僕専用のウサギさん
大幅に延長した診療時間もようやく終えて、カイは診療所の看板を「closed」にする。
診察室の椅子にドサリと腰をかけると、深いため息をついた。
アストリッドにもらったカップを口にしたが、中身は空っぽだ。
(今日は二階に上るのしんどいから、診察室の寝台で寝よ……)
椅子をグルグルと回しながら天井を見る。
王宮で見たアストリッドのドレス姿、
夢で見たヨハネスの手を取る姿、
髭モジャの親父として過ごす姿、
陶器市で興奮してカイの袖を引っ張る姿……
急に、カイは「ア――!!!やめや、やめや!」と叫んで、
キャスター付きの椅子でコロコロと部屋の端に行き、
布切れを取り出すとチクチクと縫い始めた。
チクチクチクチク、カイは食べることも寝ることも忘れて、縫い続けた。
「できた……僕専用のウサギさんや……」
すっかり夜も更けたころ、カイは、完成したぬいぐるみを両手で持ち上げた。
小麦色の布で作られた、たれ耳のウサギだ。
目は青いボタンが縫い付けられている。
「めっちゃ可愛くできた……」
カイは診察室の寝台に転がると、最初はソロリと、
次には思い切りギュッとぬいぐるみを抱き締め、一人で笑い出した。
「ザマぁ見ろ!ヨハネス!このリディちゃんは僕のモン……」
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