6-6 AIの現状
僕はそう言って彼にグラスを渡した。彼は慎重にグラスに口をつけた。彼は警戒していたほどのアルコール分は感じなかったようだった。一口舐めるだけで吐き気を感じるほどではなかったようだ。大村は言い出した。
「もし自分が注文して飲めなかったら飲んでくれる? お金は俺が出すから」
僕はわかった、といった。僕が無理でも本郷がバックアップしてくれるらしい。彼は人生で2回目のお酒を注文したと言っていた。届いたお酒を彼は少しずつ口にしていた。
1/3程度飲んだところで顔が赤くなったように見える。感覚的には気持ち悪くは無いらしいが、心配なほど赤い。
「心拍数が上がってるのを感じる」
彼はそういった。今この瞬間の気持ち悪さというよりは、この先に何があるのかわからない恐怖を感じたようで、彼はそこでギブアップしていた。
「大丈夫?」
僕は彼にそう聞く。彼は正常に受け答えできるようだった。
「無理すんなよ」
本郷はそういった。特段気持ち悪いわけではないようで何よりだ。
「これは僕が飲むから気にしないで」
自分はそういった。僕は運ばれてきているものを食べる。彼らはアニメの話をしているようだが、自分は全く詳しく無いので話を聞きながらお酒を飲んでいた。
「池下は何かアニメ見ないの?」
本郷は無言の自分を見て話を振ってくれた。自分はラストラベンダーを見ていた程度だ。
「どんな話だっけ」
大村はそう言った。ラストラベンダーはアイドルグループを目指す北海道の6人組の男子が7人目を探して世界を旅するギャグありの漫画だ。「セッティエーム・ラヴォンド」、つまりフランス語で7つ目のラベンダーを探す話だ。途中まで見ていたがよくわからなくなった。
「名前だけ聞いたことがあるんだよな」
大村はそう言った。本郷もそれに賛同しているようだ。高校生の頃までみていたが飽きてしまった記憶がある。ただ、なぜかエンディングテーマだけは覚えているのが現状だ。
話題に華を咲かせていると、大村は最近出たAIに話を移した。
「ChatGPTって知ってる?」
大村はそういった。確か去年の12月にでたAIで、自然言語により会話を行うことができるAIだったはずだ。自分も触ったことがあるが、妙に腑に落ちない説明が多く、すぐに辞めてしまった記憶がある。
「すぐ進化する気がするんだよね」
大村はそう付け加えた。現状のAIはまだまだ未熟でも今後恐ろしい進化を遂げる可能性があるということらしい。その可能性自体はあるだろうが、自分はまだまだ先になるだろうと思っている。
とは言いながらも、僕は未来が漠然と恐ろしくなってしまった。




