まあ、可愛らしいウサギさんですわ。
アストリッドに支えられて診察室の椅子に座ると、
カイは必死に普通を装って言ってみる。
「ひげと帽子……取ってええで……」
「はい……」
アストリッドはゆっくりと口ひげと帽子をとる。
(可愛い可愛い可愛い可愛い……)
カイの頭は噴火しそうになっている。
と、ふいに彼女が声を上げた。
「まあ、可愛らしいウサギさんですわ。」
アストリッドは、ウサギのぬいぐるみの方に目をやっている。
カイの心臓に冷や水がぶっかけられる。
(しまった……置きっぱなしやった……
アスティの化身ってバレへんよな……)
「子供の患者の方のために、置いてあるんですの?」
「あ、うん……」
カイはホッとして頷く。
「触ってもよろしくて?」
「はい、よろしくて……ございます……」
アストリッドは軽やかに寝台に行くと、嬉しそうにぬいぐるみを抱えて戻って来た。
そして、患者用の椅子に腰かけると、ギュッとぬいぐるみを抱き締めて微笑んでいる。
「自分、す、好きなん?ぬいぐるみ……」
「まあ……」
アストリッドは恥ずかしそうに頬を染めると、うつむいてぬいぐるみの目を覗き込む。
「お恥ずかしいですわ……」
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『元公爵令嬢の小さな宿屋―年下の町医者が、客でもないのに今日も会いに来ます』
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