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5-3 もう1つの世界へ

 持っていたスマートフォンを確認したが圏外ではなかった。そういえば凪ちゃんにも携帯がどのような挙動を示すかと言うことは聞いていなかった。自分は改めて家に帰った。一応インターフォンを鳴らしてみる。数秒後、どうぞと女性の声がした。凪ちゃんの声だった。ドアを開けると家の前で女物の上着がかかっていた。


「どうやって来たの?」


 凪ちゃんはそう聞いた。僕は、高架線の下での時空の歪みを再発見したと伝えた。


「やっぱりそっちからこっちにも来れるんだね」


 彼女はそう言っていた。


「自分の家ならインターフォン押さずに入りそうだけど、押したのはなんで?」


 彼女にはそう聞かれた。自分は、パラレルワールドに来ている可能性が十分あると思ったからだと伝えた。


「いきなり入られても怖いでしょ?」


 彼女はなるほどと言っていた。


「聞きたいんだけど、凪ちゃんがこっちに来るとき、携帯電話ってどうなってる?」

 

 彼女は、どう言うこと?と聞き返した。僕は圏外になっていると思っていたので普通に使えたことに驚いている。彼女も圏外にはなっていないようだ。


「謎だね」


 世界には理解できないことが多すぎる。自分はそう言うものだと半分納得してしまっているが、そんな簡単でもないのだろうと思いを馳せていた。


「レイってどうしてる?」


 僕は高校の頃からレイと付き合っていたがアイドル活動を目指すと言うことで少し前に別れることになった。


「中学生の頃からアイドルやってる渡辺レイちゃんのこと?」

 

 名前で呼ぶことが多いので意識していなかったが、彼女の苗字は渡辺だ。レイの本名はカタカナ表記ではなく、玲であるが、活動名はカタカナのようだった。自分はこっちの世界でレイがどうだったか話した。


「私の方が上手く行ってる世界なのかもね」


 彼女はそういった。話を聞いている限り、本人はともかく、本人の周りがうまく行っていることは疑いようもない世界かもしれない。凪ちゃんの生活はこっちとは大差がないようだが、その周辺を取り巻く環境がこちらと違っている、と言うような衣装を受けた。


「正確な年数はわからないけど、こっちだと7年目とかかな」


 彼女はそう言った。レイに言われたことを思い出す。


「こっちではレイが僕に恋愛感情を抱いてしまったことがアイドルを諦めるきっかけになったっぽいんだよね」


 凪ちゃんにそのことを伝えてみると、そんなことは想像できないと彼女に言われた。もしかしたらもう1個の世界はレイが僕(凪ちゃん)に恋愛感情を抱かなかったからアイドルとして成功できていたのかもしれない。自分は何も悪いことをしていないとはいえ、少し申し訳なく感じてしまったと言うのも事実だ。


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