3-6 魔法少女魔導書を作る
この次辺りが幼少期編クライマックス、かも、と言う感じの振り回(え
しばらく魔法の契約を増やしていくと、羊皮紙の束が出来上がってしまった。
使う事を考えるとバラになっていた方が便利な物もあるが、正直扱いに困ってきた。
「どう致しましょう。製本でもさせましょうか?」
羊皮紙の束を抱えたアーニャが困り顔で提案してくれた。
「うーん、こんな怪しい物を人に任せるのはちょっと不味い気がするわね」
「確かにそうですね…」
手に持った羊皮紙には怪しげな図形と未知の文字が並んでいる。
「魔法でなんとかしてみますか」
「と言うわけで用意してもらったこの無地の本」
装飾を施された立派な装丁だが全ページ白紙の本がテーブルの上に置かれている。
この世界には印刷技術などがないので基本的に本というのは誰かが手書きで作ったものと、その複写である。そのため、はじめから本を作ると言う趣味を持つ人間が居て、それ用の無地の本が用意されているのだ。もちろんそれも大量生産などではなくワンオフである。頼まれたからと言ってポンと出来る物では無いから予め注文されていたか、家族の誰かが本を作ろうと用意しておいた物だろう。
「これに書き写していくわけですか」
羊皮紙の束と見比べてアーニャが自分の仕事だと思った様だが断った。
「手作業でそれをするのは面倒だし、もとの羊皮紙の扱いも困るので、この中に収納できる様にしようと思います」
「なるほど魔法ですね」
アーニャもだいぶ慣れた様だ。
「それでは私は他の仕事をしていますので、御用ができましたら及びください」
「ええ、また後でね」
アーニャがいつも行っている作業を終え、お茶とお菓子を持ってアナスタシアの元へ行くと、大きな本を抱えて何かやっている。
「お嬢様、お茶の支度が整いました」
声をかけると嬉しそうに振り向いた。
かわいい
声には出さないが。
「あ、アーニャ、良いところへ。見て見て、同時に魔法陣を12個展開できる様にしてみたの」
足元や手元などに光魔法陣が表示され、いくつかはクルクルと回っている。
「それは…」
「意味は無いわ!!」
ドヤ顔のアナスタシアも可愛かったが、一応注意した。
「ふう」
ティーカップを片手に一息つくアナスタシア。
「とりあえず、これまでに作った魔法の契約書を格納、新規の魔法は紙からでも登録できるけど、直接この本から契約する事も出来るし、単独で利用できる様に複製を羊皮紙などに出す機能もつけたわ。魔法の道具を作成する支援機能も内蔵済みよ」
「…なんだか少し危険な物の様な気がしてきました。他の人間に悪用されない様な安全策を講じておいた方がよろしいのでは無いでしょうか」
相変わらずアーニャは心配症だ。
「今のところ、これが何か知っているのは私たち2人だけだし、何が書いてあるか分かるのは私だけだけど…、なんかカッコいいから採用」
「………」
こうして、アナスタシアが生み出した魔導書によって、一見平和だが世界を根底から覆しかねない日常が永遠に続くかと思われたが、ある来訪者によって終わりを告げた。
屋敷の前に紋章を掲げた馬車がやって来たのだ。
林の中に立つ館だが、この林自体が私有地であり、この館の前まで来た時点でただ事では無い。
降りて来たのは文官風の男と騎士。
文官風の男はおそらくアナスタシアの家と同格か格上の貴族の代理人だろう。
「アナスタシア=フォン=バーンシュタインだな。ご同行願おうか」
この別邸まで馬車が来ることなどなかったので来客には気がついていたが、アーニャが対応し、追ってアナスタシアがエントランスに現れた。この国では珍しいアナスタシアの銀色の髪を見て当人と判断した様で、こちらの言葉も聞かずに指示を出した。
「父も承知しているのでしょうか」
凛とした姿勢に6歳とは思えない完璧な作り笑いを浮かべた顔でアナスタシアが問う。
「もちろんだ。それにバーンシュタイン卿も先に目的地に向かっている。一緒にくればすぐに会えるだろう」
「支度をしますのでしばらくお待ちください」
「逃げようとしても無駄だぞ」
「なぜ私があなたから逃げなければならないのでしょうか。何かやましいことでもお有りですか?」
「………」
事も無げに答えると文官風の男の表情がわずかに揺らぐ。
完全に無表情を維持しているアーニャからわずかに誇らしげな気配が漂ってくる。
明らかにろくでもないことなのだが、普通に外出用の支度を整える。ずっと屋敷に居たアナスタシアだが教育の一環として外出用の服装もたまにするし、行動についての指導も受けていた。もう少しまともな理由の方が良かった気もしなくも無いが、この館を出てどこかに行くと言う事に期待しているアナスタシアだった。
魔導書は封印と偽装を施しているので、他人に見られても大丈夫だから置いていく。
杖や短剣も他人から見たらただのそれだから放置しても問題はないだろう。
普段危ないものを作るなと口うるさいアーニャが何か用意しておけば良かったと弱音を吐いたが、大丈夫だと笑って答えた。
迎えに来た使者はまるで犯罪者を捕まえに来たかの様な態度だったがアナスタシアに威圧され完全に萎縮していた。
彼らを横目にアーニャを従えて用意された馬車に乗り込むのだった。
もうちょっとこの作品世界での魔法の構造とかそう言うのを解説していくようなアレにしたかったのですが、私が無知な上に大雑把なので、なんか微妙ですね




