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『さぁー! BDG東日本大会、二日目も会場の熱気は高まってます! 見てください、お客さんたちのボルテージも既に最高潮へと達しようとしています!』
会場の中央ではいつもどおり立体映像の巨大バト子ちゃんが試合前の空気を程よく盛り上げていた。彼女のAIはほぼドールのものと同じだが、バトルをしない分だけこうしたコミュニケーションやマイクパフォーマンス、ダンスや歌唱能力が強化されているらしい。
『おっと、そろそろ試合開始時刻ですねっ! さて、それでは対戦チームに登場してもらいましょう! 本日最初に戦うチームはっ!』
会場の照明が落とされ、スポットライトが二つのチームを照らし出す。
『果たして見事優勝してサクラの花を咲かせれるか?! チーム・ブロッサムメイツ!』
大きな歓声と拍手に迎えられ、吹雪たちはマスターブースへと向かう。二回戦目ともなると、ほとんど無名だったブロッサムメイツにも固定ファンができてきたのか、昨日よりは応援の声が大きく聞こえる。
『対するは……変幻自在、圧倒的かわいさ可憐さ! 魔法の国からやってきた、チーム・マジカル☆ミラクル♡フェリーチェ!』
そしてバト子ちゃんが突然まばゆい光に包まれてしまったかと思うと――――
『はーい! バト子ちゃん、バトキュアモード! えー、魔法使いバトキュアはBDGのスポンサーでもあるダンバイの提供で日曜朝8:30から絶賛放映中ですよー! みんなも見てねー!』
いわゆる魔法少女チックな衣装へとチェンジしたバト子ちゃん。その周囲にはテレビアニメらしい宣伝用のポップアイコンがいくつも浮かび上がっている。
「ねぇ、いつも思うけど……私達の扱いって軽くない?」
「まぁ、四ヶ月前に結成したばかりの実績が無いチームですしね」
「大丈夫よ~、これからみんなの注目を集めればいいんだから~」
三人は既にそれぞれのドールをセットしており、マスターブースで堂々と試合開始の合図を待っている。ネット中継も合わせれば何十万人という観客の応援のなか、彼女らは不思議と落ち着くことが出来ている。
緊張や不安といった感覚はとっくに麻痺してしまったのか、それともこれまでの特訓を信じ、ドールを信じ、チームの信頼があるからなのか。
どちらにしろ、ブロッサムメイツが目指すのは優勝の二文字。こんなところで躓いていられない。
『さぁ、両チームとも準備は整いましたね?! それでは……バトルスタート!』
開始と同時に叢雲らはバトルフィールドへと降り立つ。今回は現代風の都市がメインのようだ。並び立つビル群とアスファルト。障害物が多く、先を見据えた立ち回りと巧みなチームプレイが要求される中級者向けのフィールドといってもいい。
「さて、我らがマスター様はどんな作戦でいくのかしら?」
『相手のチームは全員が徒手空拳……つまり素手の格闘が得意としています。ひとまず、待ち伏せに有利なポイントまで移動しましょう』
美空の指示でフレイスヴェルグが周囲を警戒しながら指定されたポイントへと向かう。高いビルが多いためか、さしものフレイスヴェルグもその上空からの広い視野が制限されて少し落ち着かない様子だ。
「ポイントに到着! なるほど、ここなら相手の出方が伺えますねっ!」
アルテミスは脚部のホバーを収納し、周囲をぐるりと見渡す。ビル街の真ん中にぽっかりと空いたような空間……ちょっとした催し物が開かれそうな広場のそこは、視界が悪いこのフィールドでも開けた場所で迎撃にはちょうど良い。
「……早速、反応アリ。素早い動き……アルテミス、ヴェルグちゃんのデータをリンクする」
「分っかりました! 真理、どれくらいの焼き加減でいきますか?!」
『もちろん、ウェルダンよ~!』
アルテミスの各部位へと装備されたミサイルコンテナが一斉に展開し、フレイスヴェルグから貰った位置データが入力される。それと同時にアルテミスのレーダーにも動体反応が検知され、即座にマークする。
「まずは邪魔なビルごと吹き飛ばしますっ!」
白煙を引き、無数のミサイルが発射された。アルテミスが同時に発射できるミサイル数は128発、それらが三方向へと分かれて飛翔していく。
「……これはもう、やったんじゃない? 私の出番が無いまま終わったわね」
叢雲が呆れ半分に言ったのも無理はない。ミサイルの着弾により何棟もの高層ビルが無残にも破壊され、大量のガレキが周囲に降り注いでいる。これではミサイルの爆風でやられていなくとも、飛び散るガレキによるダメージ判定で撃破されてしまってもおかしくはないだろう。
「叢雲、そういう発言はフラグが立つから禁止すると、常日頃からヴェルグちゃんは口を酸っぱくして言っている」
「あーはいはい。それで? 相手のチームはどうなったの?」
「……接近してきます!」
アルテミスが言うのが早いか、叢雲はその言葉を聞き終わる前に飛び出していった。口ではああ言っていたものの、本当に初撃で相手チームを倒せるほどこの大会のレベルは低くはないと叢雲自身も分かっている。
「そこね! 先手必勝! 十種雲形・巻雲!」
天之叢雲剣が淡く発光し、その刀身から青白いビーム弾が発射される。その光弾は大量の砂埃の向こうにいるドールへと真っ直ぐ向かうが。
「やぁっ!」
なんと、気合のパンチで弾き返されてしまった。
「まったく! いきなり街をこんなに破壊するなんて……」
「ワルドール帝国みたいに悪いやつらよ、きっと!」
「ミラクル、マジカル、懲らしめてさしあげましょう!」
白煙を突っ切って現れたのは、一言で言うならば魔法少女。
フリフリの可愛らしいドレスは防御力とちょっとオトナの雰囲気を両立させ、すらりと伸びたブーツは機動力と脚長効果を発揮する。特徴的な髪型は女の子らしさの中にも戦う意思がチラリと覗いていた。
「光り輝くニッパーは奇跡の星! ミラクルスター!」
「美しく輝くヤスリは魔法の星! マジカルスター!」
「七色に染めるエアブラシは幸福の星! フェリーチェスター!」
「「「 さぁ、あなたの罪を数えなさい!!! 」」」
「な……なんなの、こいつら……?!」
「む、叢雲さーん! 落ち着いてー! これがこのチームの特徴というか、ノリなんですよー!」
「いやでもアルテミス、魔法少女よ? 魔法少女! こんなフザけた奴ら、私がけちょんけちょんにやっつけてやるわ!」
「……長剣担いだ巫女服姿の叢雲が言える義理ではない、なんてことはヴェルグちゃんは口が裂けても言えない」
「聞こえてるわよフレイスヴェルグ!」
フレイスヴェルグへの文句をきっちり言いながらも叢雲は再度、突撃する。それに呼応するかのように相手の魔法少女ドールらが迎撃せんと駆け出した。
『叢雲、油断しないでよ!』
「分かってるっての、吹雪!」
右手に携えた長剣、天之叢雲剣の鋭い刀身が照明の光を反射する。叢雲は一瞬でミラクルスターの懐へと潜り込み一閃。そのまま勢いを殺さずにアスファルトを蹴り、後続のマジカルスター、フェリーチェスターへと白刃を煌めかせた。
「……?!」
しかし相手の隙間を走り抜けた叢雲の表情は固く険しい。明らかに手応えというものが無かったからだ。
「くっ……疾い! けど!」
振り返って見れば、ミラクルスターは両腕を交差させてすれ違いざまの斬撃を防いでいたのだった。恐らく、残りの二人も同様に防御しきったのだろう。
「ミラクル、気をつけて! なかなかやるわよ!」
「ですが、私達は悪の手先などに負けていられませんわ!」
「ちょっ?! だ、誰が悪の手先よ?!」




