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10.学院入学に向けての予習

前世でゲームをする時は、1週目は何も見ずに自力で解くのをモットーにしていたが、2週目以降はネットや本で攻略を読み込んで解いていくのが好きだった。

さしずめ、このお兄様からの情報用紙は私にとっての攻略メモだ。大事にしなければ。

さっそく情報を確認がてら、この攻略メモを読み込んでおくことにした。


「ハーディエンス学院での授業は午前に2コマ、午後に2コマ、か。日本でいう何年何組といったクラスは存在するけど、授業の選択は自由なのね。大学みたいな感じか・・・ってか、そんなとこもゲーム通りなんだ。すごいな」


『エレプリ』では、行動ポイントというものがあった。

学院では午前に2ポイント、午後に2ポイント、放課後に3ポイント所有しており、それを使って、授業を受けてパラメーターを上げたり攻略対象と交流したりするのだ。

このポイントの利用がなかなかシビア。授業を受けないとパラメーター・・・各エレメンタルの加護は上がっていかないし、定期的に攻略対象と交流しないと友好度はすぐ下がる。しかも恋愛イベントを起こすにはパラメーターの数値にプラスしてフラグ立てが必要なようで、ポイントが足りねえええええ!と、何度呻いたことか。

スマホのアプリゲームとかなら多分ポイントも課金でどうにかなったんだろうけど、あいにく私はスマホゲームはパズルものとかそういった気楽にやれるものしかやらず、どっぷり楽しみたい恋愛ゲームは据え置き機や携帯ゲーム機専門でやっていたのだ。

「まあでも、この世界ではさすがにポイントなんてないからね。好きに行動できるわけだ。楽しみ!」


・・・できるよね?ちょっと心配だけど。


ちょっと嫌な予感もするけど、大丈夫だと信じたい。

さて、気を取り直して。

エレメンタル・プリンセスを目指すには、まずはやっぱり4大精霊の加護か。攻略対象には会ってないんだから友好度は上げられないし、やっぱり勉強からだよね。

勉強と言えば、読書だ。これしかない。

剣にも魔術にも秀でていないうちみたいなごくありふれた一般貴族にとっては、学院に入学するまではそういった火や水の加護を得られる機会はほとんどない。また、そこそこの人数の使用人を抱えており、料理であれ日曜大工であれ自分で何かをするといった風の加護を得られる機会もあまりない。

なのでとりあえず後回しだ。今、手っ取り早くパラメーターを上げられるとしたら、文官の読むような本を読むことによって上がっていく土の加護しかない。

この屋敷にももちろん図書室はある。文官家ではないのにも関わらず蔵書数が多いことに驚いたが、うちの父様には実は文官家の血が流れているらしい。つい最近知ったんだけど。

確かにここしばらくずっと家族と一緒にいて、気づいていた。

父様はかなりの博識だ。領地の作物の売り上げから税金の管理、施設の整備やら何やら色々考えなければならないことはいっぱいあって、領地経営もバカじゃできない仕事だというのがわかる。

母様はどっちかといえば実践派というか、とりあえずやってみよう的精神の強い人だ。頭で色々考えるより、動いた方が早いといった感じ。

頭脳派の父様、実践派の母様という形態で領地経営はうまく回っているように見える。

だから兄様があれだけ優秀なのだな、とつくづく思う。

2人のいいとこどりな兄様の治世は、きっと今よりももっと領地が発展するだろう。


とにかく、そんな感じで読書には困らなかった。

ただ問題は、我が家の図書室にあるのは領地経営の資料的なものがほとんどだということだ。

領地予算の実績表や前年対比表、農作物の作地面積や作況調査、収穫量、出荷量、領民の戸籍というか統計資料のようなもの。

前世でよく読んでた小説では、前世知識で華麗な領地経営って話がとても面白かった。

でも残念ながら私の場合、前世知識チートは全くない。

なぜなら、経理や総務といった会社のデスクワーク的仕事が壊滅的に苦手だったからだ。

だからこそ営業施行部に配属され、毎日現場を飛び回っていた。

本は好きだったが、もっぱら小説やエッセイなどに読書傾向は偏りがちだった。


転生してからも読書は好きなのであれこれ物色はしてみたものの、そういった資料は読んでるだけで頭がぐるぐるしてしまう。

なので、辛うじて興味がある地理と歴史の本、それから子供でも読めるような簡単なお話などの読みやすいものを読んでいたところ、ほとんど読みつくしてしまった。


出来れば、魔術とか剣術とかそういう基本がわかる本があればいいんだけど。


そういえばこの世界、図書館とかあるんだっけ?フロンターレ領にはないけど、王都にはあった気がする。

むむむ、と私は頭をひねる。

学院生活がスタートすると同時にゲームも始まった関係で、市井のことはよくわからない。前世の記憶が戻る前の生活では、そもそも勉強したいだなんて思ったことなかったし。

その辺もお兄様に聞いてみるかな、と攻略メモを折りたたんで机の引き出しにきちんとしまった時のことだった。


コンコン、とノックの音がする。

「どうぞ」

返事をすると、ドアを開けて失礼します、と一礼したのはニーナだった。

「シャルリア様。シェアト様がお戻りになられました。・・・それと」

ニーナが少し言いよどんだので、なんだろう?と首をかしげる。

「ハーディエンス侯爵家のアームズ様とノルディス様もご一緒にお越しです。シェアト様が、お嬢様の都合がよろしければ一緒にお茶をと誘われていらっしゃいますが・・・いかがなさいますか?」

ハーディエンス家?ハーディエンス学院の創始家・・・つまりは今の宰相が当主の侯爵家よね・・・ああ!ノルディス・ハーディエンスか!


・・・え?

ノルディスがうちに来たってこと?

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