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27-4

27-4


「十種雲形! 層積雲(そうせきうん)! 乱層雲(らんそううん)!」


 十種雲形・層積雲。発生させたエネルギーを刀身に纏わせ、攻撃力を上げる技だ。長時間の使用は出来ないが、その一撃は強力なものとなる。


 さらに攻撃速度を上げる乱層雲を併用させ、その剣速を倍加させる。大量のエネルギーを消費するため、いままで叢雲は後方で回復に努めていたのだ。


「まだまだ……高積雲(こうせきうん)!」


 そして、余剰エネルギーを叢雲自身にフィードバックさせて身体能力(パラメータ)を著しく向上させる高積雲も発動させる。これまでは十種雲形を同時に使うことは考えもしなかった叢雲だが、吹雪のアイデアと、新しくエネルギー効率を改善した天之叢雲剣ならばそれも可能だった。


「なっ……この輝き……それにエネルギー!」


「ふっ、私の動きについてこれるかしら?」


 叢雲はその身体能力を活かし、一瞬で光龍の両手を切り払う。あまりの速さに、傍目からは刀身を振るう動きさえよく見えない。ただ、その軌跡に沿って青く輝く光が残るばかりである。


「くっ、この!」


 負けじと光龍は反撃に出るが、今の叢雲相手には影さえ踏むことが出来ない。背中のブースターも使い、一瞬の加速に賭けるがそれすら容易く避けられてしまう。


「はぁぁぁあああ!」


 無数の太刀筋が、神速の剣が、光龍の全身を斬り裂いていく。手甲が、胸部装甲が、竜を模した兜が最後の抵抗を見せるが、叢雲の攻撃を止めるには至らない。


『いっけぇー! 叢雲!』


『光龍!』


 だが、光龍には最後の盾が残っていた。自身と、レイファングの残り少ないエネルギーを振り絞って自身の前方に集中させ、強固なシールドを展開した。叢雲の連続斬りも、このシールドを簡単に突破することは出来なかった。


「上等だわ、その盾を斬り崩す!」


 だが吹雪はこの状況も想定していた。いや、正確にはこのシールドを突破する為の作戦だ。光龍のシールドは確かに強力だが、さりとて本当に無敵ではない。攻撃力アップ、攻撃速度アップ、そして全パラメータを上昇させる十種雲形を併用することで単位時間あたりのダメージを飛躍的に増加。超高速の斬撃に光龍が対応出来ないことも含め、一気にダメージを蓄積させることでシールドを破る狙いだったのだ。


 さらにギアを一段上げたかのような猛攻、叢雲はもはや防御を捨てて全身で天之叢雲剣を振るう。そして相対する光龍は大地にその二本の脚をしっかり踏ん張り、防御に徹する構えだ。


 守りの光龍に、攻めの叢雲。どちらか一方が押し負けた時、決着は付く。


「やぁあああ!」


「はぁあああ!」


 叢雲の全身から迸る青い光が、光龍のシールドから発生する眩い光が、辺りを埋め尽くしていく。まるで……そう、世界を塗りつぶそうとするかのように。


『叢雲、もうエネルギーが……!』


「……ッ!」


 ドールの残存エネルギーを示すゲージは今にも無くなりそうだ。だが、それは相手も同じだろう。今や、光龍の放つシールドはあちこちがひび割れ出している。


「私は……私達は必ず勝つのよッ!」


 甲高い音と共に、シールドが粉々に砕け散った。


「……ちぇいやぁっ!」


 その一瞬、光龍はすかさず拳を突き出す。だが、天之叢雲剣がそれを斬り払い、大型クローが無惨にも破壊される。


「せぇいっ!」


 軸足が地面にめり込むほど踏み込み、鋭い上段蹴りが空を裂く。しかし、それも斬り薙ぎ、装甲が音もなく割れる。


 そして、叢雲は袈裟斬りに剣を振り抜く。とっくにエネルギーが無くなった天之叢雲剣はすっかり輝きを失い、柄を握る手にはほとんど力が入っていない。しかし、その太刀筋はどこまでも真っ直ぐだった。





『そこまでー! 勝者……ブロッサムメイツ!』


 大きな歓声でバト子ちゃんの勝利宣言がかき消されそうだ。立体映像が消え、真っ白なフィールドの真ん中に座り込む叢雲はやや、呆然とした表情でそれを聞いている。


「やりましたよ叢雲さんっ!」


「んげふぅ?!」


 フライングボディプレス気味に飛び込んできたアルテミスをどうにか受け止めつつ、その場でゴロゴロと転がっていく二人。


「やれやれ……辛勝だった感は否めない。ヴェルグちゃんはもっとスマートに、そして優雅に勝ちたいと思ったのであった」


「いつつ……色々あったけど、一回戦は勝てたからヨシとしましょうよ……」


 そう言いながら叢雲は倒れたまま、アルテミスの頭をなでてやった。





 * * *




「やった、勝った! 勝ちましたよ!」


「やったわね~! ぎりぎりだったけど~!」


「やりましたね。こんなバトルになるとは思いませんでしたが」


 マスターブースで思わずへたり込んでしまう三人。どうにか勝利を得ることは出来たが、今までで一番疲れたバトルなのではないか、そう思ってしまう吹雪。


「ぐあぁぁあああ! なんてこった! この私達が負けるなんて!」


「ぶちょー、落ち着けってー」


「うっ……すんません、私が不甲斐ないばっかりに……」


 向こうのマスターブースでは(エックス)ドラグーンのマスター三人が何やら騒いでいる。物凄い形相の部長がコチラを睨みつけているのを見て、美空は背筋に冷たいものが走った。


「あ、あの二人共? 何か悪い予感がするので早く控室に戻りません……?」


「ちょぉぉっと待った!」


 早々に退散しようとした矢先、ドタドタとドラグーンの部長が駆け寄ってくる。それを副部長と辰子が必死にしがみつくが、まるで重機関車かダンプカーのごとき馬力でものともしない。


「アッ! アンタがフレイスヴェルグちゃんのマスターか! あ、いやですか?!」


「ひっ! は……はい……そうですが……?」


 その強面っぷりに恐怖しか感じない美空。往年の任侠映画か何かから出てきたかのような鬼気迫る雰囲気に恐れをなし、吹雪と真理も声を出せず口をパクパクさせる始末である。


(や、やばいですよ真理センパイ! これお礼参りってやつじゃないですか?!)


(し、静かに吹雪ちゃん! 迂闊なことを言うと黒塗りの車で()()()に連れて行かれるわ!)


 すると部長は何を思ったのか、自分のスマートフォンを美空に差し出す。一体、どういう事なのか理解できずに美空は固まったままだ。


「あ! あの! アンタの! あっ、ちが! アナタのフレイスヴェルグちゃんと一緒に写真撮ってくれください!」


「……は?」


「あーほんとに申し訳ないっすけど、部長のお願い聞いてもらっていいっすかね?」


「この部長(アホ)、かわいいドールには眼がないっていうか? こうして暴走しちゃうんだわ。マジありえんしー」


 おずおずとスマートフォンを受け取る美空。何かの悪い冗談かと思いたいが……どうやら現実である。


「ふほぉっ! フ、フレイスヴェルグちゃん! あーやべーもーワタシしんでもいいー」


「うう……なんでヴェルグちゃんがこんな目に……」


 フィールドに立ったフレイス(イヤイヤながら)ヴェルグ、そのすぐ横でしゃがみ込んでだらしの無い顔でニヤけている部長。そして心を無にしてシャッターを押す美空。心做(こころな)しか、目も死んでいるような気がするのは吹雪の気の所為ではないだろう。


「ぷくく……見てみなさいアルテミス。あのフレイスヴェルグがあんな嫌そうな顔してるわ……!」


「む、叢雲さん! そんな笑っちゃ悪いですよっ!」


「……このままではヴェルグちゃんは不本意。かくなる上は……ていっ!」


「ぷくくく……って、ふぁ?!」


 バトルフィールドの端で笑っていた叢雲とアルテミスを無理矢理引っ張ってくるフレイスヴェルグ。そして意味ありげな視線、というよりもいつものジト目を別の方にも向けた。


「……あらぁ? おねーさんたちもいいのぉ?」


「この際ですし、いいんじゃないでしょうかー?」


「そうですね。ついでに空手の勧誘も……」


がうがう(姐さん)……がうがうがう(諦めましょう)?」


 手持ち無沙汰だったワイヴァーンとグレネーデ、そして光龍とどこか呆れている(?)レイファングも集まり、結局はドールだけの撮影会が始まった。


「アー……イイ……みんなかわええ……さいこうかよ……ここが天国……?」


『あ、あのー? そろそろ次の試合始めたいんですけどー?』


「……だんだんノッてきました。ヴェルグ、次はこういうポーズで。あ、ワイヴァーンさんはもう少し右、そうそう……叢雲さんは視線をこう、どこか遠くを見るように。グレネーデさん、動かないで」


 いろいろとだらしない顔になってきた部長に大会進行としてさっさと次の試合に移りたいバト子ちゃん、そして部長と自分のスマホの二刀流で撮影を始めだした美空。


「あはは……結局ぐだぐだになっちゃいましたね、真理センパイ」


「そうね~。なにはともあれ第一関門突破、よ~」





 * * *





「いやー、終盤はヒヤヒヤさせられましたけど……勝てて良かったですね」


「だーから大丈夫だって言ったデス。まー、あの格闘娘のドールの性能はちょいと予想よりも上だったデスけど」


 未だに興奮が冷めやらない観客席、生徒会長である成実直子(なるみなおこ)と先生がホッとした様子でバトルを振り返っていた。


「そういえば結局どういう事だったんですか? 互角だから大丈夫とか……」


「ああ、それデスか。なに、簡単な事デス。Xドラグーンとブロッサムメイツ、実はそれぞれドールの実力という観点ではブロッサムメイツが上回ってるってことデス」


「はぁ……? でもそれでは最初から有利に立ち回れるのでは?」


「まぁ相手も全国レベル、そう簡単に事は運ばないデスよ。というよりも、吹雪たちが勝つには今回のように各個に敵を撃破するしか無かったデスけどねー」


「先生、ちゃんと説明してくださいよ」


「えっとデスね……例えばアルテミスと戦っていたのがあの光龍だった場合、勝てたデスか? 叢雲とワイヴァーン、フレイスヴェルグとグレネーデ、それぞれが戦っていた場合、おそらく相性の差で押し負けてたと私は予想するデス」


 直子は先生の説明になるほど、と感心する。どちらのチームのドールも何かしらに特化した性能だ。こういう場合、ドール同士の相性がバトルに大きく影響するのだ。


「光龍の俊敏性と空手にアルテミスは為す術もない……空を飛ぶ相手に叢雲は苦戦するでしょうし、問答無用の爆破攻撃を前にフレイスヴェルグの分析能力も役に立たない……それにドラグーンはチームワークを駆使して戦うチームじゃない、と」


「そーいう事デス。それに一番の悪手はドラグーンのペースにハマり続ける事デス。だから、互角の勝負に持ち込むことが一番の最善手だったわけデスよ。まぁでもあいつら(吹雪たち)がそこまで見抜いて戦略を組み立てていたかは疑問デスけどねー」


「……それって、もし一歩間違ってたら……?」


「生徒会長、こういうのは勝った後で考えちゃ駄目なんデス」


 今更ながらゾッとする直子。そんなことを知ってか知らずか、バトルフィールドではドール撮影会が滅茶苦茶盛り上がっていた――――


「よーしよし、次は吹雪さんたちも入って。ほら恥ずかしがらずにどうぞ!」


「ふぇっ?! み、美空?!」


『いい加減にしてください! 次の試合が始められませんって~!』




やぁどうもどうもデス! 作者のすとらいふデス!


今週も無事に更新出来たデス! まだ評価ポイントを入れて無い方はどうかよろしくお願いするデス! 感想もお待ちしてるデスよ!

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