湯狭到着
「で、これからどうする?」
ボク達は湯狭に到着。その直後に夕音襲撃を聞いた。
「どうするって」
酷かもしれない事だが、一刻を争う事態だという事ぐらい分かっているだろう。
「しばらくは状況を見ましょう」
歩き出す由宇。
冷静さを装っていても動揺しいるのはよく分かる。
「いいの? 行くなら付き合うけど」
「いえ……史紀さん一人なら大丈夫だろうけど。僕がいたら」
ふむ。一理ある。
「写真とかある? ボクが行って探してきてあげるよ」
ふるふると横に振る由宇。
「とりあえず……警察とかに行って非難した人達の事聞きに行こうか」
由宇の手を引いて行く。
警察に到着。
避難民と警察官で身動きが取れない。
本来なら行かないのだが、今はそんな事言ってる場合じゃない。
人込みをかき分けて、汗だくになって玄関に到着した。
「ふぅ、まったく」
通り抜けてきた後ろを振り返る。
「史紀さん」
袖を引っ張る由宇と一緒に中に入る。
「由宇っ!」
入った途端に名前を呼ばれる。
「おばさん!!」
奇跡?
騒がしいと言ってはなんだが、警察署から静かな公園に移動しこれまでの事情を説明し終わり、今後のことに話が移行する前に、
「じゃ、ボクはこれで」
「あ、史紀さん」
「なんですか?」
親戚の方が声を掛けてくれる。
「貴女も一人なんでしょ、だったら」
「いえ、ご好意は嬉しいのですが」
頭を下げて断って、背を向ける。
「ありがとうございました」
由宇の声を背中に聞いて公園を出る。
さて、これからどうしようか。
とりあえず街を歩く。物騒な奴等があちこちにいる。
「おい、夕音守備隊が来たらしいぞっ!」
夕音守備隊か。
ボクと同じ事を聞いた市民達が走っていく。
その流れに逆らうのも面倒だし、暇だから見に行こうかな。
街の入り口まで歩いていくと、案の定かなりの野次馬が取り囲んでいた。
「何、何」
後ろの方でぴょんぴょん飛び跳ねてる。
ちっとも見えない。くそ。
「ちょっと……退い……て」
野次馬共の間を強引に割って入る。
苦しいがその先にある光景への興味だけがボクを突き動かす。
これで大した事なかったらどうしようか……。
否! この先にはとてつもない事が起こっているのだ!
人垣で挟まれ揉まれ、挫ける心を奮い立たせてその先に見た光景は、
「うわっ」
警察や軍らしき人達が忙しく動き回り、その先にはぼろぼろの車が三台。
傷だらけの人が手当されたり担架で運ばれたりしている中、一人の女と目が合った。