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10-8 実家で

「ああ」


 インターフォンのカメラ越しに僕を認識した父親が出てくれた。


「元気か」


 父親はそう言って僕を家に上げてくれた。しばらく会っていないのに、まるで昨日あったかのような態度だった。僕は特に問題なく元気だと伝えた。実際のところ何も問題がないわけではないが、今の状態で肉体的には元気なのが現状だ。


 もう22時だ。母親は今会社で残業をしているようで、帰ってくるのは日が明けた頃になるとのことだ。父親は明日は朝の9時からパートが入っているらしく、僕の帰宅を見送ったらもう就寝すると言っていた。父親と母親の二人暮らしだが、一応余っていた部屋を就寝用のスペースとして使わせてもらえるらしい。


 僕はなぜかここまで疲れ切ってしまっていたので、お風呂に入って歯を磨き眠りにつくことにした。


 次の日の朝。外が明るくなったか、なっていないかくらいのタイミングで目を覚ました。眠気は全くないものの、僕は何もすることがなかったので、SNSを見ながら時間を潰していた。すると数十分後父親が起きて、洗濯や朝食の準備をしていた。数時間後に母親が起きたようで、僕も起こしに来てくれた。


「朝ごはんできた!」


 僕は父親が焼いてくれたパンを食べ、コーヒーを口にした。


「元気?」


 昨日の夜父親が僕に聞いたのと同じように、母もそう僕に聞いてくれた。僕は、元気だ、と答えた。母は朝食を食べ終わると、身支度をしてすぐに会社に言ってしまった。父親もテレビを見たあと、すぐにパートに行ってしまった。僕は自分の部屋に戻り、窓の外からぼうっと考えていた。


 目の前にいるのは他でもなく自分を産んでくれた母親だ。父親も主夫として家庭に関わってくれていた。両親が生きていることをみると、自分の選択が間違いだったと後悔の念に駆られてしまう。あのタイミングではそうするしかなかったし、何回巻き戻しても同じ選択をしてしまうと思う。それでも、自分が選んだ選択に父親と母親は悲しみを受けるだろうと思う。


 腹を割って話すべきだと思うかもしれない。しかし、内容が内容であり、話しても何も納得されない可能性が高い。僕が「遺書」という形式を取ったのはそのためだった。両親にとっても、レイにとっても、周りの人たちにとっても同じだ。


 自分はそう思いながらも、他にできることもなかったと言い聞かせることしかできなかった。「あのとき良田さんを詰めておけば」と思うが、詰めていても結果は変わらなかっただろうとも思う。


 自分は現実から逃避するため、再び布団に入って眠ることにした。

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