宇宙船の中の攻防2
坂倉と真は敵同士として再び会うことになった。最初のときは言葉さえ交わせなかったため、坂倉はイの一番に口を開いた。
「真、お前はなんでそこにいるんだ?」
真は坂倉の言いたいことを理解し答えた。
「俺は縁あってここに一週間いる。初めて出会ってたったの一週間だ。でもそれだけで分かったことがある。ここにいる人たちと分かり合える。たとえ種族が違ったとしてもだ。そして理解されないかもしれないが俺にとって個々の人たちは特別になった。・・・でも坂倉、お前もそうだろ?」
出会って一週間のミミさんに抱えられている坂倉は何も言えない。
真にとっても坂倉がなぜこの場にいるのか疑問のはずだ。それなのに諭すように言う。
もう真はあっち側なんだと坂倉は感じた。
「・・・もういいよな」
そう言った瞬間、郷間は真に向かって行った。いつも宇宙人殺す、殺す言っていた男。
郷間の横薙ぎの斬撃は宇宙人の事を擁護していた真に向かって行く。
ガッ!!
真は一歩踏み出し腕でそれを止めた。峰うちではない。刃の部分をだ。だというのに血が一滴も出ていない。動きも常人を超えた郷間の動きについてこれている。
郷間はさらに力を込めて真を薙ぎ払おうとした。だが、真はそれに耐えた。
睨みあう二人。
その二人の中に幸子が天井を蹴って加勢に入ろうとする。真はもう片方の手で守る体制に入ったが、しかし・・
「にいー」
「おう!」
兄は腰に差していたもう一つの刀を抜き、挟み込むようにして真の両腕を封じた。妹は息を合わせるかのように真に兜割を打とうとする。防ぎようがない攻撃だと思われたが、幸子は水の攻撃を受け、押し戻された。
「さち!」
驚く兄だったが、妹は受け身を取り平気そうだった。それよりも郷間のほうが危ない状況だった。
真が伏せた瞬間、目の前に直径二十センチの火炎玉が郷間に迫ってきていた。
「ぐアア」
郷間はそれをまともに受けて吹き飛ぶ
「ぐぐっグ、クソが!」
でもまだまだ元気そうだ。
「火力もうチョイあげて大丈夫そうだな」
「分かってると思うけど船に穴をあけるような攻撃はダメだからね」
「分かってるよ」
ユミ大尉とエンカ大尉も戦闘に加わった。
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一方こちらでは、ルイと髪飾りの女性が火花を散らしていた。
正確に言うと、ルイのお供にテル大尉とカイ大尉が一緒になって戦う。
ちょうど地球で最初に戦っていたメンツだ。あの時は短時間とはいえ、テル大尉だけで互角の戦いをしていた。
しかし今はルイの転移のサポートもあってようやく互角だった。
理由は二つ。
一つ目は場所。
地面がある地球ならカイ大尉の植物は太く根を張りフルに力を発揮できるが、船の中ではそうもいかない。太く根を張ってしまうと宇宙船内の大事な機関を傷つけてしまう恐れがあるため、薄くしか根を張れなかった。
二つ目は坂倉である。
あの時、髪飾りの女性はずっと坂倉を抱えて戦っていた。片手が使えない、重り、傷つけないように配慮、残念な事に坂倉は本当に足枷でしかなかった。
そのため今は動きが全然違う。
テル大尉が常にナイフを飛ばし攻撃していたが難なく切り伏せ、カイ大尉の植物は異常なスピードでかいくぐり攻撃してくる。ルイの転移がなければ、髪飾りの女性と戦っている三人はとうに致命傷を受けていたはずだ。
それほどにこの女性の動きは速い。
対する髪飾りの女性はイライラしていた。
あと少しで切ることができるのにいつも空振る。
あっちは遠距離攻撃ができるのに近づいたらワープで距離を取られる。
倒しようがなかった。
それでも倒す。殺す。どんな手を使ってでも・・・
髪飾りの女性はルイたちに背を向けた。
そして移動する。全速力で。
これを見たテル大尉は鼻で笑う
「ルイ様、敵が逃げていきますよ。情けない」
だがルイはそうは思わなかった。あっちの方角は・・・
「すぐにあの人の前に転移します!迎撃する準備をしてください!」
「へ?」
テルの間の抜けた返事とともにルイたちは転移した。転移した後方にはまだ非難しきっていないルイの部下がいた。
「早くここから離れてください。敵が来ます!」
まだ何も来てないというのにルイはそう言う。しかし数秒後、髪飾りの女性がものすごいスピードでこちらに向かってきた。
それを見たルイの部下は怖いものを見たかのように悲鳴を上げて腰を抜かす。
ガキン、キン、キン
テル大尉が状況を呑み込みナイフで迎撃するが軽く防がれる。カイ大尉が樹木の盾を作るもバッサリと切り捨てられる。この女性は止まらなかった。
「転移!!」
ルイはこの場にいる全員を転移させ一時退却した。
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郷間と幸子は圧倒的な物量に押されていた。切っても切っても水の人形が押し寄せてくる。
この水人形、切れば霧となってすぐ飛散していくのだが数が多い。そして補充もされる。そして厄介なのがコイツだ。この・・・宇宙人の味方をしている地上人。
水人形は別段強くない。ムリをすれば突破することもできるかもしれない。だが真がそれをさせない。
真は肉弾戦しかしないが、郷間や幸子よりもやや速く力強い。タフさに至ってはまだ底が分からない。血の一滴も出してない状況だ。自動販売機位なら一刀両断するくらいの攻撃を横っ腹に喰らわせたときは流石に殺ったと思ったがピンピンしてた。そんな真が水人形とともに前線で戦う。郷間と幸子はジリジリと後退していくしかなかった。
後方ではエンカとユミ大尉が会話をしていた。
「暇だな」
「・・・そうね」
残念な会話だった。
アチラの後方ではミミさんと坂倉が会話していた。
坂倉はまだミミさんに抱えられたまんまである。
「真ニイ・・・」
「アイツはどうやら本当に地球人のようだな」
「なんでそうなるんだ?俺は逆に宇宙人だったんじゃないかと思ったぞ。・・・こんな戦いを見たら・・・」
最初こそ真の命を心配していた坂倉だったが、郷間と幸子の劣勢を見てそんな考えはしなくなった。むしろ真に不信感を抱いていた。
「おそらく宇宙人どもに実験されたんじゃねえかな。俺らの祖先と同じように」
「実験・・・肉体改造みたいな感じか?」
「さあな。文献には抽象的なことしか書かれてなかった・・・まあアレを見て普通の地球人とは誰も思わねえよな」
坂倉は目を伏せて同意した。
「だが・・・まだまだ俺程度位にしか強くわねえな」
そう言ってミミさんは坂倉をおろした。
「郷間!幸子!」
ミミさんの呼びかけに応じ二人は中央を開ける。真とミミさんの目が合った。
「いくぜ」
そういった瞬間10メートルほど距離があった真とミミさんの距離がゼロになる。
ミミさんのダッシュした突きは真の腹をとらえていた。
「ぐゥっ」
初めて真がうめき声に近い声を上げた。しかしこれでも真が血を流すことはない。
でもそれでもいい。ミミさんの狙いはそこではない。
ミミさんは速度を殺さずに真の体を押し込む。たったそれだけで後方に待機していた水人形が、真の背中に押され次々と霧散していった。
残念な会話をしていたエンカ大尉とユミ大尉は目を見開く。
ガガガガッガ!!
真は足を踏ん張ってこの勢いを殺した。
「これ以上は・・・行かせねえ」
腹を突いている日本刀を握りしめ真は言った。
残念な会話をしていたエンカ大尉とユミ大尉はすぐ臨戦態勢に入る。それほどまでにミミさんは真を押し込んだのだ。
「ああ、そうかい。俺はここまでで十分だ」
ミミさんの後ろから幸子と郷間が姿を現す。二人は真に切りかからずユミ大尉とエンカ大尉に向かった。
「待て!」
シュッ ガァンっ!
真が一瞬気を取られてる隙にミミさんは刀を引き抜き、真の目をピンポイントで攻撃した。
「ほう、目はガードするんだねえ」
真は平手で刀を受け止めながらミミさんを睨んだ。
宇宙船の中の攻防は続く。




