私にも、生きる力がありますもの
最終話です❀
アストリッドはもう一度、黒いウサギを見る。
キョロキョロと周りを見回すと、
カウンターの下に隠れて座り込み、そっと付け髭を外す。
よくわからないが、
やはり、あの鈍感過ぎるお医者様には、
自分の気持ちは伝わらなかったようだ。
でも……
(なんて可愛いんでしょう……
これはわたくしのウサギさんですわ。)
おずおずとウサギの頬に口づけすると、
アストリッドはギュッと抱き締めて頬ずりをした。
ふと、手にした付け髭を見る。
(でも、わたくしは宿屋の親父……
女として見てはもらえない……)
アストリッドは、潤んだ瞳でぬいぐるみを目の前に掲げた。
しかし、そっと首を横に振る。
「大丈夫、私にも、
生きる力がありますもの。」
……そのとき、チェックアウトの宿泊客が降りてきた。
アストリッドは急いで付け髭をつけ、ぬいぐるみを棚に置くと、
フンスと胸を張って客に向き直ったのだった。
……
(完)
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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