49 北の国へ 11
靴が出来たよ。ヴァイスのは空色の編み上げ靴。あたしのは真っ赤にゃ編み上げ靴。ズィルバーのは真っ黒にゃ靴だったよ。ロートのはもちろん青。結局ロートも靴を新調したんだ。みんにゃぴかぴかの靴を履いて次のまちに出発だよ。
食料はたっぷり。服も靴もぴっかぴかだよ。これから寒くにゃるって言うので,あたし達はマントも買ってもらった。ヴァイスのは空色の。あたしのは真っ赤にゃんだよ。
マントの中は,蜥蜴型獣人のマントと同じで,暑さ寒さを調節出来る機能付きだって。ロートもズィルバーもマントを出して羽織る。雨もある程度はじいてくれるマントもかっこいい。あたしもヴァイスもご機嫌だよ。
魔道具屋さんにも行ったよ。魔力を込めた石とか,あの虹色の玉とか・・・いろいろ見たけど,今回はにゃにも買ってもらえにゃかった。がっくり。
虹色の玉を買ったつもり・・・花瓶代だ・・・ズィルバーがにゃんか言ってる・・・
もうグーテお姉さんと,お父さんは前の日に蛇型獣人の温泉に出発していたので,見送りはヒューゲお兄さんと宿屋の女将さんだけだった。
このまちには温泉はいらないのかにゃ?女将さんに聞いたら,欲しいけど,まちの顔役さん達が,温泉探しを依頼したくにゃいらしい。ロートが言うには,この辺りは温泉の気配がしにゃいそうだから,ちょうどいいね。
次のまちまで10日くらいかかるって。遠いね。だんだん寒くにゃると,冬ごもりの支度をするベアベアっていう生き物が出てくるんだって。ベアベアはちょっと怖い生き物で,魔物って言うんだって。どんにゃ生き物にゃのかにゃあ。
歩きにゃがらまたお利口ににゃっていくよ。
魔物って,北の国に多いんだって。ベアベアの他にも,テガテガ,レオレオ,カイサルピングウインってのがいるらしい。みんにゃ小さい小獣を食べちゃうんだって。怖いね,ヴァイス。え?
「ボクハ リュウニ ナッチャエバ ヘイキダヨ。」
確かに。え~!!じゃあ,あたしだけが危にゃいの~!!
でも,あたしも10歳ににゃって前より少し大きくにゃったよ。そう簡単には狙われにゃいぞぉ・・・
辺りはだんだん黄色や赤に変わって,それもだんだん茶色になってきているよ。
そろそろ葉っぱも散り始めるよって教えてもらったよ。
歩き始めて6日目の午後。雨がまた降ってきたよ。今回は,近くにまちがないところにゃので,とりあえず,テントを急いで張ったよ。車は?いらにゃいって・・・あ・そ・
ぴしゃぴしゃと降る雨はにゃんとにゃくいつもより冷たいよ。ヴァイスは雨が大好きにゃので,へっちゃらで飛び回って,木の実とか葉っぱとか集めてきたよ。
葉っぱはしめっていたので,お得意の「けわか」。ふかふかのふとんだ~い!え?これに火を付けるの?煙が多くにゃっちゃうよ。え?外でいぶすの?
ヴァイスに集めてもらった葉っぱは,魔物よけの葉っぱにゃんだって。テントの周りで一晩中いぶすことによって, 魔物が寄りつかにゃくにゃるんだそうだよ。へぇ。え? 山嵐型獣人さんのまちを出てから毎晩炊いてたの?気がつかにゃかったよ・・・・
雨が降っているから,雨が当たらにゃいようにしにゃくちゃいけない。あたしはちょっと考えた。
「にうよるでがりむけでまさあ」
唱えたら,テントの中でけむり出しちゃった。やば・・・げほんげほん・・・ズィルバーが,
「ミャアコ!!」
って怒鳴るから,慌てて
「よだでとそ」
一瞬のうちに外に葉っぱは外に出て煙り始めたよ。ふう。
夕飯は,酸っぱい黒いブロートと,山羊のヴルスト,ヴァイスが取ってきたアプだったよ。テントの中だと火が使えにゃいから仕方にゃいよね。
雨はしとしと降り続けている。遠くでにゃにかの吠える声がするよ。
「あの声は,テガテガだね。」
「ええ?こっちに来るの?」
ロートはしばらく気配を読んでいたみたいに目をつむっていたけど,
「煙がいぶっている限り,ここには来ないね。」
って言ったよ。
「明日の朝だな。問題は。」
ズィルバーが言った。
「にゃんで?「ナンデ?」」
「聞きたいか~?」
ズィルバーは声を潜めてあたし達にこそっとささやいた。
「・・・・・朝方・・・煙が消える・・・
・・・朝方ねぐらに帰ろうとしている魔物が,
・・・ふ・・ふ・・ふ・・・ミャアコとヴァイスの匂いをかぎつける
・・・・襲う・・・がお~」
「「 キャ~」」
ドタドタドタ・・
「ズィルバー!」
「「やあいロートに怒られてやんのぉ」」
賑やかに夜は更ける。雨はぴしゃぴしゃぱしゃぱしゃ・・・・・・・・・
敏感なあたし達の耳も働かない寒い雨の夜。
・・・でもねぇ・・・突然だけどねえ・・・・雨の中,一番困るのはトイレにゃんだよねぇ。
雨の中のトイレ・・・あたしが編み出した方法を教えちゃう。
「れははえうのしたあ」
唱えてからトイレ。ふふん。雨は当たらにゃ~い。
すっきりして戻ってきたあたしを見て,ズィルバーが言ったよ。
「おまえ,その魔法俺たち全員の上に掛けろよ。そうしたら旅を続けるのも楽だろ。」
「おお。そっか。気が付かにゃかった。」
翌朝のテントは雨でたわんでいて,触ると水が垂れてくるくらいびしょびしょで水も溜まっていたよ。でもお得意の「けわか」で解決。
ロートはたたみやすいと喜んでいたよ。
で。今は
「れははえうのちたしたあ」
みんにゃ濡れないで快適に旅・・・
難点は,あたしが疲れて眠くにゃると突然バシャバシャ~って雨が当たり出すことかにゃ。最初の頃は油断していたみんにゃはびしょびしょににゃっちゃって・・・あはは。あたし眠っちゃったから分からにゃかったけど,たいへんだったみたい。
にゃんでかにゃあ。眠っちゃうにゃんて。
そしたらロートが,
「魔力切れですよ。」
って教えてくれた。そんにゃのあるんだ。へえ。
どうもあたしは2時くらいこの魔法を使っていると魔力切れってのを起こすらしい。
「使えねえ。」
え~使えるよぉ。
魔力切れは魔力が上がるとだんだん少にゃくにゃるそうだ。
「訓練だな。」
「そうだね。」
二人が言う。
たしかにそうだよね。
いざというとき眠っちゃったら面白いとこ見逃すし。
え?
そういう問題じゃにゃいって?
そういう問題です。きりっ
雨も上がって,魔物にも会わず,あと1日歩けば次のまちって言うときににゃって・・・
・・・・
「走れ!」
今,また追いかけられて走っています・・・うわ~!!
にゃんでかにゃ~いつも逃げてるけど・・・
「ヴァイス!!」
ズィルバーが叫ぶ。
「ハ~イ」
ヴァイスはりゅうに変わり,
「ミャアコチャン!!」
あたしはその背に飛び乗った。
「しばらく離れてろ!!」
ヴァイスはさっさと山を下りる。麓はもうすぐそこだ。あたしを崖の上の大きな木の上に下ろすと,
「ボクミテクル」
ええ~あたしは置いてきぼり~??
大きなベアベアがあたし達を襲ってきた。そんにゃ夕方・・・
あたしは一人,崖の上にぽつんと生えている大きな木の上に取り残されていた。
辺りはだんだん暗くにゃる・・・誰もいにゃい。木の上は寒い。
マントにしっかりくるまって,あたしは三人が来るのを待っている。
あの三人はどうもあたしに隠しておきたいことがあると,こうやって見せにゃいようにしているってことにやっと気が付いたよ。
それと一緒に,危にゃいことにあわせにゃいように,変なことは見せにゃいようにって思ってるらしいことにもやっと気が付いたよ。
魚とりには連れて行ってくれるのに,狩りには連れて行ってくれにゃいし・・・ヴァイスは連れて行くのににゃあ。ヴァイスの方が小さいんだぞ・・・ぐすん。
あたしはどうも泣いているみたい。涙と鼻水が出てきたよ。
猫はネズミをとるんだよって,ご主人様が言ってたのを思い出したよ。狩りが出来にゃきゃ一人前の猫じゃにゃい。次は絶対狩りにも連れて行ってもらうし・・・多分今はベアベアをやっつけようとしているんだろうけど,その場所であたしも手伝いたいよ。のけ者は嫌だああああ・・・・
あたしは大声で泣いていたらしい。
下から
「おおい」
「だれだ?」
「どうしたあ」
って沢山の声を掛けられてることに全然気づかなかった。
今回は迷子ではないものの,ひとりぼっちでみんにゃからはにゃれてしまったんだ。どうにゃるのかにゃあ。
下で呼んでるのはまさか誘拐犯?ちょっと怖いよぉ~