてみると、よく煮こまれた豚骨出汁のスープの味が口いっぱいに広がった。醤油やみそは充分な量が手に入らなかったのか豚骨塩ラーメンと言ったところだったが、美味しかった。麺もシコシコとした縮れ麺で、スープがよく絡んでいる。具材はチャーシューに炒めた野菜、味付け卵まで入っている。……トール、ここまで完成させたのか。完璧にラーメンだ。

 とにかく大満足の昼食だった。父上たちにも好評のようだし、これからも食べることができそうだな。

 昼食の後、早速俺は屋敷の裏手にあるトールの修行小屋に向かった。中に入ると、濃厚なスープの香りが鼻を襲った。どうやらスープの研究をしているみたいだ。

 トールは頭に布を巻いて、鍋を煮込んでいた。今はラーメンで磨いたスープを他の料理に生かす研究をしているという。ラーメンやうどんが気に入られたことで、研究費用が出るようになったのだとか。おかげで自分でも醤油やみそを買い付けて色々と試行錯誤できるのだと嬉しそうに語った。

 また、例の商会に置いてあった商品も見せてもらった。ざっと見ただけで、海苔や昆布、納豆、豆腐など、前世で親しんだものがいくつかあった。さっそく使い方を教える。トールの方でも考えていたみたいで、思いもよらないような使い方をしているものもあった。ただ、納豆は苦手みたいだったけど。

 その後は俺が持っていたコムの実を渡して、実際に炊いて見せた。炊いた後は実食あるのみ。

 もぐもぐ。あ~~おいしい。噛めば噛むほどお米の甘みが口いっぱいに広がっていく。……幸せ。そう言えば納豆あるじゃん。よし食べよう。

 納豆を食べている俺を見て、トールがちょっと引いていた。……美味いのに。でも、米の美味しさにはとても驚いていて、ぜひとも研究したいと言ってくれたので、持っていた分は全部渡しておいた。俺の分はまた採りに行けばいいしな。

 それから、ポーションを使った料理について聞いてみた。トールは聞いたことが無いようだが、おもしろそうだというので、残っていたポーションとMPポーションを数本ずつ渡しておいた。

 昨日の出来事はだいたいそんな感じだ。

 さて、そろそろ出発の時間だ。屋敷の前のエントランスには、馬車が3台停まっている。ひとつには男性陣が乗り、ひとつは母上とフィオナ。最後のひとつにはアレク達が乗る。あと護衛として50人ほどの騎士がついてくる。総勢70人ほどの大人数だ。

 その時、正面の門から一台の馬車が入ってきた。そして中から、フィオナが降りてきた。今日も涼し気なワンピースを着ていて、荷物が入っていると思わしき小さなバッグを持っている。彼女を下ろした馬車はすぐにUターンして帰って行った。どうやら御付きの侍女などはおらず、彼女だけらしい。

 フィオナはてくてくとこちらにあるいてくると、「お世話になります」と頭を下げた。俺も口を開こうとしたのだが、その前に別の声が彼女にかかる。

「フィオナちゃんよく来たわね。でも、そんなに堅苦しい感じにしなくてもいいの。私たちが誘ったんだから。ね?」

 そう、母上だ。いつの間にやら俺の隣に立っていて、フィオナに話しかけている。そのまま自分の乗る馬車に連れて行ってしまった。……まあ、話す機会はまだまだありそうだからいいか。

 準備も完全に整い、出発の時間になった。俺は兄の隣に並び、屋敷に残る使用人たちを見つめる。屋敷に残るのは一部の使用人や料理人たちだ。ただ、その中にトールはいない。トールは最近活躍が目覚ましいことが評価されて、今回の帰省に同行が許されたのだ。役目としては、あちらの料理人に手ほどきをしたり、新たな食材を探したりといったところだ。

 とにかく、出発の挨拶も終わり、俺は馬車に乗り込む。中は向かい合わせで座席があり、真ん中には備え付けのテーブルがついていた。一緒に乗ったのは父上と兄、そして護衛の騎士たちの長である小隊長だ。馬車の中は広めに作られていたが、皆体が大きいのでやや窮屈な感じがする。

 全員が乗ったのを確認したのか、馬車が動き出した。耳を澄ませると、並走する馬の足音も聞こえてくる。ガラガラという車輪の音も聞こえるが、思ったよりも揺れたりはしていない。……もっとガタガタ揺れるかと思ってたけど、そうでもないんだな。

 やがて王都の外に出る門までやってきたようで、一度馬車が止まり、何やらやり取りする声が聞こえた。特に問題はなかったようで、ほどなくして再び走り出す。

 門から出てしばらくしたころ、「では……」と言いながら父上が話し始めた。

「ここでレイリスに着いてからの魔物狩りの分担についていくらか決めておく」

 それに反応して、兄と小隊長が「はい!」と声をあげたので、俺も慌てて後に続く。

「先に話した通り、今年からはレオンも参加する。しっかり励むように」

「了解です」

「うむ。ではまず大まかなところから……」

 そして取り出された領地の地図が真ん中のテーブルに置かれ、配置が決められていく。魔物討伐に参加するのは伯爵家の面々と伯爵家の騎士団、そしてハンターである。毎年この時期になるとギルドの方にもこちらから魔物討伐の依頼が出るそうで、結構な数のハンターたちが協力してくれるらしい。

 馬車の中での会議は1時間以上に及んだ。その結果、俺は騎士たちと共にモルンの森というところを担当することになった。魔物の強さはちょうど初級ダンジョン程度らしい。討伐は日帰りの時もあれば何日か泊まり込みで行う時もあるようで、場所や魔物の数にもよるってとこか。

 俺はいやおうなく高まっていく緊張感を胸に抱きながら、馬車が行く方向を眺めるのだった。


 お母さんは何をしたのやら……。そして魔物討伐はどうなるのか? お楽しみに‼

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― 新着の感想 ―
[良い点] フィオナちゃんの服を用意すると言ってましたし、お母様はウキウキでしょうね 自己肯定感を上げる手助けのひとつとして、服を着飾る楽しみと技術を身に付けたり、新たな縁の形成をしてくれるといいので…
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