人助け
オレには、とある秘密がある。
それは…
それは…決して同級生にバレては、ならないのだ。
そんな秘密主義なオレが、下校途中とある女の子とおばあさんに遭遇してから、人生がでんぐり返しした。
…いや、どんでん返しになった。
いつものように、るんるんで下校していた。
なにがそんなに楽しいのかって?
そりゃ、今日は一ヶ月前から楽しみにしていた新刊が発売される二十日の水曜日だからなんです〜♡
早く早く本をゲットして、お菓子にジュースを用意して、自分接待のお時間ですよ〜ってなわけです。
あ〜、一ヶ月おつかれさまだよ〜って自分を、褒めてたたえたい。
バイトと学校、風呂入りに歯磨きに、胃袋にご飯を与え、血液にも栄養をあたえ、朝から太陽を浴びて脳みそに頑張ってますアピールして、水を飲んで…ってさ、これって全部自分のためにしかなってなくね?
そんなんで、頑張ったとかご褒美って…オレは自分にどんだけ優しいのだ?
母さんなんか、そんなことは当たり前にこなしていて、なんなら買い物や、家計のやりくりや、洗濯や食器洗いに掃除なんかもしてパートもしてるんだよな…
考えただけでパンクしそうだぞ?
それに毎日のお弁当つくりって…
これは…自分にご褒美の前に、母さんにプレゼントを買うべきだな。
ってことで、いつもと違うルートで和菓子屋さんへと向かうことにした。
和菓子屋さんにつく寸前、目の前にいたおばあさんが、手に持っていた杖をいきなりぶん投げた。
⁉︎
おばあさん…どうしたんだ⁈って、心配していたら、
「あらら…」
と、聞こえたので、たぶん杖をぶん投げたのではなく、うっかり手から杖が逃げ出したもようだ。
オレはすかさず杖を手に取り、
「大丈夫ですか?どうぞ」
と、おばあさんに杖を渡したんだけど…
⁉︎
オレは、おばあさんの杖をみてテンション爆上がりした。
こ、これはっ‼︎
ココココココココココこれってーー‼︎
ってなりましたね。
なにって…おばあさんの杖には、オレの大好きなキャラの目印アクセがぶら下がってたんよ。
こ、このキャラっ…
ああ、羨ましい。
限定のやつですやん…
って、なりましたのよ。
こんなに近くでお目にかかれるなんて、夢にも思いませんでしたと、そっと感謝しておばあさんにペコリして、和菓子屋へ入った。
和菓子屋さんでは、可愛らしい和菓子が、かわいいでしょ?と言わんばかりに、可愛らしく並んでいた。
ピンク色や若草色の和菓子は、心までほっこりとさせてくれる。
みているだけで、夢砂糖という名の布団に包まれている感覚に陥るのは、オレだけなのだろうか?
あぁ、オレは柏餅にでもなったくらいの気分た。
そもそもオレは、柏餅の葉を食べないが、食べなくても、あの葉っぱに包まれたいと思えるくらいの気持ちだ。
柏餅布団って、どこかに売っていないだろうか?
…
これから寝具やへ向かって…行くわけもなく、薄黄色の練り切り和菓子と三色の艶々お団子をお土産に持ち帰ることにした。
そして…後悔した。
重い…
ここに、新たに新メンバーの本も加わるし…
あぁ、オレはなぜ三色団子を二十本も購入してしまったのだろう。
…ついつい、お得‼︎という文字に心踊らされてしまった。
心が躍ったり、沈んだり、忙しい帰り道になった。
そして、新刊という名のワクワクブックを新たな荷物に加えたら、そりゃ一直線に帰ります。
いや、一目散に帰るんです。
一直線では帰れない‼︎ということを思い出した。
重い荷物をよっこらせしていたら、少し遠くで、どうやら女の子らしき人が道路に座っている?ようにみえた。
なぜ…あんなところで休憩?って思いながらも、道を進んでいくと…
⁉︎
どうやら、女の子はくつろいでいたわけじゃなく、転んで怪我をしていたみたいだった。
「大丈夫⁉︎」
オレが声をかけると、大丈夫なわけないと返された。
…うん。
そうだよね…足から血も出ていた。
仕方なく、女の子をおんぶして家まで送り届けることにした。
たくさんの荷物に女の子とランドセル。
オレは…オレはいったい何をしているんだろう。
筋トレ…?
あぁ、そうだよな。
筋トレをしているんだって思えばいいのさ。
「で…おうちどこ?」
と女の子に尋ねると、すぐ目の前の家を指差す女の子。
おお‼︎近くて助かったぜ‼︎と安心した。
女の子をおんぶしてすぐに、なぜかさっきのおばあさんの声が後ろから聞こえたように思えた。
幻聴…かな?って思ったその瞬間、女の子が
「あ、おばあちゃんだ」
って、足しをブンって揺らした。
「え?おばあ…ちゃん?」
振り向くと、さっきのおばあさんがいた。
「おや、由那ちゃんどうしたんだい?」
「あのね、転んでね、でね、そうなの」
…
どうなの?
って思ったけど、おばあさんには伝わったようで、
「おや、それは大変だったねぇ。」
と返していた。
「うん。そうなの」
と、会話成立。
オレは…みえているのか…いないのか…なんて乗り物屋さんみたいになっていると、つぶらなひとみのおばさんがオレをじっとみてきた。
吸い込まれるんじゃないかってくらいみてきた。
おんぶをしているから、目線がめっちゃちょうどいい…
「あ…こんな格好ですみません」
吸い込まれる前に、話しかけてみた。
「おや、あなた…先ほどの?」
「はい…そうです」
「おやー、偶然だねぇ」
「そうです…ね」
おや、がどうやら口ぐせらしい、可愛らしいおばあさんだ。
「あれ?おにいちゃんって…もしかして…」
ば、ばれた?
慌てて髪をさわさわしつつ、心がザワザワした。
「あ、ほらお家ついたよー」
慌てて話をそらした。
危なかったぜ。
まぁ、同級生にばれたわけじゃないからいいか。
すぐそこまでの家に女の子をおんぶして、傷の手当てをして、さて帰ろうとしたら、
「ただいまーー」
って声がした。
なんとも透き通るような美しいお声…なんてうっとりしていたその瞬間…オレは絶句した。
だって、現れたのは…
学年一の美少女と言われる、瑠実那さんが登場したからだ。
瑠実那さんといえば、ほとんどの男子が話したことすらない、高嶺の花の花の華てき存在。
なんなら、美しすぎて目すら合わせられないし、てか神々しいひかりを放っていて、目を直視できないくらい輝いてるという、あの瑠実那さんが⁉︎
ここ…瑠実那さんの家なのかよっ⁉︎
サラサラロングな髪の毛が、サラサラっと揺れた。
近くでみたのは、初すぎる…ってかさ、肌が白くてスルスルやん。
もうさ、白すぎてスケルトンなんじゃないかってくらい白いお肌だ。
よくみたら、血流とかみえそうじゃね⁈ってくらい透き通る肌…美しい髪…
その髪の毛を耳にかけながら、瑠実那さんが
「あ、蓮夜くん⁉︎」
と、まさかのオレの名前を呼んでくれた‼︎
しかも名前で‼︎
そもそも、オレのクラスはフレンドリーな感じで、皆が、したの名前呼びが支流なんだが、まさか…オレの名前を知っているなんて…
「えと…おじゃまして…ます。」
「あのね、由那転んでね、そうなったの」
…
「それで、そうなったのね。」
どうなって思考回路がそうなったのか知らんけど、そうなったのがわかったっぽい。
そんなこんなで、帰ろうとしたら由那ちゃんにひきとめられた。
「帰らないで。今夜は帰さない」
と、真顔で言ってきた。
…
一瞬みんな固まったけど、瑠実那さんが
「また、そんな言葉おぼえてー」
って笑ったから、皆笑った。
なんて、なごましいお時間よ。
このままずっとこの空気感に包まれたい。
しかし、そんなことを言っている場合ではない。
帰らないと…なって思ったけど…
オレの制服の裾を、ギュッと握って上目遣いでみてくる由那ちゃんみたら、かわいい‼︎帰らない‼︎ってなったよね。
もう、このままこのお宅に居ついちゃおうね。
そんなの、不可能なことだけどさ…
でも、もう少しいることにした。
続く。




