番外編1-4 カフェへ
彼が手話認識をするかは定かではないが、その手の勘違いは起きうると伝えておいた。
私はさらに伝えた。
「あとはこれも自分の勘違いだったのですが、論文を書くために研究を行うと思わない方がいいかもしれません。論文はやってきた研究を区切ってまとめてできるものであり、最初から論文にするつもりで研究を行おうと考えない方がいいですね。自分も修士論文を書くために色々実験をやっていましたが、全ての結果が論文に載っているというわけではないです」
彼はスマートフォンでメモを取っていた。
「今言ったことは真面目な話でしたが、無理に覚えようとしない方がいいかもしれないですね」
私はそう付け加えた。数分後、武蔵小杉駅に辿り着く。私たちはエスカレーターを下った先にある改札を抜けて、カフェまで辿り着いた。私が初めて凪を見つけた場所だった。今はその世界はどうなっているのだろうと考えることはある。パラレルワールドの両親は今何をしているのか、本郷や大村は今どうしているのか。本郷や大村に関してはこっちの世界ではまだ会えていない。いないということはないだろうが、こっちの世界では何をしているのか気になるところだ。
私はそんなことを考えながらカフェへと入っていった。私はコーヒーとガトーショコラを注文した。Hくんは水出しコーヒーとショートケーキを注文していた。
「最近なんかすごく甘い飲み物ありますよね」
Hくんはそういった。高校の頃付き合っていた彼女に飲ませてもらったことがあるようだが、想像以上に甘すぎたようだった。彼は別に甘いものが苦手というわけではないらしい。
「コーヒーはコーヒーで、甘いものはショートケーキみたいに別に食べたいんですよね。飲み物が甘いことを求めてないといいますか。自分基本的にコーヒーを砂糖やミルクなしで飲んでいるのですが、甘いものに甘いものを重ねると口がリセットされないので苦手ですね」
彼はそういった。言いたいことはわかる気がする。自分もコーヒーは無糖で飲むのが基本だ。
私たちは席に座って、これまでどういうことがあったのかということを話した。同じ高校なので先生の話題でも盛り上がっていた。その中で、時空のおっさん映画の話について話を振られた。
「時空のおっさん映画が池下さんの実体験が元になっていると聞いたのですが、それは事実なのでしょうか?」
私は、事実です、ということを伝えた。そして話し始める。
「そもそも映画は見られているでしょうか?」
彼は、2つとも見ました、と言っていた。私は最初から話し始めた。




