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17.両面宿儺

怪異対策機動本部の休憩室にて装者3人と西園寺司令はテレビのニュースを見ていた。


「先日の渋谷大規模テロから三日が経過しました。警視庁による発表によりますと、テロ首謀者は「天川マヒロ」。天川容疑者は大量の化学兵器、生物兵器を用いて渋谷で大規模テロを敢行。テロの被害者の方による証言の中にあった「妖怪、化け物、幽霊などを含めた怪異」は化学兵器の特殊ガスによる幻覚作用、そして生物兵器などを「怪異」と誤認した可能性があると警視庁は主張しています。以上が警視庁からの発表になります。新たな発表が公開され次第、皆様にお伝えしていきます。続きまして東京都三鷹市で発生した大規模な爆発についてですが~」


「やっぱりこんな感じの報道になりますよね...」


僕の問いにユウジさんが答える。


「『テロを引き起こしたのが実は怪異でした~』なんて誰が信じるんだって話だしな~。それに怪異の仕業だと公表した方が面倒になったりする」


混乱を招かないようにするためってのもあるだろうが。


「やっぱり虚構共通認識の現実化フロイト・リアライゼーションですか?」


「多くの人間が信じ恐怖することで現実に顕現することが出来る。怪異の仕業であると公表した場合、多くの人間が怪異の実在を認識してしまう、そうすればフロイト・リアライゼーションによって怪異全体の強さが増強されてしまう。だから化学兵器、生物兵器のせいにしてしまえって方針なんだろうよ」


「まあこれでリープロギアの情報も一般市民に漏洩せずに済みましたね」


僕の言葉に司令が返す。


「ああ、一般市民(・・・・)にはな。渋谷の大規模テロ、そして三鷹市でのジャンヌとの戦いを偵察衛星で各国から監視されてたいたようだ。米国政府は最初は超常の力を持つ兵器を保有していた事実に対し日本政府を非難していたが、その後、日米安全保障条約の中に盛り込まれている「相互協力」を名のもとに、協調の提案を強く打ち出しているらしいゾ。そして特定アジア諸国からはリープロギアの保有に対し「憲法違反」などイチャモンをつけられてるらしい」


「面倒なことになってますね...」


「これからどうなるんですかねぇ?」


僕とアオイさんは他人事のように返すが外交問題なんて下々の者にはどうすることもできない。


「恐らく、特定アジア諸国からの非難を回避するために米国からの提案を受け入れることになると思う」


「リープロギアの共同開発...とかですかね?」


ユウジさんが司令に対し反論する。


「でもジャンヌ戦でEXD(イークロスドライブ)モードになった影響でブラックボックスの一部が開示されたとはいえリープロギアはまだ謎だらけの代物っすよ?共同開発なんて無理だと思うんですが...」


「そうだな、最悪の場合はリープロギアの引き渡すことになるだろうな」


司令の言葉に僕たちは衝撃を受ける。


「そんな...」


「そうなったら俺たちはお役御免って感じっすね~」


続けてユウジさんは小声で呟く。


「でも俺はそれでいいかな...」


「先輩?」


間髪入れずにけたたましいサイレンが室内に流れる。


「基地正門にて不審な人物が侵入しました。装者の皆様は速やかに対応をお願いします」


「お前たち!今すぐ正門に向かうぞ!」


「本部襲撃されすぎじゃないですかね...」



基地正門前に移動するとスーツ仕立ての男が多数の悪霊を従えて立っている。


「なんかもう、臓物バラマキ、しちゃいそうで怖いですねぇ」


僕たちは既にギアに変身しており三人で駆け付ける。


「何者だ!」


スーツ仕立ての男は気前よく答える。


「よくぞ聞いてくれました!私はパレイーズ結社過激派の次期統領になる男、白石トウヤという者です」


「またパレイーズ結社かよ!」


「ジャンヌという過激派統領というブレーキを失ったんだ。こんなしょうもない輩が出てくるのは必然だよ」


「フッ、どうやら私の存在に恐れおののいているようですね」


僕は白石の言葉を即座に否定する。


「違います、それよりあなたがここに襲撃に来た目的は何ですか?」


「そうですね、お礼参りといったところです」


「お礼参り?」


ユウジさんがそう聞き返す。


「ええ、目の上のタンコブの存在だったジャンヌをあなた方3人は見事打ち倒してくれました。別に私が直接倒しても良かったのですが忙しかったもんですから、ええ」


大きな身振りで演説するかのように答える白石。


「だったらハガキでお便りコーナーに投稿しといてくれよな」


「そして仮にも統領であるジャンヌを倒した!私はあなた方を脅威と判断し自らの手で排除することにいたしました。もちろん、感謝を込めて」


「聞けよ人の話を」


ユウジさんは無視されたことに対しそう返した。


「悪い芽は早めに摘んでおくってわけか、殊勝な心掛けだけど悪霊たちだけでわたしたちを倒せると思ったのなら舐められたものだね」


「ええ、悪霊たちでは役者不足です。だから言ったじゃないですか、自らの手で排除する(・・・・・・・・・)と。


白石はそう言いながらスーツのジャケットを脱ぎ勢いよく空中へ投げ捨てる。白石の腹部には遠野カエデと同じベルトが巻き付いているが巻き付いている。白石がそのベルノをグリップを動かし呟く。


「ガヴェイル...」


白石から爆風が発生し僕たち()される。爆風が収まるとそこにはガヴェイルネオを彷彿とさせる姿に変身した白石が立っていた。


「まさか...ガヴェイルネオ!」


「いいえ、これはガヴェイルネオではありません。ネオアルファ(新時代の始まり)こと、ガヴェイルネオアルファです!」


「お前もコトリバコの怪人なのか?」


ユウジさんの問いに白石が答える。


「いえ、私は遠野君のような怪人ではありません。普通の人間ですよ」


「じゃあなんで普通の人間がなんでガヴェイルに変身できるんだよ?」


アオイさんの問いにも白石は答える。


「その理由は単純ですよ。このネオアルファは外付けの呪い、「両面宿儺の指」の呪いで変身しているのですよ」


「両面宿儺...!」


まずい、近年において両面宿儺は圧倒的知名度を誇る。虚構共通認識の現実化フロイト・リアライゼーションでバフがかかっているかもしれない。


「ほんとは指を飲み込んで宿儺の呪いを扱えるようにしたかったのですがそれは最後の手段です。いいえあなたたちの相手にはネオアルファで十分です」


「ぶっ倒してその自信過剰な性格を矯正してやるよ。馬鹿とテレビは叩いて治すってなぁ!」


「考えが昭和過ぎませんかねぇ...」


今なら問題になっているであろう発言だ。


「京極さん、岩瀬さん。周囲の悪霊の相手をお願いできますか?ネオアルファは私たち三人で相手します」


「了解した。おめえらも気張ってけよ」


アオイさんは京極さんにそうお願いした。装者三人とガヴェイルネオアルファ、京極さん岩瀬さんと悪霊たちの戦闘が始まった。



ネオアルファは腕に付属している武装のガトリングを装者三人に向けて掃射する。三人は即座に散開しユウジは正面から、アオイとナオキは左右から接近する。ネクタイは武装びチェーンソーを起動しユウジに向けて振り回す。ユウジは余裕で躱していく。


「もしかしてド素人っすか~」


ユウジはネオアルファのチェーンソーの大振りを躱しながら確実に拳を叩き込んでいく。


拳を叩き込んでいく中でユウジは装甲がガヴェイルネオよりも固いことを悟る。


「お二方!コイツ装甲が固いんで多少本気で斬っても大丈夫っすよ」


「よし!じゃあぶちこんでやるぜ!」


アオイは即座に爪で引っ掻く。ネオアルファの胸部装甲に傷がつく。ネオアルファは攻撃を喰らいよろけるもすぐにチェーンソーで反撃する。しかし大振りなので当たらない。続けてナオキが腕の装甲切り込む。ネオアルファはまた反撃するも当たらない。ユウジはネオアルファの顔面に強めにパンチを叩き込む。ネオアルファの顔面の装甲が砕け散る。三人の猛攻が絶え間なく続きネオアルファを纏った白石はだんだんと疲弊する。


「この人本当に訓練もしてない素人ですよ」


「ジムに週2回通ってるんで一般人よか上ですよ!」


「大差ないっすよ」


ナオキとユウジは連携で攻撃を入れていく。


「ナオくん!ユウくん!相手はスーツの性能にものを言わせた雑な戦い方!一気に畳みかけるよ!」


「了解!」


三人は息の合ったコンビネーションでネオアルファを追い詰めていく。ネオアルファが反撃しようとするもすぐさま次の攻撃が叩き込まれ反撃の隙すら与えられない。ネオアルファはただ攻撃を受けているだけにも関わらず呼吸が荒くなっていく。


「こいつで()まいだッ!」


ユウジは拳のラッシュをすべてネオアルファに叩き込む。ネオアルファは吹き飛び壁に叩きつけられ変身が解除される。装者3人とネオアルファの戦闘はおよそ1分ほどで終了した。




「だいぶ手抜いたはずなんすけど...」


ユウジさんは首をかしげながらそう答えた。


「伊吹~こっちも終わったぞ」


「お~ありがとうございます」


京極さん岩瀬さんコンビも悪霊の駆除が終わったようだ。


「白石トウヤ!大人しく投降しろ!」


僕は白石トウヤに投降を命じた。


「あのジジイ...ホラ吹きやがって...」


白石が小声でそう呟く。


木村「ジジイ?」


「...驚きましたよ、まさかあなた方がこんなにも強いだなんて」


「いやアンタが弱すぎなだけだと思うんですけど」


ユウジさんが白石に対し即座にツッコミを入れる。


「さて、もうなりふり構ってる暇はなくなりましたね。できればあまり使いたくない手でしたが...」


「まさか!」


「宿儺の指を!」


白石はネオガヴェイルドライバーに取り付けられていた宿儺の指を外し口の中へと入れようとする。


「飲み込んでえええええええええええええええええええええええ」


「まずい!」


僕たちは白石に向かって走り出す。京極は白石に向けて発砲する。白石は胴体に銃弾を受けるも決死の覚悟で宿儺の指を口に含み飲み込んだ。



刹那、空気が変わる。重圧(プレッシャー)によりその場に居合わせた人間全員が動けなくなる。


身体中から冷や汗が滲みでる。


心臓の鼓動さえも""ソレ""により動けなくなったかに思えた。


自分の中の本能が""ソレ""を嫌悪する。


白石トウヤの皮膚はみるみるうちに紫色へと変色していく。宿儺の指による影響か皮膚がところどころ溶解している。


「受肉...はしていないか」


例の呪術で戦う漫画みたいに宿儺が受肉して斬撃を飛ばされたら僕たちに勝ち目はない。


「だったら!」


僕は即座に短剣を生成し白石に対して投擲する。京極さんも同じことを考えていたのか白石トウヤに向けて発砲する。京極さんが発砲した拳銃の銃弾がそれぞれ白石の胴体と頭部に着弾する。僕の短剣も白石の首に突き刺さる。だが、銃弾は皮膚によって進行を阻まれ徐々に溶けていく。僕の短剣も突き刺さった部分が溶け地面に落ちる。


「熱?いや酸か?」


アオイさんの疑問に答えるかのようにヘッドセットに通信が入る。


「いや、それは呪いだよ!熱や酸ではない!」


「八千代さん!」


「その場から高濃度の呪いの発生を検知している!対国レベルだ!退いた方がいい!リープロギアじゃあ太刀打ちできない!」


対国レベルって...コトリバコの怪人ですら対国レベルの呪いなんて出していなかったというのに。おそらくリープロギアで生成したものも呪いによって溶かされる。どうやって倒せばいい?どうやって駆除すればいい?


「私の限定解除・獣性狂化リミテッド・バーサークならもしかしたら攻撃が通用するかもしれない」


「そうか、(あね)さんの八岐大蛇の金属はリープロギア由来じゃない」


「八千代さんどうですか?」


アオイさんの問いに八千代さんが答える。


「わからない、だが今のまま挑むよりも勝機はあると思う」


「やるよ、みんなは下がって」


「アオイさん」


僕はアオイさんを呼び止める。アオイさんはこちらへ振り向く。


「ご武運を」


「何言ってもフラグになりそうだからこれだけ。さっさとぶっ倒してナオくんの元に帰るから」


僕はその言葉に頷く。


「おそらく彼の体液が溶解の性質を持っているんだと思う。特に血液に気を付けて」


「了解、───始祖開放(セット)限定解除・獣性狂化リミテッド・バーサークッ!」


アオイさんは渋谷大規模テロの時と同じように全身が八岐大蛇の金属によって覆われていく。アオイさんは言語を発さず呼吸とうめき声、そして咆哮を発する。




異形とかした白石に向かう伊吹アオイ。白石は自らの腕から出血させ腕を振ることにより血液を飛ばす。溶解性の血液は地面を溶かす。アオイは寸で躱し白石へと迫る。アオイは爪のひっかきで屠ろうとするも白石の腕によって防がれる。


「なっ!?防がれた!?」


「力は互角かよ!?」


「けど、知性は感じられない。本能で防御してるみたいだ」


ナオキとユウジが反応しているところに八千代スバルの解説が入る。アオイは狂化しているものの大振りの攻撃は防がれることを理解し高速機動による攻撃へと移行した。アオイの限定解除・獣性狂化リミテッド・バーサークによる高速機動により翻弄される白石。白石の身体は徐々に切り刻まれていく。


「すげえ、これが八岐大蛇の力」


ユウジが恐怖を覚えつつも感嘆する。白石は両腕両足を落とされたところで地面に落下する。アオイは尻尾からトドメの熱線を吐き出し白石の頭部は破壊される。


アオイと白石トウヤの戦いは強者同士の戦いではあったもののおよそ1分ほどで終了した。





白石トウヤの頭部が蒸発したことにより白石トウヤは死亡。宿儺の指は白石の胴体に残っているもののひとまずの脅威は排除された。だがしかしアオイさんの限定解除・獣性狂化リミテッド・バーサークがいつまで経っても解除されない。


「おい、なんで(あね)さんの限定解除・獣性狂化リミテッド・バーサークが解除されねんだ?」


アオイさんが言うには限定解除・獣性狂化リミテッド・バーサークは設定した敵を排除出来れば自動的に解除されるように設定してあると言っていたが...。


「無駄じゃよ」


僕たちの背後から声が聞こえた。


「誰です!?」


僕たちが振り向くとそこにはアオイさんの祖父が立っていた。


(あね)さんの...爺さん?」


「なんでこんなところに?」


突然の伊吹ヨシヒロの登場により僕の脳は混乱していた。


「なんでって儂とそこの白石は協力関係にあるからなぁ」


「協力...?」


「まあ実際は儂が利用させてもらったが正しいんじゃがな」


ヨシヒロはアオイさんに対して指示を出す。


「アオイ。地面に落ちているそやつを呑み込め」


アオイさんはそれに答えるように尻尾の形状を大蛇の口へと変える。大蛇の口は白石の身体へと迫る。


「させません!」


僕はは短剣を大蛇に掃射するも金属の鎧で全く通用しない。ユウジさんはヨシヒロの胸ぐらをつかむ。


「ヨシヒロの爺さんよぉ、何考えてっか知らねーけど命が惜しけりゃいますぐアレを止めさせろ!」


「別に構わんよ。先程の命令で儂の目的は達成されたようなもんじゃ。儂が死んだところでアレは止まらん」


「こいつ!」


大蛇は白石の身体をの丸ごとを呑み込む。


「さあ、両面宿儺の指を触媒として顕現せよ。日本神話の怪物、八岐大蛇(やまたのおろち)よ!」


ヨシヒロがそう叫んだ刹那。稲妻が周囲を走る。アオイさんの周囲に土埃が舞う。この重圧!両面宿儺以上だと悟る。


ひとしきり稲妻が走り突風と砂埃が巻き起こる。数秒程の激動の後、辺りは静寂に包まれる。土埃の中でアオイさんの人影が立っている。


「ああついに顕現したぞ!八岐大蛇が!」


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