9-7 違い
「野菜好きなの?」
本郷はそう僕に聞いていた。僕は昔から野菜を食べるのが好きだ。健康を目的というより、野菜そのものの味が好きという感じだ。
「私も昔から野菜が大好きで、食べ過ぎて怒られるタイプでしたね」
凪ちゃんもそういった。自分は野菜にドレッシングをかけずにそのまま食べることが多く、人にそれを驚かれることも珍しくない。口が染みるからというのもあるが、野菜そのものが好きだという理由もある。それは凪ちゃんも同じようだった。
「敬語で話してるのであれですけど,確かに喋っていると2人が同一人物だということも納得いく気がします」
本郷はそういった。初見であるはずにもかかわらず、彼はどうやら凪ちゃんと喋っているうちに、彼女が僕のパラレルワールドの存在だということを認識してくれたようだ。
「タメ語でいいですか?」
彼らは凪ちゃんに対してそういう確認をとっていた。彼女はタメ語でも特に問題ないと言っていた。下の名前を呼び捨てで呼ぶとややこしいということで、彼らも僕と同じように凪ちゃん呼びすることにしたようだった。
「凪ちゃんは女子にしては背が高いけど、凪は男子の中では普通だから、その辺何かあるのかな」
本郷はそう聞いていた。僕としても彼女の生活習慣を事細かに知っているわけではないので、その身長差が何に由来するのかは不明なところだ。凪ちゃんは幼少期から体を動かすのが好きだった一方、自分は運動をほとんどやってこなかったため、その辺での差異に由来するのかもしれないが、確実なことは言えないのが現状だ。
「妹は少食で普通だから、その辺の差とかあるかもしれない」
凪ちゃんはそう言っていた。本郷は彼女の発言に対して気になったようで、僕に妹がいるかを聞いていた。凪ちゃんは、こっちの世界には妹がいるが,彼(僕)の世界には妹がいないということを説明していた。
「性別以外にも微妙な違いがあるんだね」
本郷はそう相槌を打った。性別の違いでない部分に由来する違いや、あるいは自分の性別が他人に与えた違いもあるようだ。基本的には同じ世界だが、細かい人間関係レベルで同じというわけでもない。実際、凪ちゃんは本郷と大村のことを知らなかったようだ。ユニットは同じだが連絡をとっていないらしい。
「不思議だね」
大村はそういった。僕と凪ちゃんが同じような体格になったのはなぜなのか考えてみる。もしかしたら2つの世界の2人が同じような見た目になるような力学的な何かが働いているのかもしれと思う。その辺の事実は今後もわかることはないのだろうと思うと妙に不安になる。
自分は野菜を食べながらそんなことを考えていた。




