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En-gi  作者: 奇文屋
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「周囲5キロの哨戒を重点において……」

 湯狭守備隊の会議を聞きながら、夕方に見た少女の事を思う。

何者かは分からないし、どこにでも居る様な少女。

なのにはっきりと覚えている。

 状況確認と哨戒順を確認してこの日は解散した。


 宿舎に戻っても彼女の事が頭から離れない。

ベッドに仰向けになり天井を眺めると、夕方の雑踏の中、彼女が居る光景が蘇る。

 どうしたんだ?

自分を軽く笑い、上半身を起こす。

考えててもしょうがない。

上着を羽織って宿舎を出る。



 日も暮れて、ホテルを探してうろうろと歩き続ける。

歩き疲れた訳ではないが、由宇達と別れた公園で一息つく。

しなきゃいけないのは、才蔵を見つけてボコボコにする事、それから蒼空乃極の奪回。

その前に今夜の寝床を見つける。

後は、稽古もしたい。おなかも若干空いてきた。

 ……夕暮れは色々と考えさせてくれる。

落ち込みそうになる心。

パァン、と頬を叩いて奮い立たせて立ち上がる。

「よし。行こう!!」

 手を高く突き上げて、遠巻きにボクを見ている奴等を睨みつけて公園を出る。


 夕音の事後処理を手配してようやく食事にありついたと思ったら、

「失礼します」

 箸を持ったまま、入ってきた兵を見る。

「麻路隊が帰還しました」

 まったく、間の悪い。

空腹を抱えたまま、兵の後について行く。


 月が輝く空の下、帰還したのは二台の傷ついた車のみ。

「あれ、麻呂はどうした?」

 居るべき指揮官が居ない。

「隊長は」

 帰還した兵が言いにくそうに、

「戦死……されました」

 自分の耳を疑った。

麻呂が、戦死……?

嘘だろ? 功を焦ったか、それとも相手を見くびったか。

どちらにしても、帰還した兵達の様子から戦死という事は間違いなさそうだ。

 本来ならこの場で抜け駆けの事を詰問するべきなのだろうが、兵達の様子を見ると躊躇してしまう。

「そうか、諸君等には色々と聞きたいことがある。明朝、私の所に来る様に」

 甘い判断だと、笑われそうだな。

空に輝く月を見上げて、遠く離れた盟友の顔を思い浮かべる。




 とりあえず、近くのホテルに寝床を決めて、荷物と食事を終えて、一休み。

しばらくはテレビを見たりしていたが、飽きてしまい、散歩に出る。

 綺麗な月が輝く夜空のしたには人影は殆ど無い。

もったいないな。こんな良い夜なのに。

たまにすれ違う人は武装している。

そいつ等は決まって、じろじろとボクを見る。

ボクの容姿に見惚れている訳じゃなく、明らかに警戒している。

 まったく、どいつもこいつも……。

ため息をついて、街を歩く。

ボクが盗賊なんかに見えるのか?

 タイミングよく大きなガラスに映ったボクを見る。

……いつも通りのボクだ。



 記憶を頼りに彼女を探す。

街を巡回している兵達に、探している少女を見てないか尋ねながら進む。

「あ、そういう格好の女の子なら……」

 一人が見たとの事なので、急いで向かう。


 居た!

 道を隔てた向こう側に大きなガラスを覗き込む様にポーズを取っている。

「おーい!」

 考えるより先に声を掛けていた。

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