小章 フロインとリティル
リャリスに誘われ、歩き始めたノインの中で、フロインはノインに内緒でリティルに話しかけていた。
『リティル』
――ああ、ノイン大丈夫だったか?命がなくなりそうだってときに、飛び込むか?あのバカ。こっちには、シェラもインジュもいるんだぜ?何考えてるんだよ?オレの苦労水の泡にする気かよ!
『反省していると思うわ。あなたと離れているせいで、不安定だったの。ごめんなさい、あなたよりノインを優先してしまって』
――しょうがねーな。クールで大人な補佐官様も、王がいねーと真価を発揮できねーって?オレって偉大だな!オレはみんながいるからな、大丈夫だぜ。おまえはノインのこと頼んだぜ?
『リティル、ノインの命の期限はあと1日よ。リャリスが、蛇のイチジクに案内すると言ってきたわ』
――ああ、迷ってたリャリスの背中を押したのは、オレ達だ。フロイン、オレも行く。道案内してくれ
『ええ、わかったわ。……リティル、ノインはもう戻れないの?』
――それは、オレにもわからねーよ。でもな、フロイン、命があったら会えるだろ?オレはこれからも、あいつに会いてーんだ。瞼の裏、心の中だけじゃなくて、開いた瞳に、あいつの姿をこれからも映してーんだよ
『ノインが、望まなかったとしても?』
――逝く者に、残される者の気持ちはわからねーよ。残される者に、逝く者の気持ちがわからねーようにな。オレは勝つぜ?ノインに勝ってやる!
『リティル、聞いて。インリーがリャリスの命もあと1日だと……』
――!インラジュール、何考えてるんだ?けど、これはあいつら親子の問題だな
『インジュは……』
――ん?ああ、インジュは、そういう意味で気になってるわけじゃないぜ?たぶんあいつが気にしてたのは、命の期限だったんだ。インジュにはそれが見えねーけど、リャリスが死ぬような気がしてたんだろうな
『助けられる?』
――フロイン?おまえが肩入れするなんて珍しいな。まあ、そっちは見守ろうぜ?インラジュールも風の王だ。自分の娘を、悪いようにはしねーよ。オレは、風の王を信じてるぜ?
揺るぎないリティルにいくらか不安を拭い去られながら、フロインは頷いた。