イチとパート5
「・・・という理由があり地下は明るかったんです」
「おー」
林田勢の説明に一同、納得する。
「では次は・・・あなたの好きな色は何ですか?」
「わたしわねー、白が好きかなー。次の質問だけど、どうして丸い建物の中に入ると浮けるのー?」
「それは・・・」
なぜこのように質問をし合っているかというと、理由は時間だった。
cccccc
cccccc
これは少し前のやり取りである。
「宇宙に行くなんて聞いてないぞ!」
この船にギリギリ乗り合わせた坂倉は勢に文句を言う。
「そうですか。では降りてください」
この船の外は真っ暗だった。そして青くてきれいな星が見える。
「あれ見えるか!?地球!そしてここ宇宙!降りたら死ぬわ。バカたれ!!」
坂倉は興味なさそうにしている勢に大声を上げた。すると・・・
「プぐゥっ・・・」
髪飾りの女性に軽く腹パンされた。さらに「ウッサイ」と言われる。・・・ひどい。
「私、アンタのこと知らないんだけどさあ、・・・」
「ひどっ!。昨日ちゃんと自己紹介しただろ!俺の名前は坂倉おさむ。お前の頭は三歩進んで忘れるニワトリプぐゥっ・・・」
また腹パンされた。
「ちがう。アンタじゃなくてそっちの奴。わたし、なあーんかアンタの事、胡散臭いような気がするのよね」
「残念ながらこの船を操縦できるのは教授の助手である僕だけです。不満があるなら変わりましょうか?一生目的地にはつけませんが・・・」
髪飾りの女性と勢の間に不穏な空気が流れる。
おいおいおいおい。挑発する相手は選べよ。相手は宇宙人相手に互角以上の戦いを繰り広げる女だぞ。未知の生物の腹と首をスパーンと切り落とす女だぞ。この腹パンだって手加減されてなかったらハラパーンできるほどのゴリラゴリラ怪力女だぞ。
そんなことを思っていたら髪飾りの女がこちらをジロリと睨んできた。
坂倉は視線を外す。どうやらこの女、勘がいいみたいだ。
「宇宙人の所まではどれくらいで着くんだ?」
ミミさんがいいタイミングで質問してくれた。
「一週間以内には着くと思います」
「じゃあ、それまでこの船の中だけが生活スペースになるねぇ。仲良くいこうや」
そう言ってミミさんは髪飾りの女の肩を叩く。
彼女はフンっと鼻を鳴らしたがどうやら暴れだす心配はしなくてよさそうだ。
ここで幸子が明るくこんな提案をしてきた。
「じゃあー、みんなで質問大会しよー」
「質問大会?」
全員がハモッた。
「だってー、暇じゃん」
この流れがあって質問したら答える。答えた人は次の質問をする。ということになった。
ちなみに地下が明るい理由は地面に生えているあの麦のような物のおかげらしい。あの麦は人の目には見えない光を放っているが、その光は真っ白な壁や天井に反射すると明るい光となる・・との話だ。
次に球体の建物。あの中に入ると重力を無視して浮けるが実際は重力はある。球体の内側全てがものを引き寄せる力があるせいで逆に少し浮けるらしい。ちなみに壁づたいを歩いて天井に座ることもできる。方向感感覚も狂わないそうだ。
なぜ、建物が球体か?という理由は無駄なスペースを取らないためだそうだ。確かにあの球体の建物、柱や内壁がなくて中がものすごく広く感じた。あるのは支柱になっている真ん中のデカイ棒一本のみ。その支柱は地下深く埋まっているそうだ。そのため球体の形でも転がることはない。そしてその支柱をネジみたいに回転させ地下に収納するそうだ
「なんでそんなことが分かるんだ?」
と坂倉が質問したら・・・
「教授がいろいろと調べていましたので」
と言われ納得した。
長年その場所に住んでいた者さえ知らないことを答える勢。必然的に質問が集中する。
そんな勢自身はくだらない質問ばかりする。
ちなみにさっき勢が坂倉に質問したのが
「アンパンは好き?」だった。くだらない。
そんな勢の性格だ。次もどうでもいい質問をすると思っていたが違った。
「真が宇宙人と一緒にいた、というのは本当ですか?」
「・・・・本当だ。真ニイは宇宙人と一緒に現れ宇宙人と一緒に消えた。意外だな、お前は他人に興味ないと思ってた」
「真は別です。家族ですので」
含みのある言い方。
確かに勢と真ニイは赤ん坊のころに同じ時間に孤児院に捨てられてたらしい。他の孤児院の家族より愛着があるのは分かるが・・・
「俺も同じ孤児院で育ったんだけどな」
「質問。貴方如きが家族の一員だと思っていたんですか?」
質問じゃなくて挑発だろ。それは・・・
二人の間に火花が飛び交い不穏な空気になってきた。
正直、坂倉は勢ともう話したくなくなった。だから勢の質問に答えないまま、別の人に質問した。
「そういえば、お前らは最初から宇宙人のこと襲ってたけど、何かあったのか?」
勢以外なら誰でもよかったので、お前ら、という曖昧な言葉を使った。それに喰い付いたのは郷間だった。
正直この人も苦手だ。
「俺が宇宙人がどういった悪逆非道な奴らか説明しよう」
そう言って郷間は懐から巻物を取り出し床に広げて見せた。
「宇宙人は文献によると300年前に日本にやってきたそうだ。そいつらは空からやってきて幸せだった村々を侵略したんだ」
ここでミミさんが追加説明をした。
「まあ、最初から大っぴらに侵略したのは一つの村だったんだけどな」
「宇宙人どもはその村の地下に秘密の施設を作った。それが・・・」
「私たちがずーっと住んでた地下ってわけー」
今度は幸子が合いの手、というかセリフを横取りした。郷間の目元が少しピクつく
「我々の祖先は10年近く地下で宇宙人どもの実験体にさせられていたと歴史にある!さらにはその後、人を丸呑みするような怪物を使って近隣の村を蹂躙したと文献に・・」
「ちなみにその怪物っていうのがコイツよ」
髪飾りの女性が絵巻物を指さした。
坂倉は巻物を覗き込むようにしてみて見る。
そこには目の部分が真っ黒く塗りつぶされた獣?のような姿があった。口の所には小さく人の絵がある。コレが正確な絵なら、この怪物は相当デカイ。でもその怪物の背中をカミナリのようなものが穿っていた。
「これは?」
坂倉の問いに郷間が今度こそ自信満々に最後まで言う
「それは神のイカズチだ。神様がその怪物を倒してくださり、宇宙人どもは地球から逃げ去っていったのだ!」
・・・・申し訳ないが一気に胡散臭くなった。
この世に神なんているわけがない
坂倉はそう思った
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cccccccccc
あれから約一週間たった。
暇だった。
宇宙飛行士に求められる心理学的特性というものがあるらしい。協調性、適応性、情緒安定性、だがこの場にいるのは・・・
髪飾りの女性(坂倉は名前を知らないし年も知らない。おそらく少し年上)
敵なら容赦なく切る。気に入らないことがあるとすぐ殴る。弟を取り返すことに躍起になっている。協調性ゼロ、情緒不安定。
多分一番強いゴリラゴリラ女。
幸子
マイペース。でも意外と協調性はある?
教授の前だと物凄くビビって一言もしゃべらない。情緒不安定
同年代(17歳)でおっとりした女の子
ミミさん
動くときは動く。動かないときは静観する。年を食ってる44歳だからか結構落ち着いている。
・・・・うん。まあ、合格。
郷間
宇宙人ぶっ殺したいマン。文献に関しては熱く語るマン。それ以外印象に残らない。協調性ゼロ、情緒不安定、適応能力低い、と思われる。ちなみに幸子と二つ違いの兄妹。
林田 勢
年は真と同じ22歳
協調性ゼロ!
以上終わり!!
・・・・・・
ロクな奴がいない(阪倉の主観)
何でここに、人がいい桂馬(16歳)がいないのかが分からない。
(地球においてきたから)
ハア
坂倉は深いため息をついた。あの質問大会から坂倉は勢がいるコックピットの近くに一度も行ってない。たまに幸子が何かを質問しに行ったり、ミミさんが様子を見に行ったりして話し声を聞く事はあるが・・・。
そして逆にアイツもコックピットから一度もこちらに来る気配がない。操縦席しかないあんな場所で一週間も生活できるのだろうか?
そんなことを思っていたらコックピットの扉が開かれた。向こう側から開かれるのは初めての事だった。
「皆さん、宇宙人の船を観測できました」
勢の言葉に皆がコックピットに詰め寄る。一番乗りは髪飾りの女だった。
「宇宙人はどこ!?」
「アレです」
そう言って指さした方向には何もない。でも髪飾りの女は前に乗り出して目を見開いた後こう言った。
「アレか!」
坂倉の眼には映らなかったが身体能力がバケモノのこの女には何かが見えているのだろう。
その時、ミシッ!!と嫌な音が鳴り、この船が軋む。
そして、バチッ!という火花が散る音も…なった気がした。
坂倉は怖くなって辺りを見渡す。何の前触れもなく軋んだような音。不安になる。なぜ?
「敵から攻撃を受けている」
勢が答えを出してくれた。
「加速して突っ込むぞ」
勢は誰の許可も取らず、言ったことをすぐさま実行する。
その瞬間ッ、丸い豆粒のようなものが一気に大きな船になって現れる。
坂倉は頭を伏せて屈む暇もない。でもこの船の外装は特殊な素材でできている。今回も大丈夫だろう・・・と心のどこかで思っていた
しかし・・・
ガシャアアアアアン!!!!
船に衝撃が走った。