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『赤字を見る眼(バランス・アイ)』 追放鑑定士は国家の嘘を暴く ~聖剣が育てた負債の竜を、信用で倒します~  作者: 黒翼ルシオ


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第28話 半顕現

 それは、警鐘よりも先に訪れた。


 王都上空の黒雲が、音もなく裂けた。


 昼だというのに、空が暗転する。


 巨大な影が、ついに雲の奥から姿を現した。


 ――翼。


 城壁よりも大きな翼が、ゆっくりと広がる。


 赤黒い鱗。


 光を吸い込むような体表。


 胸部には、歪んだ亀裂のような紋様。


 民衆が凍りつく。


「……竜だ」


 誰かが呟いた。


 次の瞬間。


 王都中央区が揺れた。


 財務局本庁舎の塔が、根元から歪む。


 石壁に走る亀裂が、蜘蛛の巣のように広がる。


「退避! 退避しろ!」


 叫び声。


 崩落。


 財務局の一角が崩れ落ち、書庫が瓦礫に埋もれる。


 赤黒い衝撃波が走る。


 それは炎ではない。


 空間そのものが圧縮されるような歪み。


 レオハルトが剣を抜く。


「下がれ!」


 聖剣が閃く。


 光が竜へ向かう。


 命中。


 だが。


 竜の輪郭が、さらに濃くなる。


 咆哮。


 王都全体が震える。


 聖女エレノアが膝をつく。


「……重い……!」


 契約負担が一気に増す。


 アルベルトが叫ぶ。


「発動を抑えてください!」


「抑えれば被害が拡大する!」


 レオハルトの声は怒号に近い。


 だが。


 振るうほど、竜は実体化している。


 ドミニクは瓦礫の前に立ち尽くす。


 崩れた財務局。


 燃える国債書庫。


「……ついに、形を持ったか」


 彼の声は震えない。


 だが理解している。


 これは単なる魔物ではない。


 国家の歪み。


 未来を担保にした契約の、結晶。


 一方、ヴェルグ。


 右目が焼けるように熱を持つ。


 アシュレイの視界に、王都の全景が映る。


 竜が、完全な輪郭で空を覆っている。


 胸部の亀裂が赤く脈動。


 そこに、細い金色の線が何本も刺さっている。


 連盟信用証書の光。


 だが足りない。


「……半顕現」


 呟く。


「何が起きているの」


 リシェルが問いかける。


「竜が、王都に出た」


 会議室が凍る。


「どれくらい」


「もう、隠せない」


 その瞬間。


 ヴェルグ港でも空が揺れた。


 黒雲が波打つ。


 遠くから咆哮が届く。


 少年が怯える。


「来るのか?」


「ここまでは来ない」


 即答する。


 まだ距離がある。


 だが時間はない。


 王都。


 竜が翼を振るう。


 衝撃波で城壁が崩れ、中央市場が半壊する。


 悲鳴。


 逃げ惑う民。


 レオハルトが叫ぶ。


「退避誘導を優先しろ!」


 聖剣を振るう。


 光が竜の胸に当たる。


 だが今度は違った。


 金色の線が一瞬強く輝き、衝撃が弱まる。


 レオハルトが目を見開く。


「……支えている?」


 地下流通。


 連盟信用。


 王都に流れ込む小さな支え。


 完全ではない。


 だが崩壊を遅らせている。


 ドミニクが決断する。


「財務局、非常対応」


「具体策は」


 短い沈黙。


「連盟に、接触する」


 部下が息を呑む。


「敵対中です」


「敵ではないかもしれん」


 瓦礫の向こうで、竜が咆哮する。


 その胸部の亀裂が、さらに広がる。


 だが同時に。


 金色の線が増えている。


 ヴェルグ。


 アシュレイは立ち上がる。


「王都から使者が来る」


「分かるの?」


「来ざるを得ない」


 セレストが静かに言う。


「ここからが、本当の交渉」


 連盟は小さい。


 だが今、世界を支えているのはこの細い光だ。


 王都は半壊。


 竜は半顕現。


 国家は初めて、連盟を必要とする。


 嵐は頂点へ向かう。


 そして世界は、選択を迫られる。


 国家の威信か。


 未来の信用か。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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