ダム湖
とりあえず、必要な情報を集めるということになり、私は3人班に組み込まれて、外へと向かった。
「アニメの題材って、どんなのがいいんでしょうね」
私は同僚に聞いた。
相手は同僚と言っても班長だ。
「市に入って、アニメ作ることになるとは考えてなかったからなあ」
「砂田課長からの指示にしたがって、一つづつ考えていきましょうか。まずは、北にある湖へ」
できるだけ経費を削減しろという命令があったから、私たちは電車に乗り込んで移動することにする。
私たちが活動の本拠地としている市役所から湖までは、目の前にある通急バスへ乗り込み、柄倉電鉄へ。
そこから電車に乗り換え乗ること40分。
終着駅へたどり着くと、さらに通急バスの別路線へ乗り換えをして、今度は1時間。
お尻が痛くなるのを我慢しながら乗っていると、道々に綺麗な風景があった。
「このあたりも、いいかもですね」
デジカメで、パシャパシャと適当に風景写真を撮り続ける。
駅前の人通りが多い風景から、トンネル一つ越えるだけで、清流が流れ、田園風景が見まわす限り広がっている、いい感じの田舎と言った感じだ。
「好きなだけ撮っておけよ。それらも、参考資料になるんだからな」
「分かりましたー」
班長に言われたので、本当に好きなだけ風景を撮り続けた。
手ぶれ補正機能は偉大だ。
バスを降りると、そこは湖のそばにある駐車場だった。
「道の駅何某ね。名産物や、休憩所や、温泉もあるのよ」
もう一人の同僚の池下さんが言った。
「観光地ですね」
「1965年、ここにダムが造られて、元々あった集落のいくつかは移転を余儀なくされた。現在では、1億2千万立方メートルの貯水量を誇っている。湖の周囲には、一周できるように遊歩道やサイクリングロードが整備されており、釣り堀が2か所、ボートの貸し出し所が1か所ある」
班長が、すらすらと湖について語りだした。
「どこで覚えたんですか」
私が聞くと、スッと指を伸ばす。
「あそこにある看板を読んだだけさ」
だしかに、湖全体の図が描かれた大きな看板が、湖へ向かう道のそばに、その圧倒的な存在感を示していた。
「なんだ、すごいと思ったんですけどね」
「ここからそれらが見える目の方がすごいでしょ」
池下さんが言うと、確かに、ここから数十メートルは離れたところにある看板だ。
見えるのには、視力2.0以上は必要だろう。
「目、いいんですね」
「検査のたびに言われるから、聞きあきた」
笑いながら言っているから、怒っていないようだ。
それから私たちは、湖を2時間かけて一周し、ボートに乗り込み、釣り堀を見学し、道の駅の中を観察してから、再びバスへと乗り込んだ。
私は、道の駅で、名産品だと班長に教えてもらった煎餅を買った。
「ここの名産品でな、蒸した米を餅のようにして、それを1センチぐらいの厚さにのばした物を、一気に焼くんだ。そして、特製の醤油たれに付け、もう一度しっかりと焼く。それがこの醤油煎餅だ。ちょうどお茶受けにもいい感じだから、一度試してみればいい」
班長が、この時ばかりは、とても饒舌だった。
電鉄駅につくと、班長が思い出したかのように私たちに言った。
「そういや、このそば、温泉があるんだ。寄って行くか」
「そうですね、でも、帰り大丈夫でしょうか」
「ふむ…」
班長がすぐにスマートフォンを駆使して時間や予定を計算にいれて、電車の時間を調べる。
「泊るか」
あっさりと私たちに言った。
「泊るにしても、用意ありませんよ」
「ああ、大丈夫。貸してくれるから」
そんな軽いもので、私は心配になったが、池下さんは楽しそうにしていたから、私は何も言わずに一緒に温泉宿へ行くことになった。




