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館護戦線  作者:
館護戦線
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【レド】

空気が重い。フォドルの言葉がまだ広場に残響みたいに張り付いている。


「全員消す」というただの宣告。処刑リストを読み上げただけみたいな声。


誰もが歯を食いしばったその時、瓦礫の影でふらつきながら一人の男が歩いてくる。

ヤグだ。


脇腹を押さえてる。それでも立つ。足が震えている。傷も深く、本来ならもう動ける状態じゃない。


それでも視線だけは真っ直ぐフォドルを射抜いていた。レイズがそれに気づく。


レイズ「……おい」


ルガも振り向く。


ルガ「まだ動くんですか、あなた」


ヤグは舌打ちする。


ヤグ「うるせぇな。」


声が掠れている。でもいつものヤグの声音だ。


ヤグ「勝手に終わらせてんじゃねぇよ」


一歩歩いて足が崩れかける。その瞬間横から腕が伸びた。


また支えたのはシロクラ。


シロクラ「…ふらついてんじゃねーよ」


ヤグ「触んな、爆破馬鹿」


シロクラ「倒れられる方が迷惑なんだよ」


ぶっきらぼうに吐き捨てて手を離す。でもその一瞬でヤグの体勢は立て直された。


ヤグは前を見る。フォドル。ずっと自分を使ってきた男。


育てたふりをしてただの駒として扱ってきた男。そしてハウルの言葉が頭の奥で何度も反響する。


『俺の息子なんだよ!』


ヤグ「……は」


小さく笑う。困ったみたいに。


ヤグ「意味わかんねぇんだよ……ほんと……」


銃を握る手が震えても逃げることはない。


ゆっくりと歩き出したその先


レイズとルガがすでにフォドルを睨んで立っていた。二人の隣にぽっかり空いたわずかなスペース。


まるで、最初からそこに立つ人物が決まってたみたいに。ヤグは足を止めて一瞬だけ迷う。


でもレイズが前を向いたまま言う。


レイズ「遅ぇよ」


ヤグ「…は?」


レイズ「来るならさっさと来い」


ルガも小さく息を吐く。


ルガ「三方向の方が効率がいいです。…戦術的判断です。勘違いしないでください」


ルガは完全にツン。でも場所は空けている。ヤグは数秒黙って、それから鼻で笑った。


ヤグ「…ほんっと、気持ち悪ぃ兄弟だな」


レイズ「誰が兄弟だー?」


ヤグ「うるせぇよ」


文句を言いながら、ヤグはその隙間に並んだ。レイズの左、ルガの右。


三人は横に並ぶ。身長も立ち方もどこか似ている。


血の繋がりなんて知らなかったはずなのに、並んだ姿はどう見ても兄弟だった。


ヤグは銃を構える。指が引き金にかかる。視線はフォドルから逸らさない。


ヤグ「……命令じゃねぇ」


低い声。


ヤグ「これは俺の意思だ」


レイズが拳を鳴らし、ルガが構える。三人同時に重心を落とす。フォドルの目が初めてわずかに細まった。


フォドル「……ほう」


ほんの僅か。評価するように。


フォドル「並ぶか…家族ごっこか?」


ヤグが吐き捨てる。


ヤグ「……違ぇよ」


レイズ「え?」


ルガ「そんな綺麗なもんじゃないですね」


レイズ「え?」


弟2人が同時に


「「なんだよ」」


レイズ「家族ではあるだろ?」


「「……あぁ」」


また2人同時に。


ヤグ「ま、ぶっ倒すだけだ。クソ司令官」


次の瞬間には同時突撃。

三兄弟、初めての共闘だった。


フォドルを睨んだまま、三人は並び立っていた。


レイズは姿勢を低く、ルガは拳を構え、ヤグは銃を下げたままじっと前を見ている。


血と埃の匂いが混ざった生ぬるい風が吹いた



その中で、ヤグの指がゆっくりと自分の頭に触れた。


黒く硬い帽子。狩の証であり、フォドル直属の部隊であることを示すあの帽子。


ずっと被ってきた。


命令されて、戦って、殺めて。「ヤグ」として生きてきた証。


ヤグはそれを強く掴んだ


レイズ「……?」


ルガ「……何を……」


次の瞬間、帽子を放った。投げられた帽子は宙を舞い、床に落ちて転がる。


もう誰の物でもないみたいだった。フォドルの視線が細まる。


フォドル「……ヤグ」


その呼び方にヤグは初めて露骨に顔をしかめた。そしてゆっくりと吐き捨てる。





レド「俺はもうヤグとは名乗らねぇ。」





空気が止まった。ハウルの肩がびくっと揺れる。


ハウル「っ、!」


ずっと探してた名前。何度も夢に見た、失った三男の名前。


レド「…まだ納得しきれてねぇが」


低い声には迷いも苛立ちも全部混ざってる。


レド「急に“息子です”とか“家族です”とか言われても、正直意味わかんねぇ」


レイズがちらっと横目で見る。ルガも黙って聞いている。


レド「でも……」


フォドルを見れば、冷たい目で、駒を見る目で…ずっと向けられてきた変わらない目でこちらを見ている。


レド「…あっちより」


少しだけ視線が揺れ、ハウルの方を見る。


血まみれで、ボロボロで、それでも必死な顔でこっち見てる男。


あんな顔、フォドルは一度もしたことなかった。


レド「……こっちの方が……マシな気がした」


不器用すぎる言い方。家族とか、信じるとか、守るとか


そんな綺麗な言葉は使えない。


でも、それがレドの本音だった。ハウルの喉が鳴る。


ハウル「……レド……」


震えてるその声は泣きそうなのを必死に堪えている。

レドは舌打ちして


レド「その呼び方、まだ慣れねぇからやめろ」


ハウル「……っ」


レド「終わったら考える」


銃を構える。まっすぐフォドルへ。


レド「今は_あいつをぶっ潰すだけだ」


レイズがニヤッと笑う。


レイズ「上等」


ルガが静かに頷く。


ルガ「戦力としては十分です」


同じ目で三人同時に構える。フォドルが小さく息を吐いた。


フォドル「……くだらん。名前を変えた程度で何が変わる」


レドが吐き捨てる。


レド「全部だよ。クソ司令官」


吐き捨てた後1歩前へ出る。

「ヤグ」じゃない。「レド」としての、最初の一歩だった。



「ヤグ」はフォドルがつけた名前でした。だからこそ今回、ヤグは名前と帽子を捨てました


家族の隣に立ち、レドとして向き合います

ほんの少しの三兄弟の会話が好きです

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