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『さぁ、とうとう残るは4チームとなりました! 果たして、どのチームが決勝戦へとコマを進める事が出来るのか?! これより、準決勝戦を戦うチームの紹介をさせていただきます!』
会場では、3Dホログラムのバト子ちゃんが勝ち残ったチームの主な戦績とメンバーの紹介をしている。だがしかし、吹雪らのブロッサムメイツは結成から日も浅く、この大会以外に目立った実績もないせいか軽く触れられて終了だった。
『え~以上、ブロッサムメイツでしたー! いやぁ、今後も頑張ってほしいですねー!』
「やっぱり私達のチームって……」
「吹雪さん、それ以上は駄目です」
バトルドール・ガールズ東日本大会はAブロックとBブロックに分けられており、ここまで勝ち残っているチームはブロッサムメイツ、レベヂィーノエ・オーゼロ、そしてBブロックが黒風白雨ともう1チームだ。
『えー、ブロッサムメイツが雑草魂溢れる逞しいチームとすれば、レベヂィーノエ・オーゼロの戦いはまるでワルツを踊るダンサーのよう! 計算され尽くした戦術と、優雅さすら感じさせる攻撃でこの大会を勝ち上がってきました!』
大型ディスプレイには、白いドールと黒いドール、そして灰色のドールの三人が映し出された。三人共、フリフリのドレス調をした同タイプの装甲を纏っており、その醸し出す雰囲気とあいまってどこか退廃的な趣向をも感じさせる。
すらりと伸びた手足、整い過ぎている顔立ちは西洋のアンティーク人形を彷彿とさせ、また色白の人工スキンと相まって一種不気味にすら見えた。
「あ、アレがリノアちゃん達のドールかな?」
『まずはこの子! 純白のオデット! カポエイラ仕込、蹴り技主体の近接格闘タイプ! 可愛い顔してエゲツないキックを容赦なく放ってくるぞォ!』
一回戦か二回戦の時の映像だろうか、オデットはまるでバレエダンサーを思わせる美しい跳躍からの、一転して苛烈な連続回転蹴りを繰り出す場面が映し出された。
「あれ、シューズの先にナイフが仕込まれてるわね〜。厄介な相手よ〜」
真理の指摘どおり、オデットのつま先は白く光を反射させる鋭利な突起が。下手なナイフ使いよりも素早く、そして鋭いのだろう。
『お次はこの子ー! 漆黒のオディール! 彼女はいわゆるスナイパーなのですが、その立ち振舞いは変幻自在、あらゆる地点からの射撃を得意とするトリックスターといえるでしょう!』
次に映し出されたのは、市販のアサルトライフルをベースにしたマークスマンライフルを構えるオディール。その表情はニヒヒと笑ってはいるものの、どこか冷たいものを感じさせる。
「過去の戦闘データによると、オディールはアルテミスさんのような長距離スナイパーではなく、中距離からの支援・制圧的立ち回りが得意なドールです。彼女のペースに嵌められると不味いですね」
『そして最後に紹介するのは、狩人のシュエット! えー、残念ながらシュエットちゃんの詳細なデータはワタクシ持っておりませーん!』
一応、シュエットの全体像をディスプレイに表示させてはいるものの、他の二人のようにバトルシーンは流れなかった。見た目から判断するに、長銃身のスナイパーライフルを装備しているようだが。
「……あれ? じゃああのチームはスナイパーが二人もいるってこと?」
吹雪は思わずこてんと首を傾げる。
「そのようですね。これまでの戦い方では、接近戦をオデットさんが担当し、中距離からオディールさんが支援するというのが基本となっています」
「あのシュエットちゃんが戦闘に参加するまえに倒しちゃうっていうんだから、相当な実力よね〜」
通常、BDGのチーム分担は近接タイプ、中〜遠距離タイプ、それと支援タイプなどに分けられる。
ブロッサムメイツはバランス良く、またオーソドックススタイルであると言える。しかしレベヂィーノエ・オーゼロはスナイパー役が二人もいるという、やや遠距離偏重なスタイルと評さざるを得ない。
「うーん、やっぱり準決勝までくると癖が強そうなチームばかりだねぇ」
傍から見ればブロッサムメイツも十分癖が強いのではなかろうか、そう吹雪に返そうと思った美空は、しかし敢えて口をつむぐ。
「まったく呑気なものね! そんな事より、勝つ算段はつけているの?!」
マスターブースに響く凛とした声。言うまでもなく、フィールドのエントリーデッキにいる叢雲からだ。
「むっ。はいはい、いま考えてますよーだ!」
「ちょっ、何よその態度!」
「何って作戦を考えるのはこっちの仕事だよ! 叢雲は少し静かにしててよね!」
「?!?! むきぃ〜! 誰が年がら年中騒々しいドールNo.1ですってぇ〜?!?!」
「それにさ! 叢雲はもうちょっと私にけいいってもんを持ってもいいんじゃないの?!」
「アンタみたいなへっぽこマスターに払う敬意なんてないわよ!」
マイク越しにケンカし始める吹雪と叢雲。美空は半ば呆れた顔でどう宥めようかと考えていると、今度は隣で真理が大きな声を出し始めたではないか。
「だから言ってるでしょ~! 相手はスナイパー二人もいるんだから、とにかく前に出て先に発見ないとって~!」
「何言ってるんですか真理! そんな事してたらすぐにこっちが見つかって蜂の巣にされちゃいますよ!」
「でも動かないことにはこっちが不利のままよ~!」
「いやだから慎重に動けば火力ではこっちが上回ってるんですし……!」
「……またですか……まったく懲りない人たちですね」
大きなため息がマスターブースに反響するが、吹雪も真理もそれに気付く様子は無い。
「マスター、心労を察する」
「ありがとう、ヴェルグ。さて、どうしましょうか……と、もう開始時間?」
あくまでプログラムされた人工知能にこの状況を慰められるというのは大分ヤバいのではないか、そんな思いが一瞬だが美空の頭をよぎってしまう。
そしていつの間にかバト子ちゃんによるチーム紹介は終了したようで、会場中央のバトルフィールドはセットアップが始まっている。もうすっかり見慣れた光景ではあるが、何も無い所に風景が構築されていく様は見ていて面白い。それを見てさえいれば、両隣で発生しているイザコザも気にならないというものだ。
「まぁ、バトル中にはなんとかなるでしょう……たぶん」
「マスター、現実逃避してはいけない」
「うぐっ……」
バッチリ見抜かれていた美空はまたしても大きなため息を吐いてしまった。存外、このフレイスヴェルグというドールは人間の心の機微に聡いのかもしれない。いや単に今の面倒な状況は、例えドールであっても容易に理解できる類なだけかもしれないが。
『さぁ、バトルフィールドの準備は整ったようです! それでは! BDG東日本大会、Aブロック準決勝戦……開始です!』




