第18話 信用の再開
七日目の朝。
ヴェルグ港の掲示板には、新しい規約が貼り出されていた。
《連盟信用証書 新制度施行》
・発行上限:前月実収入の三割
・担保:実在庫および確定契約税収
・監査:連盟監査院による二重審査
・緊急停止条項:発動済
人々が黙って読み込んでいる。
ざわめきは小さい。
だが真剣だ。
アシュレイは一歩前に出た。
「本日より、再開します」
静寂。
「発行量は以前の半分以下です」
「少なすぎる!」
商人が叫ぶ。
「短期利益は減る」
否定しない。
「だが、暴落は起きない」
リシェルが補足する。
「監査院の審査は即日公開。誰でも確認できる」
透明性。
それが武器だ。
最初の申請が提出される。
小規模商会。
発行希望額は控えめ。
監査院――臨時に組織された三名の独立監査人が即座に審査に入る。
倉庫在庫確認。
契約書照合。
税収履歴確認。
半刻後。
「承認」
掲示板に記載される。
交換率、わずかに上昇。
右目に、細い光が一本強く輝く。
暴発しない。
揺れない。
次の申請。
今度は中規模商会。
審査に時間がかかる。
だが通る。
交換率、さらに微増。
ざわめきが変わる。
「……戻ってきた?」
「前みたいに急じゃないな」
慎重な空気。
だが恐怖は薄い。
夕刻。
交換率は安定。
流通量は以前の六割。
だが赤は広がらない。
アシュレイは静かに息を吐いた。
「……第一関門突破」
「まだ序盤よ」
リシェルは冷静だ。
「明日以降が本番」
夜。
港に停泊船が二隻増える。
少年が駆け寄る。
「増えた!」
「ああ」
「もう崩れないか?」
少し考える。
「崩れにくくなった」
正確に答える。
少年は満足げに笑う。
その瞬間。
右目が強く熱を持った。
視界が切り替わる。
――王都。
聖剣が振るわれる。
魔物の群れが吹き飛ぶ。
歓声。
だがその背後で、国債の札が燃えるように増えていく。
聖女が膝をつく。
勇者レオハルトが剣を握りしめる。
「まだ足りない」
彼の声。
そして。
負債の竜が、王都の上空で巨大な翼を広げる。
その視線が、ヴェルグへ向く。
竜の尾が、王国財政から細い赤い糸を伸ばす。
それが――連盟の光に触れようとする。
視界が戻る。
アシュレイは息を荒げていた。
「どうしたの」
「……王都が加速している」
「具体的に」
「聖剣発動が増えている」
リシェルの表情が曇る。
「期限が縮むわね」
「二か月持たないかもしれない」
連盟は安定し始めた。
だが時間は削られている。
「次はオルテナを戻す」
「自信は?」
「ある」
今度は焦らない。
制度は強くなった。
翌日、オルテナ市長へ報告書を送る。
新制度の実績。
交換率の安定推移。
監査報告。
三日後。
返答が届く。
《条件付きで再参加を検討する》
右目に、細い線が再び繋がる。
ヴェルグとオルテナ。
まだ弱い。
だが以前より硬い。
港に風が吹く。
赤は広がらない。
だが遠く。
王都の空で、竜がさらに巨大化している。
信用は、積み上がり始めた。
だが時間は、容赦なく削られていく。
連盟は再起した。
だが次は――
国家が、本気で動く。
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