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『赤字を見る眼(バランス・アイ)』 追放鑑定士は国家の嘘を暴く ~聖剣が育てた負債の竜を、信用で倒します~  作者: 黒翼ルシオ


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第26話 地下流通

 王国通達から十日。


 王都では、連盟信用証書の使用は正式に禁じられている。


 だが市場は、命令だけでは止まらない。


 南市街の裏路地。


 薄暗い酒場の奥で、小声の取引が交わされていた。


「これで三枚だ」

「交換率は?」

「王国通貨の九割」


「高いな」

「安定してるからな」


 卓上に置かれたのは、連盟信用証書。


 ヴェルグ監査院の刻印入り。


 監査番号と発行履歴が記されている。


「王国通貨は揺れる」

「連盟の方が堅い」


 低い声で交わされる言葉。


 禁じられているはずの紙片が、静かに流通している。


 ――地下で。


 財務局。


「裏市場での流通、拡大傾向」


 部下が報告する。


「摘発は?」


「限定的に実施。しかし……」


「しかし?」


「摘発した商会の一部が破綻」


 沈黙。


 ドミニクは目を伏せる。


 締めれば締めるほど、地下へ潜る。


 そして地下の信用は、表より強い。


「市場は、恐怖に従う」


 静かな声。


「今、何を恐れている」


 部下は答えない。


 だが分かっている。


 王都の空だ。


 黒雲は消えない。


 地盤沈下は続いている。


 聖剣の発動回数は減らない。


 一方、ヴェルグ。


 監査院は淡々と審査を続けている。


「地下流通?」


 セレストが眉を動かす。


「王都で広がっている」


 リシェルが報告する。


「我々は関与していない」


「当然」


 セレストは冷静だ。


「信用は命令では消えない」


「放置するの?」


「監査基準を厳格に維持する」


 即答。


「地下であれ、表であれ、信用の質が落ちれば終わる」


 アシュレイは頷く。


 右目に、奇妙な光景が映る。


 王都地下で、小さな光の点が生まれている。


 連盟の証書が、細い光となって広がる。


 赤黒い竜の影の下で、金色の粒が散っている。


「……支え始めている」


「何が」


「王都を」


 セレストは冷静に言う。


「なら止める理由はない」


 広場。


 商人が密かに言う。


「王都の商会から注文が来た」

「本当か?」

「証書払いでな」


 ヴェルグの市場はざわめく。


 国家が禁じても、民は動く。


 少年が問いかける。


「悪いことしてるのか?」


 アシュレイは少し考える。


「悪いことではない」


「でも禁止だろ?」


「禁止と正義は同じじゃない」


 少年は難しい顔をする。


 だが納得したように頷く。


 王都。


 勇者レオハルトが城壁に立つ。


 空はさらに低く、黒い。


 兵が囁く。


「連盟の証書が流れているそうです」


「……民は何を信じる」


 レオハルトは呟く。


「強いものか、支えるものか」


 聖女が小さく言う。


「支える方を」


 その瞬間。


 王都中央区で再び地面が裂けた。


 だが以前より規模は小さい。


 財務局職員が報告する。


「崩落範囲、前回より限定的」


 ドミニクが眉をひそめる。


「なぜだ」


 理由は誰も分からない。


 だが、地下で流通する連盟証書が、局所的な財政負荷を緩和している。


 聖剣の負担が、ほんのわずか軽減している。


 アシュレイの右目には見えている。


 王都を覆う赤黒い竜の胸部に、細い金の線が刺さっている。


 完全ではない。


 だが、抵抗している。


「……効いている」


 小さく呟く。


「何が」


「信用が」


 セレストは無言で書類を閉じる。


「ならば続けるだけ」


 地下流通は拡大する。


 国家は禁止を強める。


 だが民意は揺れ始めている。


 連盟はまだ小さい。


 だが確実に王都へ影響を与え始めた。


 赤黒い竜は、完全顕現まであと一歩。


 その胸に、細い光が刺さる。


 世界は、静かに分岐点へ向かっている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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