48 北の国へ 10
あたしの誕生日は宿屋で祝ってもらったよ。
美味しそうな,初めて見る蒸したパンってのが出たよ。
焼いてるのはよく食べたけど,蒸しパンってのは初めて。中に甘い干した果物が何個も入っている。そして何より柔らかくてふかふかしているよ。
「コレ オイシイ フカフカダ~」
ヴァイスも大喜びだよ。
ズィルバーも初めてらしく,盛んにどうやって作るんだろうって聞いてた。ズィルバーのご飯献立に入れればいいのににゃ。
「俺に期待する目を向けても無駄だぞ。」
おや。
それから,猪豚ではないお肉も食べたよ。この辺で獲れるって言う兎鶏って言う珍しい動物らしいよ。へぇ・・・。これも柔らかくて,口の中でとろけちゃった。
北の国へ行くと,これから冬ににゃるから,干したお肉や野菜,塩漬けにしたお肉や野菜が食事のメインににゃるんだって・・・(急に行きたくにゃくにゃってきたんだけど。)
「・・・だから,ここで美味しい物を一杯食べておきなさい。」
食い溜めってできるのかにゃあ・・・
甘くて美味しい赤いザフトって飲み物。もう最高。
あたしもヴァイスも,飲み物を何杯もおかわりし,お腹がぱんぱんににゃるまで出てきた食べ物を食べちゃった。苦しいよ。
「そこらでやめなさい」
ってロートが止めてたけど・・・とまりませ~ん。
そしたらさ・・・
最後にこの辺の山嵐型獣人達の習慣だとかで,ここの女将さんがお姉さんと一緒に「お誕生日用「クーヘン」ってのを運んできてくれたんだよ。白い何かがかかったそれは,凄く甘くていい香りがしていたよ。
「モウタベラレナイ・・・」
ヴァイスが泣きそうな声で言ったけど・・・あたしは食べるよ。にゃんてったってあたしのお誕生日のために特別に焼いてくれたんだって言うんだもん。
そしたら,ロートが
「今日はもう食べない方がいい。」
って言うんだ。
「お腹を壊しちゃうよ。」
ロートぉ・・・
「クーヘンは明日の朝ね。」
お姉さん達がクーヘンをしまっちゃったよ・・・あ~あ。
ロートがいっぱい食べておけって言ったんじゃにゃいの~
・・・その夜あたしとヴァイスはお手水の住人ににゃった。二人して交代で通ったよ。あ~あ。ズィルバーにきっちりしかられちゃったし。明日のクーヘン・・・食べさせてもらえるかにゃあ。
・・・・・
食べさせてもらえましたぁ。
うふふん。ヴァイスの細長いしっぽがくるくる回ってるよ。
あたしのしっぽも揺れてる。ズィルバーのふさふさしっぽも,あれあれ。珍しい。ロートのしっぽもうれしそうだよ。
甘い白い物は,このまちで飼ってる山羊って言う動物のお乳を使って出来てるんだって。山羊って初めて聞く名前だけど,どんにゃ生き物にゃのかにゃあ。
朝ご飯の後,みんにゃで山羊を飼っているってところに行くことににゃったよ。にゃんでもそこで,山羊のお乳を使って作っているって言う保存食を買うためにゃんだって。これから北の国だから,万全の支度をしておかにゃきゃにゃってロートもズィルバーも言うんだ。
あたし達は寒いの苦手にゃのに・・・大丈夫にゃのかにゃ。ヴァイス?ヴァイスは水と氷の魔法を使えるくらいだもん。寒いのにゃんか平気だよね?え?苦手?にゃんでぇ~?
女将さんとお姉さんに場所を聞いた後,お弁当を受け取ってあたし達はまち外れにあるって言う山羊牧場に出かけたよ。
まちの中は賑わってる。あ・・あのお店・・あたしがふらふら吸い寄せられそうににゃったのは魔道具のお店らしかった。だって虹色のきらきら光るあの玉と同じ物がぶら下がってるよ。あたしは襟首をぐいって捕まれて我に返ったよ。ズィルバー。この場合はありがとうにゃのかにゃ。
「魔道具やさんには後で寄りましょう。」
ってロートが言うからしかたにゃい。
まちを出て,ちょっと歩いたところに広々した原っぱがあった。
わぁい。あたしとヴァイスは走り出した。広いよ広い。思う存分走れちゃう~
「ウワッ」
ん?ヴァイスどうしたの?
・・・・・・こ・・・これは・・
近くに川はないかにゃ~?
「ロートぉ!」
ロートとズィルバーがやってきた。
転んでいるヴァイスを見て,鼻までつまんでる。ちょっとひどくにゃい?
え?おまえもつまんでるって。はは・・・
・・・ヴァイスはでっかい落とし物の上に転んでいた。
「あ~。これは多分山羊の落とし物だね。」
「まだあったかそうだな。・・・」
無駄な解説ありがとう。
ヴァイスは起き上がってあたし達の方に向かってくる。やばい・・・
「ミャアコちゃん。きれいにしてあげなさい。」
ロートはさっとよけにゃがらあたしに言うんだ。
あぁあたしには魔法があった。
あたしは「イレキ」って唱えたらドシャって・・・水が大量に降ってきたよ。ヴァイスの上にだけ。
しぶきがあたし達の方にも飛んでくる。うえ~
「ヒドイヨ ミャアコチャン」
そこに山嵐型獣人がやってきたよ。
「そこの獣人達,足下に注意しなせぇや。時々落とし物があるからなぁ。」
注意するのが遅いです。
ここが山羊牧場らしい。
落とし物は肥料にも使う貴重な物にゃんだって。水で流しちゃってごめんにゃさい。
・・・あ。わすれていた。慌てて杖を振る。一応使って見せにゃいとね。
「りおどとも・いおに・いれき」
「マダビショビショダヨ~」
分かってるって。
「けわか」
ヴァイスはようやくきれいににゃったよ
あたしの魔法は,ちゃんと杖を使って呪文を唱えるのと,杖があっても適当呪文で出来ちゃうのと,杖なしでちゃんと唱えるのと,適当に唱えるのと4種類あるね。どれもちゃんと発動するよ。・・・これも不思議だよねぇ。蜥蜴型獣人には,適当呪文のことは内緒にしていたけど・・・ヴァイスは知ってるみたいだし。ズィルバーは変だって思ってるみたい・・・ロートはどうにゃのかなあ・・・・あたしの魔法って変にゃのかにゃあ・・・
でも,杖があった方がきちんと感があるよね。
うん。杖を使ってまともな呪文を・・・でも・・・あんまり覚えてにゃいんだよねえ・・・ま。いっか。
まだちょっとにおうような気がする,プリプリ怒ってるヴァイスを連れて山嵐型獣人の後について行くよ。この山嵐型獣人は,ここの牧場のご主人だったんだ。
山羊は白かったり,茶色かったり,黒と白のまだらだったり,いろんな色のがいたよ。角もあった。へぇ。くるんと丸まったように見える角だよ。不思議。
その山羊はあちこちに座ってもぐもぐしていたよ。
何をもぐもぐしてるんだろう?!
不思議に思ったんで聞いてみたよ。
「山羊は何食べてるんですかぁ?」
山嵐型獣人は,がっはっはと笑って,
「さっき食べた草をもう一度かみ直してるのさ。」
?
「反芻って言うんだよ。ミャアコちゃん。」
物知りだね。ロート。
「あたし達も反芻出来るの?」
出来たら最高だよ。あの美味しいお誕生日クーヘンをもう一度お口の中に・・・。
「猫型獣人にはできないなぁ。」
ロートが笑いにゃがら言うんだ。何を考えていたか分かったらしい。
残念。
しばらく歩いたところにあった 山嵐型獣人の家は,不思議な形をしていた。丸くて四角い。丸いところは,ズィロって言うらしい。冬の間の山羊のえさを溜めとくところらしい。よく見たら,ズィロは3つ建っていた。
四角いところは山羊のお家だって。大きいにゃあ。
ここには500頭の山羊を飼っているんだって。へぇ・・・
あれ?じゃあ 山嵐型獣人の家は?
ちゃんとありましたぁ。小屋とズィロの向こうに,結構大きい家が。
山嵐型獣人の家族と,他にも,5組の家族が住んでいて,みんにゃで一緒に働いているんだよって教えてもらった。へぇ。子どもも沢山いるらしい。後で遊べるといいにゃあ。
さて,そのお家でお乳で作ったいろいろな物を味見させてもらったよ。ついでに,ヴルストっていう細かくした山羊のお肉にいろいろな物を混ぜて腸に詰めてゆでたっていうお肉を味見させてもらったよ。激うまだよ~
「これは,焼いてもまたうまいんですわ。」
製品開発しているって言うその山嵐型獣人は,
「旅ならいぶしてちょっと日持ち良くなってるコレがおすすめですよ」
って言ってちょっと茶色いヴルストを出してくれたよ。
見た目はちょっとひからびてるような感じだけど,コレも切って食べさせてもらえた。
しょっぱ~い・・・でもかんでいるとどんどん味が出てくるのが分かる。うまっ
乳をかためてつくったっていうケーゼも美味しかった。もう一個いい?え?だめ?鼻血が出る?え~出ないよぉ。
こちらもいろんな種類があって,それぞれ味が違うんだよ。ヴァイスは白いのが気に入ったみたいで,ズィルバーはにゃんか青い変にゃのが混ざってるのが気にいったみたい。
あたしは周りが茶色っぽくて煙みたいにゃ味のするのが気に入ったよ。ロート?
ロートは穴の開いてるのが気に入ったんだね。そればっかり味見してるよ。
どれを買うのかにゃあ。みんにゃでわくわくしてロートを見るよ。
ロートは苦笑いして,みんにゃの気に入ったのを少しずつ全部買ってくれたよ。やったぁ。
燻したヴルストも干し肉と一緒に沢山買った。これで冬の間も大丈夫。
でも?こんにゃにいっぱいどこにいれるのさ?
ロートは自分のリュックにぽいぽい入れ始めたよ。・・・凄い。みんにゃ入った。
牧場で,持ってきたお昼を食べてから帰ることににゃってるので,お庭を借りることににゃった。
適当なところでみんにゃでまるくにゃってすわってお弁当を出していたら,あたしと同じくらいの小獣が二人出てきた。手にそれぞれ白い壺と袋を持ってる。
「どうぞ。」
「コレお母さんが。」
二人が持ってきてくれたのは,山羊のお乳の入った白い壺と,真っ白なブロートと黒いブロートの入った袋だった。ブロートって,パンみたいな物だって。真っ白い方はふかふかしてたし,黒っぽい方は木の実が入っていて少し酸っぱかったよ。
あたしは白いのが気に入ったけど,ヴァイスもロートもズィルバーも酸っぱい方を気に入ったんだって。こっちの方が日持ちするからってこれも買っていくことににゃったよ。
ふかふかのほうがいいにゃあ・・・
あたしたちはみんにゃ白いおひげを生やしてミルクも飲んだ。ほんのり甘くて懐かしい味だよ。どこで飲んだ味だろ?
その後で,さっきの二人の小獣と他にもいた小獣と一緒に沢山遊んだよ。追いかけっこしたり,飛び縄ってのを使って縄跳びしたり・・・あんな風に両端を持って,縄をくるくる回してる中に次々に入るのって面白いね。連続して何回飛べるかもう夢中だったよ。意外とヴァイスがよく引っかかってたね。
今日は,楽しくて美味しくて,最高だったよ。
いよいよまた旅立つ用意が出来たよ。魔道具屋さんに寄れるかにゃあ・・・




